1052話 燃料を投下してしまった
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次の日、工房に入るとやつれている老ドワーフたちを発見した。
あ~昨日あれから呼び出されたのか。死んだ魚の様な目をしているが、俺から教わったと言っていい技術を隠したりするから、そういう事になるのだ。悪戯のつもりだっただろうが、黙ってみられた方はたまったものでは無かっただろう。
その反対に、工房のドワーフたちは寝てないはずなのに、つやつやしている。髭爺がつやつやしてしていてもなんか……キモイな。とてつもなくいい笑顔なんだが、とてつもなくキモイ。しばらく放っておこう。
「酷いものを見たでござる」
工房の俺たちのエリアでのんびりとバザールと綾乃が来るのを待っていて、入って来たバザールが俺と同じ感想を持ったようだ。
2人であの様子を見て、萎えている事を無駄に語り合っていると、綾乃が来た。
「何か、つやつやしてる髭おじいちゃんと、しおれてる髭おじいちゃんがいたんだけど、あれ何?」
「あ~昨日、鑿の話をしただろ? その時に、ディストピアの老ドワーフなら知ってるって言っただろ? だから、昨日のうちに呼び出して教えてもらったんだろうな。で、ツヤツヤの方がこの工房のドワーフで、しおれてたのがディストピアのドワーフだよ」
「あれから? それにしても、ドワーフたちって好きな事になると、ヤバいほどエネルギッジュになるのね。興味ない事はとことん無視なのにね」
ドワーフの習性と言うか、自分の興味のあるモノに対してのバイタリティーがヤバいのだ。まぁ、今日のドワーフを見れば分かると思うけどね。おそらく老ドワーフたちは、鑿を使った技術をある程度理解できるまで、缶詰にされるんだろうな。
あぁ、そう考えると今疲れているわけじゃなくて、これから先の事を考えて死んだ目をしているのかもしれないな。まぁ悪戯をしたツケだ、がんばってくれ!
「まぁ、あれらは放っておこう。今関わるとろくなことにならないだろうからな!」
「それはいいでござるが、する事が無いでござるよ?」
「確かにそうよね。銅線が出来上がらないと、私たちする事ないわよ?」
ここ1ヶ月ほど、節操無しに色々つくってきたせいで、かなりやっている事がごちゃごちゃし始めたのだ。する事が無いというよりは、何をしていいか分からないというべきだろうか?
最近やってきた事をホワイトボードに書き込んでいく。あっ、物作りに関してはこの世界で自分たちの手で作れる物が基本だけど、こういった便利な小道具? とでも言えばいいのかな、そういう物は普通に使っている。
この世界にも黒板はあるけど、使いにくいんだよね。いろんな色を使えるホワイトボードって便利だよね!
まず始めに作ったのは、俺たちはタッチしていないけど、ドワーフが1週間くらいで大小さまざまな炉を作っていたな。普通、金属を溶かしたりする炉をそんに早く作れるわけないのに、常識からずれてるよな。ファンタジー素材もあるから可能なのだろう。
次は、織機だったな。1ヶ月くらいしか経ってないのに、もうだいぶ昔のように感じられるな。その後は、加工のしやすいように自動回転のやすり、そして動力のための蒸気機関、その時に3人の子供が生まれたんだよな。
で、次がミシンだったか? こっちは細かい部品が完成してないので作り終わってはいない。そもそも、ミシンに集中しているはずの雇ったドワーフが、今は鑿の使い方の習得に励んでいるせいだ。
ミシンに集中してるから、銅線をアウトソーシングしたのに、今じゃ宮大工の技術習得が優先って、本当にこいつらはコントロールできねえな。
まぁ、消費できるように確保してある資金は、潤沢にあるんだからいいんだけどさ。いちいち外部に頼むのが面倒だからって、雇ったはずのドワーフがその仕事をしてくれないとか、本末転倒な気がするけどな。
あっ! 銅線の前にドリルか? もうね、ここら辺は一気に色々し過ぎて、順序が分かんなくなってるんだよな。しっかりメモしておくべきだったか? って、順序が分からないからって何の問題もないか。
据え置きドリルの方は、昨日解決したからな。
「書き出すと、節操なく作ったでござるな。あれ? 手動洗濯機と圧力式脱水機が無いでござる」
バザールの言葉で、洗濯機と脱水機を作った事を忘れていた。
「確かに、設計図があって、金属の加工に長けたドワーフが手伝ってくれているとはいえ、こんなに簡単に作れるもんじゃないよな?」
「そういえば私、木工や錬金術、細工、とかのスキルがLv上がってたわね。このスキルの所為じゃない? 特にバザール。あんたは、どれだけ長い期間生きてきたか分からないけど、あれ? 死んでるんだっけ?
まぁどうでもいいか。有り余る時間でたまに物作りして遊んでたって、言ってたからそこそこスキルLvあるんでしょ? そのせいじゃない? シュウだって、かなり高いはずよね?」
そう言われてスキルのLvを確認すると、俺は取っている生産スキルが軒並み5を超えており、平均が7~8の間と言った所だ。ダンジョンの中で修行しているとはいえ、世間一般ではトップクラスのスキルレベルだ。
まぁバザールにいたっては、今回使ったスキルに関しては、ほぼ10だった。どれだけ暇な時間を持て余していたのか、技術は微妙だったがそのスキルによる補正だけで、しっかりとしたものを作っている感じだったのだ。
「バザール、苦労したんだな……」
俺と綾乃は、バザールのスキルLvを聞いて思わず同情してしまった。
「ちょっと! 今は幸せだからいいじゃないかでござる! 昔の事は掘り返さないでほしいでござる! あっ! 掘り返しても骨しか出てこないでござる……あいたっ!」
アンデッドジョークなのかよくわからん事を言ったので、どついておいた。
「そんな事より、これからどうするの? 少なくとも来週までは、出来る事ってないよね? 新しく何かする?」
バザールが、そんな事!? と文句を言っているが完全に無視をして話を進める。
「さすがに、色々つくり過ぎだろ。ちょっと足を止めて、生活便利道具から思考を変えてみないか?」
「例えばでござると?」
「娯楽とか?」
その言葉を聞いた綾乃とバザールの目が光った。
「そうね。生活を充実させるためには、日常生活を楽にする道具は必要だけど、生活を豊かにするという意味では、娯楽は必要よね? 特にゴーストタウンでは、しっかり仕事についてれば、多少贅沢ができるくらい稼いでいる人が多いものね! それを考えたら、娯楽品は必要よね!」
「そうでござるな。自分は相手がアンデッドだったから、1人で遊ぶ事しかできなかったでござるからな」
おっと、バザールが……これは、触らずにそっとしておこう。
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