1055話 大丈夫なのだろうか?
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刃の注文を終えた俺たちは、
「これで、後色付けして固めて、くっつければ終わりかな?」
「異世界でリバーシを作るのってかなり大変でござるな。小説とかでは、簡単に作ってみた! 見たいに書いている奴もあったでござるのに、普通に考えて、同じサイズの丸い駒を作るのって大変でござるよね」
「多少形が歪でも問題なかったとみるべきかな?」
「というかさ、日本でもないんだから多少形が違う位で、文句は言われないんじゃないの?」
綾乃が核心的な事を言った。そうだ、この世界に来てそれなりに時間は経っているけど、向こうの世界の物に囲まれて生活しているせいか、この世界の常識がイマイチである。
ドワーフ達の作る物は、スキルのおかげだけでなく自己研鑽による技術の向上で、ほとんど同じ形の物を作るから誤解しがちだが、普通の熟練した職人であっても同じ形のものを作るのは難しい。
「まぁ、仕事はひと段落かな?」
「1つ思ったでござるが、いきなり大々的に売り出すでござるか?」
「「……?」」
「某たちは、リバーシが遊戯道具だと分かっているでござるが、この世界の人間はただの板と似た白黒の駒がたくさんある……だけではござらんか?」
バザールのセリフを聞いて、まずこの世界で流行るか分からない物の生産ラインを確立しても、意味がなくないか? という事に気付いたのだ。
「どうしようか?」
「一番は、人の集まる場所で遊んでもらう事かな?」
遊戯道具なので、とりあえず遊んでもらわないとどうにもならない。そんな都合のいい場所なんてゴーストタウンにあったっけ? こういう時は、ゴーストタウンの領主館に行って聞き込みだ!
井戸端会議の様な事はおばちゃんたちがやっているが、大々的な集まりはゴーストタウンではやっていないとの事。
気を取り直して今度は、ゼニスの所へ行ってみる。
「そうですね。シュウ様の希望に添えるか分かりませんが、商人たちが集まるサロンみたいなものはありますね。情報交換の場とでも言いましょうか? 各国の情勢や豊作不作の情報、中にはどこの貴族がどういった趣味なのか、という内容まで売り買いされていますね」
予想以上の魔窟な気がしてならない。とりあえず、ゼニスに遊び方を教えてみる。
「何かを作っていると思えば、リバーシだったのですか? ん? 何で知っているみたいな顔しないでくださいよ。シュウ様がくれたパソコンに入っているじゃないですか。知ってて当たり前です」
あ~関係者に渡したパソコンの中に入っていたのか、知らなかった。
「それを売り出そうというのですか。確かに娯楽道具はいいかもしれませんね。ゴーストタウンで働いている人は、それなりに余裕がありますからね。
そういった人をターゲットに、将棋やチェスあたりもいいのではないですか? 分かりやすいリバーシは一般の人に、難しい将棋やチェスは商人や貴族なんかに受けそうですね」
ボードゲームが流行るか分からないが、いくつか作って実験してみるのはいいかもしてないな。
「では、完成したら何セットかいただいてもよろしいですか?」
問題ない! ゼニスが否定的では無いという事は、流行る芽があるかもしれないという事だろう。
「それでもし流行り出したら、武闘大会みたいに、リバーシ大会や将棋大会、チェス大会等を開催してもいいかもしれませんね」
娯楽から格上げされる可能性もあるのか、賞金を出したら熱くなるかな?
「後、麻雀なんかもいいかもしれませんね。あれは4人でやりますから、商談をしながらとか、お偉方が遊びながら重要な話をするかもしれませんね。専用の駒や牌を持っていればそれがステータスになる……とか? おっといけませんね。まだ成功してもいないのに、先の事ばかり考えては」
俺たちは作る専門なので、売る事に関しては全部ゼニス……商会に任せる事にした。この大陸で一番大きな商会になっている、俺の商会の実質的代表ゼニスが広めれば、かなり影響があるかもな。
さて、ここで問題ができた。比較的簡単な形のオセロの駒でもかなり苦労しているのだが、それより難しい将棋やチェスの駒などどうすればいいのだろうか? 大人しく鋳型にいれて型抜きする以外の選択肢が無くなった。
「どうすんの?」
「ゼニス殿があの調子なら、作らないといけないでござるよ」
「もう、一駒ずつ鋳型で作るしかないだろうな。将棋なら、歩、飛車、角、香車、桂馬、銀、金、王の8個の駒の型を作って抜いて削って色塗りか? 俺たちの手を離れるならそれでもいいけど、あまりに手間だと、人件費で結構な値段になりそうだな」
「ん~でもそれって、単純作業になるから子どもたちでも出来るんじゃない? 実際、お金に困って働いてる子どももいるわけだし。孤児はいないけど、シュウの商会だって母子家庭の親を、全部雇えているわけじゃないでしょ?」
「確かに全部は無理だな。でもさ、単純に流し入れるだけなら簡単かもしれないけど、あれって結構難しいんじゃないの?」
「そういえば、難しいって聞いた覚えがあるでござる。子どもには難しくないでござるか?」
「そこはあれよ、子どもでもやりやすいような方法を考えるとか」
なるほど、確かにそれなら、仕事のほしい人たちの需要を多少は賄えるかもしれないな。でも、そんな簡単な方法ってあるのか?
「プラモデルのあれみたいにできないの?」
あれってそんな簡単に作れるのか?
工房で頭を抱えながら話していたら、ドワーフたちがやって来て何に悩んでいるか相談に乗ってくれた。
「ん? そんな事に悩んでたのか? 鋳造は鍛冶の初歩だべ、そんなもん子どもでもできる簡単な方法があるに決まってるだろ!」
でもさ、鋳造の武器や防具って基本1つ1つ大きい物を作るから簡単なんじゃないのか? あと、金属って重いから空気が逃げやすいんじゃないっけ?
「はぁ~これだから素人は、釘をどうやって作っていると思ってるんだ? あんなのを1つ1つ鍛造してるわけねえだろうが! 鍛造する釘もあるがあれは特別だ!」
言われれば釘も鍛冶屋が作ってるんだった。
「とはいえ、よくわからない素材だから鋳造を試してみればいいだろ? 細かい模様は後回しにして大体の形で作ればいいじゃねえか? 手伝ってやるからよ」
そう言われて俺たちは鋳型の準備を始めた。
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