104話 クズの処理
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引きつった顔の団長は、何とか持ち直したようで、俺に声をかけてきた。
「シュウ様、いつこちらへおいでになったのですか?」
「今さっき街について、商業ギルドで家を借りてからこっちに来た」
この会話を聞いた気絶しなかった兵士が、青い顔をして気絶しそうだった。門番も大変やな。
「言ってくだされば家位用意しましたのに、それでこの時間にここへ来られた理由を聞いてもよろしいですか?」
「ああ、商業ギルドに寄った際に税金が上がった話を聞いてな、その詳細を聞きに来た。ギルドで聞いた話だと、いっぺんに金を払わせて回収したって話だからな」
「その事ですか、ですが男爵様は今就寝中なので、明日また来ていただけないでしょうか?」
「はぁ? 断る。為政者たるものいついかなる時でも、対応できるようにするべきだ。例えば街に魔物の群れが来た場合、魔物に今は男爵が寝てるので帰ってくださいとでもいうのか? 極端すぎる話だと思うが本質は変わらないと思うぞ。という事で起こしてこい、後広い部屋に案内しろ」
「ですが、何の言伝もなしにいきなり訪問されるのは、無礼かと思いますが?」
「そっか、ならまた蹂躙しましょうか? 戦争の決まりごとにあった、『俺の意志に反した事が行われている』可能性があるので実力行使にでよう。みんな戦闘準備」
戦争にでた兵士たちは、全員青い顔をしてブルブル震えていた。戦争に出てなかった兵士は、この数で負けるわけないだろ? とらえようぜ、等と言っていた。
「そ、それは、勘弁してください。今男爵を起こしてきますので、お前たち部屋の準備をしてこい。しばらくここでお待ちください」
団長は男爵の部屋に、一部の兵士たちは部屋を準備しに行ったようだ。残った兵士は、青い顔をして俺たちの癇に触れない様に、存在感を消しにかかっている。こんな可愛い娘に向かって、それはひどくないか?
俺やレイリーでそういう風になるならまだわかる。門番ではなく後から来た兵士で戦場を知っていたためだろうか、シェリルを見てそういう風になるんだからな。話は聞いてたけど、年少組ってそんなにひどい状況だったのだろうか?
十分くらいだろうか、兵士が俺たちの事を呼びに来た。一緒に待たされていた兵士たちは、安堵の表情をしていた。お前らほんとに失礼だな。屋敷の中をしばらく歩くと、目的の部屋に着いたようだ。
マップ先生でわかってたけど、みんなで入っても問題ない部屋だった。部屋に入って中心にテーブルが置いてあり、左右に分かれて座る感じだろうか? 俺たちは入って右側に通される。
遅れてネルビ男爵が入ってくる。いきなり来たとはいえ、立場上は俺の方が上なはずなんだけどな、先に待ってたりしねえのかな? それとも身分上は自分の方が上、とかいうくだらない事を言い出すのだろうか?
「いきなりこの時間に屋敷に来るのは、失礼じゃないかね?」
第一声がこの一言だった。よし、しばこう。
「今日の夕方にこちらへ到着したが、商人ギルドで税金が上がったことを聞いたからその詳細を聞きに来た」
「それは私のあずかり知らぬところで、家臣たちが勝手にやったことだ。私が帰ってきてからすぐに元に戻している」
うん、嘘は言っていないだろう。商人ギルドでも聞いたことだしな。
「その時に集めた税金はどうした?」
「それは、君には関係ない事だろ?」
「では言い方を変えよう。その時に集めた税金の金額を、次の税金から前倒しでもらったことにしろ」
「な!? 君にそんなことを言われる筋合いはない」
「お前何か勘違いしてないか? 俺は戦争の勝者としての権利を行使しているんだから、お前に拒否権は無い。蓄えていた金で問題なく家は維持できるはずだ。私財を使って戦後処理を行えって命令が出ているのだ、何の問題ないだろ」
「貴様! 私に向かってその口の利き方は失礼だろ! 戦争の勝者とはいえ、口の利き方をわきまえろよ小僧!」
「身分を振りかざすクズだったか。勝者としての命令だ、俺はお前より身分は下だが立場は上だ、敬って話せ」
「話にならん、いくら戦争の勝者とは言え横暴が過ぎるぞ。不敬罪で処刑されたいのか?」
「お前こそ何か勘違いしてないか? 権利を行使してるのに横暴だと? 命令に従わないのであれば罰を与えることが、俺には許されているんだぞ。立場をわきまえろよカスが! レイリー、娘たちにやらせるのは気が引けるんだが、引き受けてもらえるか?」
「かしこまりました、ご主人様。どのようにいたしましょうか?」
「貴族としての身分や誇りなど、戦争の敗者としては必要ない事を教えて差し上げろ。手段は任せる。えっと、後ろの兵士たちは何かあるかな?」
話をふられた、団長や他の兵士……近衛兵になるのだろうか? そいつらは慌てて首を横に振っていた。
「団長、戦争が終わって一月は経っているけど収支報告できてるかわかるか? わからなかったらわかる家臣でもたたき起こしてこい。レイリーちょっとまった、私財がいくらあるか報告書作ってあるよな? 金品や食料のは作っておけって命令したの覚えてるよな?」
「はぁ? できてるわけないだろ、調べるのだってただじゃないんだ」
「命令したことすらできないって、頭おかしいじゃねえか? じゃぁ今から俺たちがやってやるから、金庫や倉庫に案内できる人間呼んで来い。そのあとお前はレイリーに矯正されてこい」
「小僧! 言葉に気をつけろって言っておるだろうが!」
さすがに切れた俺は、男爵の頭を鷲掴みにした。そういえば久々のアイアンクローだな。ギリギリと潰れない程度に力を入れる。ステータスが強化されている状態で本気で握ったら、レベルの低い人間なら頭が潰れてしまう。
男爵はバタバタして口から涎をたらして、ゔゔっ等と言葉にならない言葉で何かを必死に訴えていた。
「俺はお前に命令する権利、命令に従わなかったら裁く権利を持ってるんだぞ? 立場をわきまえろよ」
言い終わった後に開放すると、その場に崩れ落ちた。これじゃ仕事にならないので、ピーチに回復するように頼む。再度命令をして資産管理している家臣を連れてきてもらったが、男爵と同じようなことを言い出したので、同じように戦後の取り決めからアイアンクローの流れをした。
男爵の矯正はレイリーに任せて、一月分の収支報告はピーチを中心とした年長組に任せ、俺は残りの娘たちを連れて資産の調査をすることにした。
資産の調査をすることにしたのは、マップ先生を拡大して資産となりえる金属や宝石、貴重品を検索することができたからだ。特に男爵夫人の部屋には、不自然に金属や宝石が集まってる場所があったし、隠し部屋みたいなのもあったので全部暴かせてもらった。
ちなみにメルビン男爵の家にも同じようなものはあったが、九割はそれを申告してきたし、一週間も経たないうちに私財報告があったから、見て見ぬふりをした。が、お前は駄目だ。職務怠慢、命令違反、暴言、救いようがなかったので矯正する方向にした。
途中で男爵の嫡男が俺の事を不敬罪とほざきだしたので、アイアンクローをしてから男爵のところまで引きずっていき、レイリーに一緒に矯正してもらった。
全部の仕事が終わったのは、夜中の三時を過ぎていた。みんなに労いの言葉をかけて、借りた家に帰ることにした。帰り際にまた明日も来ることを伝えると、魂が抜けていた男爵と嫡男は崩れ落ちていた。
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