1001話 戻ってから
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ディストピアに戻って3日目。俺はやっと休めると、趣味部屋にあるビーズクッションに埋もれている。
ディストピアに帰ってきて1日目は、もう夜だったのでそのまま家に戻って休んだ。
2日目は、まずジャルジャンへ向かいトルメキアの王子の引き渡しと、将軍の書いてくれた書面をギルドマスターに手渡している。
その際に状況を説明してほしいと言われ、簡単に時系列で説明して、王都で行われた会議の内容と将軍とのやり取りを覚えている範囲で話した。
そうすると、ギルドが所有している魔導通信機。俺たちの物に比べれば、かなり性能は悪いが……それを使って、どこかに連絡を取っていた。それにしても、ギルドにも魔導通信機があったんだな。ギルドマスターだけの秘密だったりするのかな?
ミリーが何か知らないかな?
10分程待っていると、対応が決まったらしい。トルメキアにある冒険者ギルドは、すべて撤退。その際に希望があれば、職員も冒険者も一緒に移動するとの事だ。今聖国に向かってる冒険者たちは、大丈夫なのだろうか?
と思ったら、聖国を攻めている冒険者たちが帰ってくるまでに準備をして、帰ってきたら事情を説明して移動をするらしい。それに伴って、依頼の受付がすべてストップしてしまったようだ。
これがAとかBランクの冒険者だったら、ここまでの話にならなかったかもしれないが、Sランク冒険者相当の俺たちに対して行った契約違反だったため、即座に撤退に踏み切ったようだ。
まぁ一番は、撤退するならそれにかかった費用の半分を負担する、と言ったのが大きかった。
費用の半分は浮き、移住した職員たちや冒険者への補償に充てられるからだ。特に職員に関しては、不足している街もあったので、希望と照らし合わせて移住するようだ。
このやり取りで、ほぼ半日を使いきってしまった。ディストピアに戻った頃にはすでに14時だった。
ディストピアに戻ったその足でグリエルたちの所へ向かう。
「シュウ様、お疲れさまでした。ある程度の報告は受けていますが、本当に災難でしたね。商会に関しては、持って行った食料を2割程割高にして売り払い撤収しています。一応、グリエルたちとも相談して、暗部の鬼人の小隊を派遣しています」
初めに話かけてきたのはゼニスだった。報告と対策を挨拶と一緒にしてくると……
「鬼人を派遣したの? どうして?」
「シュウ様のマップ先生である程度は分かりますが、それでも実際に見ると違いますので、その後を報告してもらうために派遣しています。一緒にシュウ様からスキル付与をしてもらったブラウニーも、派遣していますので地下通路の移動も問題ありません」
ブラウニーが付いていってるなら、食事についても問題はなさそうだな。後で、DPを譲渡しておかないとな。いざって時に足りなくなったら大変だしね。
鬼人から入ってくる報告では、軍も義勇軍も連れ去られた人も混乱しているが、それぞれ行動に移っているらしい。
軍と連れ去られた人たちは、各街に向かって移動をしているようだ。食料が足りなくなっているので、別部隊を作り街から運んでいるらしい。
順調にいっているように見えているが、かなりの問題が発生しているらしい。聖国の盗賊軍隊が街から食料をかなり持って行っているので、食料の確保が大変なようだ。襲われて大変な思いをしている街の人間から接収もしているらしい。
それを聞いた時に、こいつらはバカなのか? って思ったね。軍の人間が食料を多少切り詰めて、近くの魔物の領域や森で狩りをすれば飢えをしのげるのに、それをしないで徴収してすぐに街に送るって……街に帰っても食料は無いだろうに。
余裕のある街から運んでくるといっても、それなりに時間がかかる。トルメキアが俺たちを排除してしまったので、食糧事情が一気に悪化しているのだ。義勇軍の食糧も半分程接収されてしまい、義勇軍の士気が低下しているとの事だ。
