1014話 やさしさにふれる……
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急に泣き始めてしまった俺にみんなが慌ててしまい、オロオロする事しかできなかった。
よくわからないが泣いてしまっているが、この状態ではみんなが食事をできないので、一旦食堂を出る事にした。「食事は先に食べてくれ」と、つっかえながらみんなに伝える。
そんな俺を心配してついて来てくれたのは、ピーチと従魔たちだった。ピーチはともかく、従魔たちは腹が減っているのに俺について来てくれるなんてな。
妻たちでついてきたのがピーチだけなのは、妊娠しているカエデ・ミリー・リンドの3人は「俺より子供を優先するように」とスカーレットに強く言われ、残った妻たちが心配して全員で来ようとしたが、全員で行くと邪魔になるから、代表としてピーチが俺に付き添ってくれたと後で聞いた。
「ご主人様……いえ、シュウ様。いったんお部屋へ行きましょう」
そう言われて部屋へ戻るが、寝室として使っている部屋ではなく、趣味部屋に連れてこられた。
「ピーチ、何でここに?」
「シュウ様。ここに最後に来られたのはいつか覚えていますか? 私が知っている限りで言いますと、およそ2ヶ月は来られていません。ブッ君で小説を読んだりゲームをされている姿は見られていますが、ここには来られていませんよね?」
ピーチに言われて思い出すが、前回ここに来た時の事を思い出せずにいた。ミリーたちがいて追い出された……というのはあるが、それとは別に最後に使ったのはいつだっただろう。
「どんなに大変でも、疲れてても、遠出をしていない時は2日に1回はここに来られていたのに、3人の妊娠を知ってから行動が変わっていた自覚はありますか? 特にミリーさんは、事あるごとに息抜きをしてきたら? とか、落ち着いて? とか言ってませんでしたか?」
ミリーに限らず、俺が心配している事を反対に心配していた気がするな。
「私達の事を思ってくれているのは、すごく嬉しい事です。でも、シュウ様が倒れられたら困ります。私たちを救ってくれた大切な人、そして最愛の人が倒れられたら……」
そう言ってピーチは言葉を詰まらせる。
俺がみんなの事を考えているように、みんなも俺の事を考えてくれているのは分かってた。でも、その思いに差があったのだろうか?
多分、思いに違いはないけど、何かが違うのだろう。でも、何で俺は泣いているんだ?
「私たちには、シュウ様の考えている事は分かりませんが、今シュウ様の、心と体のバランスがとれていない事だけはわかります。特に、あれだけ好きな事を全力で行っていたシュウ様が、ここ最近はしたい事をしておらず、思い詰めている……と言っていいのでしょうか? 余裕がない感じがしました。
なので今日の事は、みんな嬉しく思っています。マップ先生がありますので、シュウ様がどこで何をされているのかは大体わかります。よい息抜きができたのでは? と思っていますが、久しぶりに思いのままに楽しんだ気分はどうですか?」
特に何も考えていなかったけど、なんか楽しかったな……そういえば久しぶりだったのかな?
「シュウ様は自覚されていないようですが、おそらく今までずっと、心に相当大きな負担がかかっていたんだと思います。その上に3人の妊娠を知って更に負担が大きくなっていたんだと思います。私たちより経験の多い、ミリーさんが気付いてゆっくりしてもらう時間を作ろうとしていたんです」
なかなか泣き止めずにいると、ダマがベッドに座っている俺の足に乗ってきて抱き着いてきた。それに合わせて従魔の皆が、俺の周りに身を寄せるように集まってきた。
「みんなありがと……」
モフモフパラダイスの中で意識がなくなった。
どれくらい寝たのだろうか? 空腹を感じて目が覚めた。
周りには意識がなくなった時のように、従魔たちが身を寄せるようにしていてくれたが、何となく配置が換わっている気がする。それに、若干美味しそうな匂いをただよわせていた。
多分、俺が寝ている間に飯を食べて、また俺の所に戻ってきたんだろうな。なんか寂しい気はするけど、わざわざ戻ってきてくれた事は嬉しいな。
起き上がるのに、ダマやニコ、ハクをどかしながら体を起こした。
「お腹空いた、食堂に行ったら何か食べるのあるかな?」
そうつぶやいて、食堂へと歩いていく。
「それにしても、俺が結構動いて起きたはずなのに、誰も起きなかったな。あいつら完全に野生を忘れてやがるな」
そもそも、ほとんどが召喚された魔獣なので野生だった事は無いのだが、シュウはそんな事に気付くわけもなく進んでいく。
他にも大きな要因があるとすれば、Lvが高いせいだろう。身に危険を感じればすぐに臨戦態勢になるのだが、強いせいでよっぽどのことが無いと臨戦態勢にはならないだけなのだ。睡眠が大切だという事もあるけどね。
食堂へ入ると、キッチンから何やら料理をしている音が聞こえる。覗いてみると、
「あっ! ご主人様、目が覚められたのですね? お食事にしますか?」
「うん、お腹が空いたから何か食べさせてもらいたいんだけど、いいかな?」
「もちろんでございます。今日は夜番だったので、ご主人様に料理を食べてもらえないと思っていましたが、食べていただけるなんて!」
「あなたはちょっと黙ってなさい」
そう言って、ブラウニーがブラウニーを押しのけて前に出てきた。1人1人特徴はあるのだが、名前はつけていないので、ブラウニーとしか呼べない。
「それで、何か要望はありますか?」
「手軽な物でいいんだけど」
「そうですね、15分程あれば、大抵のものはお作り出来ますが……希望はないですか?」
「それなら、ガッツリ食べたいから、丼物とから揚げを食べたいな」
「丼物とから揚げですね。丼物のリクエストは何かありますか?」
「そこはお任せする。みんなが作る料理は何でもおいしいからね、出てくるのを楽しみにしてるよ」
そう言うと「承りました」と言って、キッチンへ戻っていった。
揚げ物の音がするな。良い匂いもしてきて、更にお腹が空いてくる。
10分程待つと、料理が出来たようで運んできてくれた。
「お待たせしました。揚げたてのから揚げと、海鮮丼になります。汁物は豚汁となっています。どうぞお食べください」
から揚げはいつも通り美味いな。何で海鮮丼なのだろうと思ったが、親子丼だと鳥がかぶるし、天丼だと油が多く、牛丼だと肉ばかりかと思い、あっさりとした酢飯の海鮮丼にしたとの事だ。
サラダも付いており、ドレッシングは青じそドレッシングでさっぱり食べた。
結構な量だったが、俺がしっかりと食べれる量で準備してくれていたようだ。胃の大きさまで把握されているのだろうか?ブラウニー恐るべし!
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