1039話 わがままな奴ら
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「ちょっと、シュウ君! バザールさんが娘たちに人気があったからって、そんなに凹まないの! まだしっかり目が見えてないのに、人気があるとか決めつけないの! 普段と違う感触だったから喜んだだけだと思うわ。今だって、シュウ君の腕の中で、気持ちよさそうに眠ってるんだから大丈夫よ」
バザールが娘たちにキャッキャ言われてたのにジェラシーを感じて、俺はものすごく凹んでいた。なので、気持ちを落ち着かせるために俺は、起きている娘を抱いて癒されている。
でも、娘たちを抱くとすぐに眠ってしまうのだ。相性がいいのかな? 動いて俺の顔に手を伸ばしてくれる、あの仕草を見たかったけど、腕の中ですやすやと眠る姿も、可愛い。
寝たのでずっと抱いているのもいいのだが、初めに抱いたミーシャが寝たので次にブルムを抱っこする。
初めのうちは顔に手を伸ばしてくれていたが、すぐに眠くなってしまったのか、眠れる天使になってしまった。スミレも同じですぐに寝てしまった。
娘たち3人のベビーベッドは、並べて置いてあり見ているだけで癒される。ちょっと予定と違ったが、癒されたので細かい事はどうでもいい!
3人がベビーベッドに戻ると、待ってました! とばかりに猫たちとケットシーが、各娘のベッドに乗って体を密着させて丸くなった。暑くないのかな?
これ以上は娘たちの邪魔になるので、後ろ髪を引かれる思いだが赤ちゃん部屋を出る。
そういえば、一緒の空間で赤ちゃんを育てないのかと思い聞いてみたが、初めのうちは体が弱いのであの部屋で慣れさせてから、次第に範囲を広げていくそうだ。
俺の周りではどうだったっけ? って考えてみたけど、よく思い出せない。近くに赤ちゃんがいたはずだけど、その時の様子って見た事ないな。
それに病院とかで産むと……確か、何日か分からないけど様子を見るために、母親と一緒に入院するんだっけ? そう考えたら産まれたばかりの娘たちは、あそこにいるのは普通なのだろうか?
でもディストピアではと言うか、この世界では出産しても家で面倒を見ている事が多いはず。ただ、24時間いつでもヒーラー、回復魔法の使える人間が、治療院にいるので緊急の対応も問題ないのである。
それでも、産まれたうちの3パーセント位の赤ちゃんが、亡くなってしまうのだ。その報告を聞くたびにやるせない気持ちになるが、日本でも産まれてすぐに亡くなる赤ちゃんがゼロでは無いのだ。医療技術の遅れているこの世界では、3パーセントでもかなりいい数字だとグリエルたちは言っていた。
この世界の平均で考えれば、20~30パーセント近くの赤ちゃんが、産まれて数か月のうちに何らかの理由で亡くなってしまう。15歳を迎えられるのは、60パーセント程らしい。
赤ちゃんの時に亡くならなくても、農村部の貧しい村では、栄養失調で亡くなる子もいれば、魔物に襲われて亡くなる子もいる。街の中でも栄養失調で亡くなる子は、それなりに数がいるようだ。
死因の多くは奴隷になって、何らかの理由で亡くなってしまう数が多いとの事。虐待であったり、過重労働であったり、中には殺す目的で奴隷を買っているクソもいるらしい。それでも犯罪の称号が付くのにな。
貴族は、基本的に街の出入りでも称号をチェックされることが無いので、称号を気にしないやつらも多いそうだ。一番胸糞が悪かったのは、処女の生き血を風呂に入れて浸かると、肌にいいと聞いた貴族の婦女たちが……
あ~思い出しただけでイライラしてきた! せっかく娘たちで癒されたばかりなのに!
ささくれていると、ダマが俺の近くに寄ってきたのでもふる事にした。お腹のやわらかい毛に顔をうずめてモフモフを堪能する。
気持ちが落ち着いたら、今度は肉球マッサージだ! 猫たちは分からないが、ダマは肉球をモミモミされるのが好きなようで、足の上に仰向けで横にならせてプニプニしてやると、だらしない顔をして喜ぶのだ。
肩もみみたいなものかな? 俺は苦手だけど、世の中にはマッサージ屋が存在するくらいなので、好きな人は好きなのだろう。
それを見ていたシエルが羨ましそうにこちらを見ている気がする……カメ……顔は蛇っぽいけど、そんな雰囲気を醸し出している。
でもさ、お前はカメだぞ? マッサージなんてできないぞ?
はぁ? 甲羅が痒いってなんなの? 猛烈にアピールしてくるので、何をしてほしいか聞いてみるとそう言ってきたのだ。甲羅に神経が通ってるのか? それにお前って体の大きさ自由に変えれるんだから、甲羅が脱皮する事も無いだろ?
わかったよ、甲羅をかくことになるとはって、今は中型犬位のサイズのある亀なので、小さい亀みたいに歯ブラシなんかを使うわけにはいかないよな。じゃぁ、柄付きブラシのブラシの部分だけにして、お風呂へ向かい、甲羅の継ぎ目のような部分まで綺麗にゴシゴシした。
満足してくれたようで、蛇顔もうっとりとしている。表情豊かだよな。今度はグレンかよ。お前は、炎の翼だから手入れは必要ないだろ? って思ったら、そんな事は無い! 毎日この翼を維持するために、手入れをしているのだ! と怒られてしまった。
でもさ、どうやって俺が手入れするの? お前燃えてるじゃん。
そしたら『馬鹿な事を言わないでください。私の体は、敵以外は燃やさないのです! その証拠に、この家に来て火事になったりしていません! 寝る時に使っている毛布も焦げていないですよ!』と、そういえば、こいつ熱くねえな。従魔にしてから近くにはいたけど、触ってないから気付かなかったぜ。
そして、見た目は炎でも触り心地は、シルクのようなキメ細かい感じだ。なので、ハクのブラッシングに使う高級な櫛を用意して、炎の翼をブラッシングしてやる。
「ふぃ~ちかれた……」
3匹とのスキンシップが終わってリビングに戻ったら、ハクを先頭にクロとギン、他の従魔たちもかまってほしいのか、ブラッシングなどを要求してきたのだ。そして4時間もかかってしまった。
ブラッシングの後に風呂入るのとか辞めてほしいね。乾かすのは自分でやってくれるからいいかもしれないけど、また毛を漉き直さないといけなくなるんだからな。
そういえば、従魔たちが娘たちの近くの部屋にいつもいるんだよな。気付いたら、娘たちの部屋側にマジックミラーが取り付けられていて、娘たちの様子がのぞけるようになっていた。暇な従魔たちは大体ここでくつろぎながら、娘たちを見ているらしい。
娘たちは可愛いからな! 従魔たちにもそれが分かっているようだ。可愛いは正義!
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