1070話 知らない事っていっぱいある
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「……と言うわけで、畑エリアを拡張して隣接する形で、牧場エリアをつくろうと思うんだけど、ディストピア的には何か問題はあるか?」
今日は、工房に行かずに朝一で関係者を集めてもらい話し合いを行ている。
「何の問題があるのですか? シュウ様の街なのですから、作りたいと思えば作ればいいと思います。それを活用するのが私たちの仕事ですから、好きなようにしていただければいいと思います」
そういう事じゃないんだけどな。そして、全員が頷くのは止めろ! 俺の街だけど、街の拡張は慎重にならなきゃいけない物じゃないのか?
今まで散々やらかしていた事を棚に上げて、そんな事を俺は思ってしまった。
「私たちは、牧場エリアをつくる事は賛成です! 自分たちも手伝いますので、新しく来る住人の方たちのためにもお願いします」
空気を読んで土木組のリーダーの子がそう言ってくれた。その優しさがちょっと心にちくりと刺さるけど、嬉しいよ。
「私たちは、植物の成長を助けるだけですので、広げるのであればそこにも恩恵を授けるだけです」
ドリアードは、基本そこにある物を育む事をスタンスとしているようだ。
「畑エリアの代表としては、腐らせてしまう野菜や果物が減るのであれば特に問題はございません」
成長が早すぎるのと、敷地が広すぎるのと、人手不足で収穫しきれない分がある事が悲しかったようで、『腐らせる』の部分は特に切なそうな顔をしていた、畑エリアの代表者だ。
「牧場エリアと畑エリアは、隣接する形で作ろう。後は、畑エリアと牧場エリアの人で連携をとってもらう事になるけどいいかな? どこの野菜は処分していいのか? とか話し合って家畜を誘導したり、家畜の食べる野菜を、持って行ってもらったりしてほしいかな」
それは当然です! という顔を全員がしている。しばらくの間は、家畜エリアの代表は土木組のリーダーの子が務めるらしい。まだ幼いけど大丈夫なのか? と思ったが、いきなりディストピアに来た人間が、今まで住んでいた人たちと対等に話せるわけがないので、橋渡し的な感じになるようだ。
今までダンジョン農園の家畜エリアで面倒を見ていた事もあり、土木組がしばらくの間は牧場エリアに足を運び、一緒に仕事をしてこの街に馴染んでもらう予定だ。
「あ、ちょっと待って。そうなると、いきなりディストピアの住宅に入ってもらうのは拙いのか? 今までの移住者はどうやって対応してたんだ?」
「えっと、色々な立場の人がいますので少しづつ違いますが」
と、前置きしてグリエルが話し出す。
一番多かったのが、奴隷の立場でディストピアに移住してくる人たちだが、これは奴隷なので半強制的に街の中に放り込む形で、仕事やその他を色々割り振り頑張って慣れてもらう形をとっていたそうだ。親のいない奴隷の子は、孤児院に入って集団生活をしている。
次に多いのが、家族単位、一族単位、村単位の近しい関係の人間達の集団移住だそうだ。この人たちは、街の中心地から少し離れた場所に作った、集合住宅みたいなところで生活をしながらディストピアに慣れてもらい、しばらくしてから普通の家に住み移ってもらっているらしい。
最後に単独で移住してきた人たちだ。この人たちは、色々な事情はあるがディストピアに住む事を許可されているので、悪い人たちではない。
住む場所に困っていた者や、商会の人間が保護した人たちの中でも、移住に強い意欲を示した人たちが多いので、住み込みのような形で興味を持った仕事をしている家の、下働きみたいな形でディストピアに慣れてもらっているらしい。
「大きく分けて、この3つがディストピアでとってきた方策ですね。ですが、今回は先方からすでに話を聞いていまして、牧場エリアの一角にテントでも建てさせてもらえば、大丈夫と言われています」
「テント? 家じゃなくていいのか?」
「それなのですが、家を建てる話をしたのですが、まだ仕事もできるか分かっていないような人たちに、家を建てるようなお金はかけないでください。と言われてしまったので、強くは出れずにそれを了承する形になってしまっています」
ん~、いい待遇で迎えてもらいたいと思うのが普通だと思うけど、その待遇が重石になる事もあるって事かな?なんか違う気がするけど、望んでいない事を押し付けるのは良くないよな。
「じゃぁ、そのテントについては何か聞いてる?」
「自分たちで何かを見繕って、集団で生活できるような物を作りますと聞いています。移住されるのは大体、400人程だと聞いています」
400人、思ったより多いのか? 村1つと考えると、ってこの世界の普通が分からん!
「じゃぁ、そのテントはこっちで用意しようか。ゼニス、確かキャラバンの使わなくなったテントあるよな? 雨の日とかに野営をする際に使ってた奴が、あれを使ってもらうのはどうかな?」
「あ~あれですか。確かに使わなくなって倉庫で埃をかぶりそうなので、ちょうどいいかもしれませんが、400人はさすがに入りませんよ?」
「そこはさすがに数を増やそうよ。あれなら1つで15人位は普通に寝れるでしょ? 30もあれば十分足りるんだからさ。それにあれなら暇してる老ドワーフたちに頼めば、1週間もかからずに準備してくれるはずだしさ」
それでいいのであれば問題ありませんね。とゼニスが言って近くにいた秘書に伝言を頼んでいる。俺は、シルキーたちに酒を準備してもらおうかな。
「あ! それなら、村の人たちがディストピアの街の中に住んだ時でも、寝泊まりできる場所としても使えるし、大きくない動物が中に入って休めるスペースにもなるね!」
ん? 小屋みたいなのは別に作る予定だけど、それ以外にも休める場所があった方がいいのか? よくわからないが、問題ないようならそれで行くか。説明もしやすいだろうしこれで問題ない!
その後は細かい打ち合わせをして、俺は畑エリアに出向き拡張工事を始めた。
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