1088話 忘れていた事
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昼前に仕事を終えた妻たちが合流した。特に問題なく事が終わったそうだ。ただ、強力な魔法が使える魔法使いを、連れてくるだけの余裕が無かったため、集めた盗賊(仮)の死体を焼くのに協力してほしいとの事で、魔法を使いました、と。
騎士団にも魔法を使える人間はいるけど、体力的な問題で今回は連れて来ていなかったのか。でも、こっち側に魔法を使えるメンバーがいなかったら……って、国王と話した時に簡単に俺たちの状況も話したから、知っててもおかしくないか。
それにしても、500人程を皆殺しにするとはな。面倒を避けるという意味では、いいかもしれないけど王国的にはどうなんだ? 多少なりとも戦闘できる人間が減る事になるんだけどな。
まぁ王国の事なんか気にしてもしょうがないか。
「さて、今している作業について説明していこうか」
昼食後にそう言って、こっちの状況を話し始める。
どういうコンセプトで迷宮都市を作っているのか? と大雑把な街作りについて話している。壁を作った時に思いついた構想も一緒に話している。
ダンジョンの入口の上に庁舎を持ってくることは変わらないが、スタンピード対策のためにダンジョンの入口への空間は、冒険者ギルドと兵士たちの詰め所からしか出入りできないようにする予定だ。
ダンジョンの入口への空間は、北側に向かって伸ばす予定だ。天井まで5メートル程で幅が20メートルのアーチ状、長さが100メートル程を予定している。そして北東側に冒険者ギルド、反対側の北西側に兵士の詰め所を配置する予定だ。
これならスタンピードの時に壁が必要にならないのではないかと思ったが、クリエイトゴーレムで作る予定は無い。人の力で直せる建物とした時に強度を考えると建物を壊して、外壁に到達する魔物が出てくるかもしれないので、そこはしっかりと作っておかなければならない。
と言うか、すでに外壁はクリエイトゴーレムで作ってるからな。外壁だけは壊れたら困るので、出し惜しみはなしだ。建物もそうすればいいじゃん! とか言われたが、グリエルやガリアが俺の意見に賛成してくれたので何とか治まった。
いずれ改装する時の事を考えると、クリエイトゴーレムで作られると増設しか、選択肢がなくなるので困る、と言うのが決め手になった。
そして、街の配置としては北側に冒険者たちが、利用しそうな施設を多めに誘致する予定だ。それ以外は普通に区画整理だけして多少の建物を建てたら、後は住んだ人たちに任せる事になるだろう。
もちろん孤児院兼治療院兼商店は、一番立地条件がいい場所に建てる予定だ。それなりに広い街なので、中心に作る予定だ。庁舎の下、ダンジョンの入口の上を丸々占拠する。
商店に関しては初めのうちは東西南北に1店舗ずつ配置して、時を見て撤退する予定だ。そっちの商店では基本的に、食料品や調味料の販売のみを行う。
このダンジョンは、位置的にはフレデリクの南側に位置していて、領地を示す壁まではそれなりに距離があるが、外に出るための門は結構遠い位置にあるので、北側以外を農地にしようと考えている。
農地に関しては、妻たちが何度か魔法で開拓しているので、そっちをまかせる事ができる。ドワーフたちが今日の夕方には到着しそうなので、俺は土木組と一緒に内壁を作っていく事になった。
次の日、ドワーフたちを交えて迷宮都市をどう作りたいのか説明する。そして、それに合った区画整備の案を出してもらい、ガリアが確認した後に大雑把に目印をつけて回ってもらう事になった。
俺たちは昨日の続きを始め、俺たちが到着して6日目には内壁の2枚の壁は完成した。
「シュウ様、そういえば水はどうするんですかい?」
「それに関しては、街の中心の庁舎の頂上に水を湧かせる魔導具を設置して、ローマ水道って言っても分からないから、橋を使って水を頭の上に通す感じかな? 上水橋とでも言っておこうか。
で、ディストピアは、きちんと整えて作ってあるから、汚い水は流れないようになっているけど、ここでそこまでやるのは面倒だし、メンテナンスを考えると上水橋の方が便利だからな」
「それは早く言ってほしかったですね。少し作り変えないといけないですね。蜘蛛の巣状に張り巡らせるって事ですよね? それなら地下の方が楽じゃないですか?」
「クリエイトゴーレムや、ダンジョンマスターの能力を使うならそれでもいいんだけど、管理が大変になるだけだぞ? 上水橋は作るのに苦労するけど、作ってしまえば管理がしやすいからな。それに、今回は作るのに土木組も俺たちもいるんだから、そこまで時間はかからないよ」
クリエイトゴーレムは使わないが、土木魔法は使うので作るのにはそこまで苦労しないだろう。
「頂上に付ける魔導具はどういった物を付けるんですかい?」
「俺の考えでは、魔石を燃料として水を生み出すタイプの物にするつもりだ。汚い水や排泄物は指定の場所に捨ててもらい外に流して、そっちはスライムに浄化してもらおうと思ってる。浄化した水は、ダンジョンを作ってそっちで処理する予定だ」
「地下下水は作らないんで?」
「説明してなかったけど、ダンジョンの入口付近の土地は、魔法で干渉できないんだよ。だから干渉できるまで土を盛って固めたんだ。上水橋にするのも、下水を流す場所を作らないといけないからなんだよ」
なるほど! とドワーフたちが納得してくれた。
「最後に、上水橋から水をどうやって汲むんですかい?」
「上水橋は、横から見るとアーチ状の物を並べてその地面に接する部分に蛇口を取り付けて、そこまで汲みにくる形を考えてる。井戸よりは便利だろ? で、ある程度街に出資とか貢献をしてくれた人たちには、建物まで上水橋を引く権利を与えたらどうかなって思ってるんだよな」
「それは言い考えかもしれませんね。水道には、パイプを使うんですよね? となると、水にふれてても劣化せずに長持ちするような物が必要ですな。いざという時に交換が簡単でないと困ります。そこら辺はこっちで考えますわ」
そう言って、酒を飲み始めた。ドワーフたちは、まじめな話の時は普通に話すのだが、考え事などは酒の場で話す事が多い。それなのに酒に飲まれて忘れるという事が無いのがすごいな。二日酔いになっているのもほとんど見ないし。
2週間程かけて壁も上水橋も完成した。
「ご主人様! ダンジョンの中が分からないのに、ここまで街を作って良かったの?」
と、シェリルが聞いてきて、全員で苦笑した。もっと早く言って欲しかったな。街作りが面白くてついつい。
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