「俺、この先の展開が読めた」
「シュウ様、奇遇ですな。私達も同じ事を考えていますよ」
ここにいる、俺・グリエル・ガリア・ゼニスは、この先の展開を予想して同じ考えにたどり着いたようだ。
「「「「聖国の街で、冒険者のタガが外れて大惨事」」」」
士気も低下して、抑止力になる人間が減り、食料不足による苛立ちで食料に手を付ける。その事により抑えていたモノが爆発して暴走、それが伝播して最悪の事態になる。と、俺たちはそう考えた。
冒険者たちが聖国を攻めずに、魔物の領域で食料調達に専念すれば問題ないのだが、そうすると聖国にダメージを与えられない。だから多少無理をしてもトルメキアは、聖国にダメージを与えたいので冒険者たちを動かす。
まぁ、王都にいた奴らの事を考えれば、やりそうな事の想像はつく。
略奪で得た冒険者たちの儲けを接収して、街の被害の補てんにするだろう。あいつらは、自分たちの金を使わずに済む方法があるなら、絶対にそっちを選ぶ……
「そして、冒険者ギルドが撤退して冒険者の少なくなったトルメキアに、再度聖国が侵攻してきて今度は占領されるだろうな」
「そうですね。それが一番可能性が高いと思われます」
「シュウ様の襲撃で聖国の国力が落ちているといっても、大国なので地力が違います。それに、2つ目の街では確実に住民への被害が出ます。
1つ目の街みたいに住民へ被害が出なければ、他の領主や司祭は幹部候補の力が削がれたと言って喜ぶと思いますが、住民に大量に被害が出れば、おそらくそれに対する報復を行いますね。奴隷がほしいと思っている以上、今度は確実にすべてを奪い去るのではないかと思います」
「ゼニスもそう思いますか。そういえばシュウ様、聖国の盗賊を穴の底に落としていると思いますが、あれはどうするのですか?」
あっ! 装備品などは回収したけど、あいつらについてはすっかり忘れてたな。
「忘れてたな……トルメキアに与する必要もなくなったし、ダンマスの力を使って解放しちまうか?」
「それもいいかもしれないですね。シュウ様にタダ働きさせた報いは、自分たちの身をもって受けていただきましょう。ついでに食料になりそうな動物でも穴の底に落としてから、体力を回復させておいてはどうですか?」
グリエルが黒いな。俺は聖人君子では無いのだ。あんな扱いをされればさすがにムカつくからな。
「そうするか。貴族の不始末で国民も一緒に苦しむのはかわいそうだけどな……って、そういえば教皇に伝言を頼んでたけど、あれで再侵攻止まったりするかな?」
「何ですかそれは?」
伝言を教皇にしろと命令した盗賊の幹部の生き残りの話をする。
「なるほど。ですが、今回は恐らく侵攻するのではないでしょうか? 最寄りの街にはまだ援軍としてきていた兵士たちがいるわけですし、1度目の侵攻をした兵士も解放するわけですから、武器さえそろえば動くと思いますよ。それに侵攻を止めたくなければ、教皇に一言伝えればいいのではないですか?」
確かに! でも、どうやって伝言を伝えようか? 冒険者ギルドの通信用魔道具で伝えてもらうか?
「聖国にも冒険者ギルドはあるんだよな?」
「そうですね。他の二大国に比べれば規模は小さくなりますが、主要都市にはあります」
ゼニスがよどみなく答えてくれる。
「じゃぁ、ジャルジャンの冒険者ギルドに行って、通信用魔道具で聖国の冒険者ギルドに伝言を伝えてもらって、教皇に届くようにするか?」
「了解しました。後の事は私がやっておきます。シュウ様はしばらくお休みください。緊急の用事があれば使いを出しますので、ゆっくりしていてください」
そんな感じで2日目が終わり、3日目の今日はビーズクッションに埋もれている。隣では、ダマやシエル、グレンにバッハも同じようにビーズクッションに埋もれている。全身が埋もれている姿は、微笑ましい。
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