1021話 中央は真面目でも……
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酒を飲んだ村人が全員酔いつぶれる程騒いで飲んだ宴会があった次の日。
村人たちは俺より早く起きて、出発の準備を始めていた。俺の方が早く寝たんだけどな。警戒は従魔たちに任せて早めに休んだのに、何故村人の方が早く起きてるんだか。
それにしても、こういう所で生活していたせいか、本当にタフだなって思った。
「改めて聞きますが、本当にこの村から出て行ってもよろしいのですか? 今なら、新しくなった領主の元で、住み慣れた場所で生活できるんですよ?」
昨日も同じような事を聞いたが、やはり決断は変わらない様子だ。それ以上に新天地に思いをはせている様子さえ見られている。
「じゃぁ、出発しましょうか。見慣れない馬車だとは思いますが、1匹で4~5台の馬車を曳ける魔物の馬なので、問題はありません。昨日決めた乗り込む馬車に乗ってください」
俺たちの馬車がキッチン馬車含め3台、ジェノサイドキャラバンは4台+村人を運ぶために6台、この村で作ったのが6台の合計19台である。
馬車の隊列は4つに別けている。
1つはキッチン馬車単独。
残りの馬車は、俺たちの馬車2台とキャラバンの馬車4台を3班に分けて、前に俺たちの馬車がくるようにしている。その後ろに村人たちの乗る12台の馬車を3班4台ずつ配置する。これで村人の馬車からは、俺たちが移動中に何をしているのかは見えない。完璧だ!
ウォーホース2匹で6台の馬車を曳いているのだが、恐ろしい事に1台の時と大して変わりが無いといった様子で走っている。
問題があるとすれば、ウォーホースがいつものように走れずに、うずうずしている事だろうか? その問題は馬車の方にあるんだけどね。
いくらドワーフたちが手作りしたとは思えない性能のボールベアリングを使っているとはいえ、その部分以外は普通の馬車と大差がないのだ。
サスペンションのような機能も無く、車輪は多少衝撃を吸収するゴムのような魔物の素材をつけているとはいえ、いつものペースでウォーホースが走れば、馬車の中がシェイクされてしまうので、速度を出せないのだ。
それでも通常の馬車の倍以上の速度を出しても問題が無いので、予定していた1ヶ月ではなく半月ほどでディストピアに戻れそうである。
道中、気になる事があった。
「全体的な戦力でいえば、帝国の方が上だけど、平均的にみると聖国の方が上なのかな? 全体的な治安がいいんだよな。個の力より集団の力ってとこなのかな?」
大体行程の半分程、1週間が過ぎた頃にそんな事を思って口にした。
「そうですね。確かに聖国内の治安はかなりいい方だと思いますね。マップ先生の検索機能でも、盗賊のような集団は、小規模のものが少しいるくらいですね」
俺も調べてみて知っていたが、王国に比べれば天地の差……とまではいわないが、治安にかなり差がある。
中央から遠い司祭や神官が目の届かないことをいい事に、私利私欲を満たすために行動してたせいで、こっちにちょっかいをかけてきたのかね? 後は、獣人への対応が微妙だった事以外は、いい傾向の宗教に見えてきた。
俺たちと敵対してた時は、国のトップだから、例え部下たちの不始末とはいえ、自分から非を認めるわけにはいかなかったって所かな? 過ぎた事は考えても仕方がないかな?
この1週間は、特に何もなかった……と思う。あったと言えば、普通より早く移動しているため、村人が馬車酔いをしているくらいだろう。
クッション性の車輪を使っているとはいえ、さすがに細かく揺れると酔ってしまうようだ。
すまんな。俺たちの馬車にはほとんど揺れが無いんだ。って思ったのが3日前。今は、あれだけ揺れている中で、キャラバンがいろんな街で手に入れた本を読む人まで出てきているのだ。どんだけタフやねん!
思わず、本を読んでいる姿を見て叫んでしまいそうだった。
っと、まぁこんな感じで平和に1週間が過ぎた。
下手に街に入って宿をとるより、野営をした方が快適なので、暗くなるギリギリまで移動ができ、予定よりさらに早く着きそうだ。半月、2週間を予定していたが、12日で着きそうだ。後5日!
でも、その道中に1つだけ不安要因がある。
俺たちからすれば大した事は無いのだが、問題は問題である。どこで情報を手に入れたのか、盗賊に扮した近くの領主たちが派遣した兵士がいるのだ。その数は、およそ100人。遭遇するのは2日後。
「さて……みんな、あの盗賊まがいのやつらどうする?」
俺たちは、馬車の1つに集まり作戦会議を行っている。
「強さ的には大した事ありませんが、こちらは非戦闘員が200人を超えています。普通に考えれば、不利ですね」
「でもでも、所詮神殿騎士にもなれなかった、ポンコツの集まり100人でしょ? そんなの蹴散らしちゃえばいいんじゃない?」
キリエの報告に対して、ジュリエットが辛口な事を言っている。確かに、神殿騎士にもなれなかった落ちこぼれではあるんだけど、
「いちいち私たちが真正面から対応する必要ないんじゃないですか? どう考えても向こうが悪いのですから、適当な魔物を召喚してけしかければよくないですか? もしこっちに魔物が来たら倒してしまえばいいと思います」
リリーは、自分たちで動くのも面倒なようだ。ドラゴニュートのせいなのか、強い人とは戦いたがるが、興味を示さない相手にはとことん面倒だという態度をとる事がある。
それでも、作戦や命令であれば真剣に行うので、ただ強い人と戦って自分を鍛えたいのだろう。おじいちゃんのレイリーと、よく模擬戦をしてるからな。
レイリーとの戦闘訓練はハードだから、俺はできるだけ参加したくないんだよね。あのおじいちゃん、底無しの体力だから本当に困るんだよね。
っと、いかんいかん。
「村人たちを不安にさせるのも良くないから、召喚した魔物で襲わせようか」
その後はどんな魔物を呼ぶかで会議が終わった。
その日の夜、誰に覚られる事なく俺たちを待ち受けていると思われる集団は、クマの集団に襲われて生存者3人……その3人も重傷であり、今にも死にそうである。
俺達の通る街道の近くまで来ているが、到着するまで持つのだろうか? ポーションで治療はしている様だが、虫の息だろう。まぁ生きてたとしても無視して走ってくけどね。
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