1002話 たまった仕事を片付ける
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ビーズクッションに埋もれて過ごした日から1週間が経過した。
この1週間は、本当に何もせずに過ごした。いや、何もしないというのは語弊があるな。仕事はなにもしないで過ごした。
いつもと同じじゃん? とか言われたけど、いつかやったゲーム週間みたいに、引きこもって延々と遊び続けたのだ。ゲームをして、小説を読んで、ダマをモフモフして、ニコをニョンニョンして、シエルの甲羅を磨いて……とにかく、仕事を一切しなかった。
いつも、あまりしていないと言われると胸が苦しいが、それでもちょっとは仕事をしているのだ。9割以上はグリエルたちで処理できるが、1日に1件ほどは俺が判断をしなければ困る内容の案件が舞い込んでくるらしい。
例えば、街の拡張をしたいので領主代行ではなく、領主の許可がほしいとか。グリエルたちの判断に任せると言っても、聞く耳を持たず俺に判断をさせるのだ。俺が支配している街だからしょうがないっちゃしょうがないんだけどな。
他にも、街のお金が大量に動くときや、グリエル達では無いが、他の街に派遣したグリエルたちの部下が、不正の証拠を発見したので、不正をした相手に対する裁きを求めたりとか。
街の中で起きた事の大半は、衛兵や領主代行でも何とかなるのだが、街の中枢で働く人間に関しては、領主の権限で色々判断をしなければいけないので、代行の話を聞いて俺が処理するという流れになるのだ。
面倒だが、そうしなければならないというならするしかないのだ。
だがこの1週間は、休む宣言をしていたのでそういった仕事も回ってこなかった。正確には判断保留にして、グリエルとガリアが時間を稼いだ感じだ。ちなみに、ダンジョンに潜っている間も、俺が判断しなければならない仕事はやっている。
で、今は1週間でたまった仕事。10件分の仕事の処理をしている。と言っても、1時間もかからずに終わってしまう仕事だ。
5件はグリエルたちの部下の部下の部下? 末端の人間が不正をして、街の金を横領していたらしい。全部違う街なので、申し合わせてしたのかと思う位だった。でも、グリエルの部下しか魔導通信を使えないので、それは無理だろう。
よくわからないけど、お金が動く所で働いてる人間の中には、必ずこういう奴が湧くんだよな。今回に限ってはいつもより多いから、示し合わせたのかな? って思ったのだ。
残りの5件の内、4件は街の拡張による予算案を通してほしいとの事だった。その内の1件は、農耕地や牧草地ではなく、奴隷や貧民等の隔離地域作成という意味不明な拡張内容だったので、グリエルにふざけてるのか聞いたら、
「あ? しっかり資料読んでくださってるんですね。良かったです。一応案件としては、本当に出された意見なので、見ていただきたかったんです。で、どうします?」
「もちろん却下だ。何故隔離する必要がある? 街の拡張は問題ないが、隔離するようなら提案した奴を隔離してやれ。というか、こんな事提案する奴は何なんだ?」
「えっと、ダギアですね。報告では、提案をした人物は王国から流れてきた、どこかの街の貴族の三男とかいう話ですね。
採用の際に思想的には問題なかったので入れたそうですが、やはり選民思想に近い物を持っていたようで、ある程度信頼され始めた頃から、こういった内容の提案をするようになったようです。他の街でも、選民思想の人材が増えてきているそうです」
「マジか……入る時には隠して入って、信用され始めたら周りを思想汚染するような感じか? 運が良ければ職場の乗っ取り、街の支配って感じか?」
「そうですね。ディストピアから領主代行を派遣しているので、その代行になり替わろうと考えている人物がいるかもしれませんね。ですが領主代行は選民思想に染まった貴族の犠牲となって、奴隷に落とされている者たちです。シュウ様の許可があれば嬉々として排除してくれるでしょう。
名目上、街を追放されてこちらの街へ来ているので、奴隷に落とした所で何の問題もありません。許可さえあれば、紐付きであったとしても奴隷に落とすでしょうね」
とりあえず、変な思想の持ち主は懐にいられると気持ち悪いので、
「許可出しちゃって。横暴とか言われようともかまわないから。冤罪で奴隷落ちにさせる奴らよりはマシでしょ。そもそも、俺の支配下にある街では、選民思想的な差別は禁止してるしな。問題があったらすぐに知らせるようにだけ伝えておいて」
「了解しました!」
と、まぁこんな感じの話の流れだった。
最後の1件は、街の隣にもう一つ街を作りたいという内容だった。これも良く意味が分からなかったので、グリエルたちに話を聞くと、住民が多くなりすぎて街のキャパを超えつつある街だそうだ。
なら、新しい街じゃなくて拡張でもいいのではないかと思ったのだが、ディストピアを知っている代官が、ある程度仕事場を別ける方が効率的だと学んでいたらしく、その実践ができないかと提案してきたそうだ。
特に鍛冶工房等は音がうるさいので、住宅の近くではない方がいい。ある程度の住み分けをさせておけば、警備の面に関しても分かりやすく効率的だと思うそうだ。
「なるほどね。商業地域をつくればそこにある程度兵士を集中させられるとか、飲食エリアをつくればトラブルが発生しそうな所に衛兵を配置しておける……か。悪くないと思うけど、3人はどう考えてる?」
グリエル・ガリア・ゼニスも概ね賛成をしているが、問題はどこから金を出すかという事らしい。そりゃそうだ。新しく1つの街をつくろうと考えれば、ある程度新しい街に職人たちを移住させなければならないし、それに対する謝礼も払わなければいけない。
今回の計画は、一から街をつくるよりはお金がかかるのだ。俺の街がいくら景気がいいと言っても、税収だけでそれだけのお金をひねり出すためには、数十年かかる事になる。
「実験として街には協力してもらうという建前で、俺のお金で援助しよう。もし上手くいくなら、他の街でもやっていこう。ゼニス、すまないけど協力してくれ。後、近隣から土魔法の使えるフリーの魔法使いを集めて、城壁などの建築を手伝わせてみてくれ」
「……かなりお金を使う事になりますが、いいのですか?」
「どうせ使う予定の無いお金だ。出来るだけ仕事を外注して街にお金を流してやってくれ。うわさを聞きつけて、人がさらに増えるかもしれないしな。もし足りなければ、こっちで用意するから帳簿の管理だけはしっかりお願い。グリエルたちは、部下に不正を監視させるように徹底しておいて」
こういう大金が動く時には、多くの場合でちょろまかす奴が出てくるからな。
仕事が終わり、伸びをしてから執務室を後にする。何となく、足元にいたダマを抱え上げ腹に顔をうずめてモフモフしてみた。くすぐったかったようで暴れるが、30秒ほどは堪能させてもらい解放した。
「さて、今日は何をしようか?」
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