1020話 バリス教って?
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「シュウ殿! お手間をかけさせてしまい、申し訳ありませんでした!」
神殿騎士団100人が並んで一斉に頭を下げる光景は壮観だな。変な感想を懐きながらこの様子を眺めていた。っとイカンイカン!
「俺が勝手にやった事だから気にしないでくれ。で、何か話があるからここに来るようになってたんだよな?」
俺がそう言うと話し始めた。
現地産勇者は、領主の代理人に、この村から街に移り住めば、この村に便宜を図る事を約束してもらい、村から街に移り住んだそうだ。
その時に聞かされていたのは、街に専属の兵士を置いてもらえる事や、村から徴発した食料の補充として、数倍の物資を送る事を約束してもらっていたそうだ。
だが、派遣された神殿騎士団の人に話を聞き、実際と違う事を知った現地産勇者は、ひどく怒っていたらしい。
魔物に強くても、対人戦にはあまり強くないので、暴れるような事は無かったようだが、人を眼力だけで殺せるなら、領主は10回くらい死んでいたのではないかと言うような形相だったらしい。
実際に現地産勇者がいなくなって、村の人間が何人も死んでいて、俺が来ていなかったら村が滅んでいた可能性もあるのだ。生まれ育った村の人を助けてあげられなかったことを悔やんでいたらしい。
真っ直ぐに育ったいい青年だな。レベルはそんなに高くはないが、ここら辺の魔物には十分すぎる程のレベルだろう。その上で勇者の特性もあるのだから、負ける要素が無かったんだろうな。
自分がいれば助けられただけに、相当精神的にも応えているようだ。
領主は縛り首、領主一家は奴隷落ち、関係者は罰金、払えなければ奴隷落ち、と言う裁きになったようだ。
領主の変わりは、皇都から優秀な平民が連れてこられたそうだ。経歴としては、実力と信仰心で神殿騎士団の中隊長を任されるくらいには、武勇に優れているとの事だ。
そもそも神殿騎士団に入れる人間が、聖国の騎士の中でも一握りなのだそうだ。それなのに数万人規模の騎士団って……っと、話がそれた。実力と信仰心が無いとはいれないエリート集団で上から数えた方が早い実力の持ち主だと。
その一方で実務系の能力はあまり高くないらしく、抱き合わせで優秀な平民の文官も数名派遣されているらしい。
そんな感じで、街の方の報告は終わった。って、それを俺に話す必要ってあるのかな?
「……です。最後に、勇者は村の人間と一緒にいたいという事で、村の人と一緒に連れて行ってもらえないでしょうか?」
「本人がそう望んでいるなら連れていくよ。数百人規模の移動だ。後1人や2人増えた所で大した違いはないさ。あ、壁とか家は現状のまま残していくから、ここに住む人を探すならそっちでよろしく。農作業に向いている土地もあるみたいだから、募集を出せば数が集まるんじゃないか?」
そう助言しておいた。実際にここの土地には栄養が多く含まれているように見えるし、村長の話では勇者がいなくなる前は、食べるのには困らなかったと言っていたしな。
そう考えると、ここに来た領主の代理人とやらは、どれだけ食い物を持って行ったんだろうな。
話が済むと神殿騎士団の面々は、移動を開始した。え? ここに到着してから1時間も経ってないのに、もう移動を開始する様だ。
この村には物資が無い事を知っており、ここに留まる事を考えていなかったようだ。その上、徴発した食料分はないが、運べる範囲で持ってきてくれた食料を置いていってくれている。
これはバリス教について、考えを改める必要があるな。大本の部分は腐っていたわけじゃなったみたいだな。
それなのに、何で俺の街を攻めてきたのだか、人が集まった所為でどうにもならないしがらみが増えてしまったのだろうか?
「キリエ~、俺たちはどうしよっか? 今日中に出発するか?」
「先ほど、村長とお話ししましたが、明日の出発にしようと言う事になりました。勇者も突然の移動で困惑しており、かなり疲れがたまっているようです」
「それもそうか。勇者からしたら、いきなりだし、約束は守られていなかったわけで、混乱もしてるもんな。無理に移動してもいい事ないもんな。今日は、みんなの英気を養うという事で、ちょっと豪華な食事を提供しようか? まだ夕食には時間があるからな」
そう言って、ブラウニーに指示を出すと、今まで以上にいい笑顔で仕事にとりかかっている。これもワーカホリックと言うのだろうか?
さて、俺も指示したからには何かするか。ちょっと風景は変わってるけど、この村の写真でも撮っておくか。どこまで手伝うか分からないけど、慣れた村の景色を再現して上げられればと考えているけど、さすがにそれはやり過ぎだよな。
写真だけはしっかりとっておこう。今更だけど、この村って今まで見てきた建物とは、何か違うんだよな。大工の技術や系統の違いなのかな?
大きなことができるわけでは無かったのだが、ここから1ヵ月近くの移動になるので、英気を養ってもらおう。
問題なのは1ヶ月近くも馬車での移動……俺たちだけ先に帰るという選択肢はなくなってしまったので、今のうちに体制を整えておこう。
俺は1ヶ月帰れないと、処理に困る仕事が溜まってしまうので、それの報告を受けれるように馬車の1つに憑依をする際に使うベッドを仕込んでおく。
ディストピアでするべき仕事は、ドッペルの憑依機能を使って行う事にした。念のために用意しておいたドッペルがやっと使われる事になった。
村人には悪いが、俺たちは移動の間の娯楽を準備している。まわりから見えないように工夫もしているので、たぶんばれないだろう。ばれた所で何があるわけでもないが。
キャラバンの方に関しては、移動が中心なので移動中に警戒や、御者をしている人間以外の娯楽が大切な事を理解しており、ディストピアに帰ってくるたびに色々補充しているからな。
キャラバンの人間に関しては、大変な仕事の分だけ恩恵を受けている。娯楽や休憩と言う面に関しては、グリエルやガリア、ゼニスたちより質は上だろう。
今日は、お酒も解禁して宴会のようなどんちゃん騒ぎになった。
そんな中でも警戒はしなければならないので、お酒を飲まない俺たちで警戒を担当している。
はっちゃけてる人が多いけど、住み慣れた場所から移動する悲しさを紛らわすために騒いでいるのだろう。
家があるのに、よく移住する事にしたもんだな。
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