1040話 猫っていったい?
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バザールに娘たちの人気をとられて心が荒んだ次の日、俺たちは仕事を休みにしていた。
ここ2週間ほどは物作りの趣味と相まって、休みをとらずに没頭してしまったため、ゼニスから休みを取る様に命令されてしまった。俺の方が立場が上なのに、妻たち連れてこられたゼニスが、申し訳なさそうに俺に言っていたので、妻たちの主導の話なのだろう。
2週間は、仕事に趣味に、娘たちの世話……と言うか、スキンシップかな? で充実していたため、全然疲れ等は無かった。でも、俺が決めた週休二日を俺が破っていたら意味がないわけで、特にミリーから怒られてしまったのだ。
俺は久々の休み……という気分ではないが、休みを利用して娘たちの様子を見る事にしたのだ。娘たちの部屋だとシルキーに追い出されるので、隣の部屋でのぞかせてもらうのだ。
「って、お前ら! 邪魔だ! 俺の娘なんだから、俺に場所を譲れ!」
こんな感じで、朝から従魔たちと喧嘩をしている。ダマたちも娘の鑑賞会に参加しており、この部屋が窮屈なほどに集まっているのだ。
どんなに命令しても、言う事を聞かないので俺は裏技を使って、娘たちを見る事にした。視覚同調をしていると、近くにいた従魔たちが卑怯だ! とのしかかりや噛みつき攻撃をされるが、俺の邪魔をしたお前らが悪いのだ!
「うるさ~~~い! 防音設備があるはずなのに、あっちの部屋までドタバタが聞こえています! これ以上騒ぐなら、全員この部屋を出禁にしますよ!」
怒鳴って入ってきたスカーレットの剣幕にビビって全員が黙る。そして、出禁になるのは絶対に嫌なので静かになったが、視覚同調を始めると静かなのしかかり攻撃と噛みつきを受けた。しょうがないだろ! お前たちが邪魔で見えないんだから!
俺は従魔たちの攻撃を無視してケットシーと視覚同調をした!
「って、おい! 何でケットシーまで追い出されてるんだ」
今の所、娘たちの様子を見るのは諦めよう。カーテンまでつけて、視界を塞がれては見る事もできないからな。娘が産まれてから特に見てなかった、小説を読む事にした。この部屋で読むのはさすがに微妙だったので、庭の世界樹の木陰で読もうと移動をした。
部屋を出てすぐに驚愕した。俺たちは中の様子を見る事もできなくなったのに、ニコたちスライムが部屋の中に入っていく姿を見つけてしまったのだ! 開いた隙間から少し中を覗くと、俺のお気に入りスライムベッドを3人の娘にしていたのだ!
肉球の良さに続いて、スライムたちの良さまで知ってしまったのか……将来いろんな意味で大丈夫だろうか?
あぁ~閉められちゃった。しょうがないので、当初の目的通り庭に移動してブッ君で本を読もう。
「ん~……あぁ? 寝てたのか?」
俺はボ~っとしている頭を動かして、現状把握をした。
ブッ君で小説を読みながら寝落ちしたようだ。手から落ちたブッ君が地面に転がっている。そして、ニコが俺のお腹の上でゆる~く揺れている。いつの間にか俺は、ニコにベッドにされていたようだ。
そろそろ娘たちの様子を見ても大丈夫かな?
ケットシーに視覚同調すると、娘たちの部屋が見えた。どうやらケットシーは部屋に戻れたようだ。俺が同調した事に気付いたようで、娘たちの所へ移動してくれた。
毎回思うけど、同調されると何か感じるのかな?
娘たちは寝ているようだ。天使が3人いるようだ。しばらく見ていると、体をピクピク動かす様子が見られる。夢でも見てるのかな? って、さすがにこの年では見てないか?
赤ちゃんは寝ている間に色々勉強する……みたいな事を聞いた覚えがあるけど、本当なのかな? 産まれたばかりでも起きるものかね?
まぁ可愛いからどうでもいいか!
様子を見ていると、急にミーシャが泣きだした。それにつられるように他の2人も泣きだしてしまった。それなのに猫たちは動じる様子もなく、起き上がり相手をし始めた。
ミーシャは猫たちが肉球をほっぺたに当てると、泣き止み笑顔で手足をバタつかせ始めた。そんなに好きかそれ!
スミレは、猫たちの肉球を揉み始めると、泣き止んで笑顔になった。
ブルムは額に肉球が当たるとピタッと泣き止み、離すと泣き出してしまうのでしばらく交代で、猫たちが額に肉球を当てていた。
猫の統率の取れた行動、そしてこの状況に慣れている様子。心和むな。
それにしても、何で泣いているのかも分からないのに良くあやせるもんだな。排泄とかなら臭いで分かるだろうけど、それ以外で泣いている時も分かるって事だよな、便利な猫たちだ。
お前たちは、ただの愛玩ペットってだけじゃなかったんだな。ご主人に餌をたかるために起こしに来るだけだと思ってたよ! 安眠妨害する可愛いペットだと思っててごめん!
それにしても、猫たちすげえな。召喚された猫だから出来るのかな? よくわからなくなってきたぜ。
20分位娘たちと戯れていた猫たちが、急に慌ただしく動き始めた。そうすると、娘たちが泣きだして何かと思ったら、部屋を出て行ってしまった。そうするとすぐにミリーたち母親が駆けつけた。どうやら授乳のようだ。泣き始める前から動き出した猫、お前たちは何を察しているんだ?
3人共、粉ミルクじゃないんだな。胸が張って痛くなる事があるとか言ってたけど、そこら辺は大丈夫なのかな? だから飲んでもらってるのかな? まぁそんな様子をずっと見てるのも変なので、視覚同調を切って体を伸ばす。
そうすると、お腹の上で寝ていたニコが抗議しているのか、高速でプルプル震えだした。俺をベッドに使ってたんだからそのくらい許せよ。
機嫌が収まる気配が無いので、空高く投げてやった。結構高くまで上がって落ちてきた。
「はぁ?」
ニコが驚きの変化をしたのだ。
漫画でニンジャが風呂敷を使って飛ぶあれみたいなフォルムになってゆっくり落ちてきたのだ。
って、待て待て! いくら何でも落ちてくるのがゆっくり過ぎるだろ! いくら空気の抵抗を風呂敷のような部分で受け止めても、そんなにゆっくりにはならん!
落ちてきたニコを受け止めようと手を伸ばして受け止めようとして異変に気付く。どうやらこのスライム、自分で風魔法を使って浮力を得ていたようだ。だからありえないスピードでゆっくりと降りてきたのだろう、無駄に性能の高いスライムだな。
本当は娘たちと戯れたかったけど、まだ早いので従魔たちと戯れて日暮れまで遊んだ。
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