1029話 後は優秀な人に任せる
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ドワーフたちを雇ってから1週間、炉が完成していた。5基も。
1つは精錬用の大きな炉だ。鉱石からインゴットを作るための大型炉。鋳造のための中型炉が1つ。残りの3つは、鍛造用の小型炉との事だ。
俺が考えていた炉は、ドワーフたちに小型炉と言われている鍛造用の炉だったのだ。
話を聞けば当たり前じゃん! とか思ったのだが、鉱石を精錬するための炉が無ければ、インゴットを購入しなければならないのだが、俺が品質のいいのを選ぶのも仕事と言ったのだから当たり前じゃないか。
そして、中型炉、鍛冶って言うと鍛造のイメージしかなかったが、この世界では鉱石から金属へ、金属から加工の流れが鍛冶と考えられている。そこから先は彫金らしい。
よくわからないが、剣を作るまでが鍛冶、細工をするのが彫金みたいな感じだろうか? そもそも、スキルがそう判定しているので、この世界の住人が何と言っても、世界のルールが決めている事だしな。
「というか、施設の拡張も早くないか?」
「ほっほっほ、ワシらにかかればこの程度の大工仕事など、晩飯前の食前酒のようなもんじゃ」
なんだそれ? 晩飯前の食前酒、美味いって事か? ドワーフ的言い回し? よくわからないので、スルーする事にした。
「じっちゃんたち、思ったより万能だな。それで、もう鍛冶仕事を始められる感じ?」
「そうじゃな、炉の試運転は済んでいないが、ワシらが作った炉じゃから問題ないだろう。ワシらの酒がかかっておるからな! はっはっは!」
「了解、りょーかい。今日の試運転が問題なければ、ディストピアにいるじっちゃん共がおススメする酒を、樽で出してやるからこの後も頼むよ。それと、試運転で作ってもらいたいのは、こういった形の部品なんだけど大丈夫か?」
「ん~けったいな形をしてるな。鍛造で作らなければならんのか?」
「いや、この部品は消耗品になるから、ある程度壊れなければそれでいいと思ってる」
「ふむ……じゃぁ鋳造でいいんじゃな? それなら、型を作って削り出せば問題ないじゃろう」
「どの位作れるものなの?」
「そうだな~ミスリルを少し型に使っていいのであれば、1日に10個くらいはいけるんじゃないかのぅ。この細かい穴と縦の細長い穴の削りとかを考えるとそんなもんじゃないかな?」
「なるほど・・・ミスリルは・・・この街で買えるから、使用しても問題ないな。でも、まだ大きさが決まってないから、穴の長さを変えて2個1セットで10位用意してもらっていいかな? 期間は今週……後3日で頼めるか?」
「ん~問題ないじゃろ。その部品を使う時はワシらも呼んでくれよ。どういった物に使われるか見ておきたいからの」
「わかった。俺たちはその部品をつけるやつを作らんといけないから、後は任せたよ」
ディストピアの老ドワーフと違って、少し真面目な感じがするな。そう思いながら、じっちゃんたちの工房を後にして、自分たちの工房へ向かう。
「バザール! 綾乃! 織機の方何とかなりそうか? 炉の方は完成して、糸を通す部品の方は何とかなりそうだぞ」
「マジ!? あのドワーフたち、ただの飲んだくれじゃなかったんだね。思ったんだけどさ、あの糸を通す奴って金属で作る必要あったの?」
「木でも作れると思うけど、金属で作るより時間かかりそうだぞ? ドリルとか削る工具がないから、木にあんな細工する方が大変じゃないか? その点、金属ならじっちゃんたちに任せておけば何とかなりそうだし、木よりは壊れにくいだろ?」
「それもそうね。色々考えないシンプルなのは作れたけど、用意してもらった部品を上下に動かす方法が思いつかなくてね。そこまで手動にすると・・・今よりは楽かもしれないけど、私達の考えている物と違う気がするのよね」
「ん~何かそんなの見た覚えがあるんだけどな・・・ピアノ?」
「ピアノでござるか? 確かに弦がある場所は似たような見た目でござるが……」
「あぁ! 足で踏むと音が響くよね。確か弦についてるクッションみたいなのが離れるんだっけ? って、足でか。足で部品を上下に動かせれば、いけるかも! バザール、ちょっと昔の足踏みミシンとか、そう言った足を使う機械の図面を、いくつか召喚して!」
「了解でござる!」
バザールも色々と召喚していたが、俺も一緒に召喚していく。部品を動かす方法に関しては、綾乃が思いついているみたいなので、俺は違う事を考える事にした。
「ん~糸が細くなると、これ使えなくなるよな。そのまま使うと網みたいになっちゃうしな、幅を狭めれば出来そうだけど、そうすると生地の幅も狭くなる。絹糸で作るシルクとかどうやって、広い幅で作ってるんだろうな?」
調べて分かった事だが、絹糸って蚕の繭の糸をそのまま使っているのではなく、何本かをまとめて使っているので、束ねる本数の差によって使い方が違ったりするらしい・・・
糸って思っている以上に太さや用途が違うんだな……と言っても、せっかく細い糸を束ねすぎるのももったいないよな。幅の広い生地を織るためには、織機の大型化が必要なのかな?
今考える事じゃないな! 今度考えよう!
そして、次に目をつけたのが足踏みミシン。手縫いだと時間がかかるけど、足踏みミシンなら設計図があるし、ドワーフのじっちゃんたちに手伝ってもらえば、部品は何とかなるんじゃないか?
いきなり難しいのは無謀だから、一定の間隔で綺麗に縫う事の出来るミシンがあれば、見た目が綺麗なのが作れるよな? 返し縫とかできなくていいから、単一の縫い方が出来るようになれば、次に進めるかな?
「シュウー、何処?」
「ん? どうかしたか?」
「足踏みで縦糸の問題は解決したけど、出来た生地を回収するいい方法がないの! なんかない?」
「さすがにその部分を自動化するには、歯車みたいなのが無いとできないだろ? ならある程度織ってから巻き取って、また織るって方法しかないんじゃないか?」
「巻き取る方法しかないか、今回はそうしよっか。改良する時に色々考えればいいよね。って、シュウは何してたの?」
「足踏みミシンについて調べてた。設計図を出した時に気になったからな。段階的な事を考えれば、動力を自分で確保する必要があるけど、自動化の1歩目じゃないか?」
「確かにそうでござるが、何でもかんでも自動化にしてござると、仕事の無くなる人が多く出てくるでござるよ?」
「そうだった。便利と言っても、何でもかんでも自動化にするのは良くないよな。衣服が高いからと言っても、仕事を奪ってまで安くするのがいい事では無いか……じゃぁ、織機も不味くないか?」
「手動であれば問題ないはずでござる。多少安くなるでござるが、さすがに地球みたいにあふれかえる事なんて無いでござるからな。それにでござる。今の織機を発展させる分には、生地の量が増えるだけでござるから問題ないでござる」
「それもそうか。それに、織機自体もそれなりの値段になるはずだから、高級品を作る時に使う織機みたいな、住み分けになるかな?」
「難しい話は止めよ! 私たちは作るの担当! 販売やその他に関しては、ゼニスさんに任せればいいじゃない!」
綾乃からすがすがしいほどの丸投げ発言。俺も人の事言えないけどな。
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