1章第1 あるのは知識だけ
「異世界に来ちまったと言っても持ち物はなんもなし、あるのは野菜などの知識だけって結構詰んでんなこれ・・・。」
周りを見る限り、あるのは木と畑のような耕された地面。阿呆面を浮かべながら立っていると後ろからものすごいスピードで馬車みたいなものがやってくる。
「おい兄ちゃん!そんなとこに立ってんじゃねぇよ!轢かれたいのか!」
異世界に来てから数分で轢き殺されそうになる件について。
「す、すみません!」
「次からは気をつけろよ!・・・にしてもあんま見ねぇ恰好してるけどよ、一体どこから来たんだおめぇ」
こっちの世界ではつなぎの恰好は珍しいんだな。
「どこからって日本だけど。ジャパンOK?」
「聞かねぇ国だな・・・。ってもうこんな時間じゃねぇか!早くこの『野菜』を届けなきゃなんねぇから俺はもう行くぞ兄ちゃん!」
見た感じ30ちょっとぐらいのおっさんは荷台に積んでる大量の野菜を指さす。
「なぁおっさん。あんた農家なのか?」
「ノウカってのが何かわからねぇが俺みてぇな野菜を作って売ってるのを菜屋って言うのさ。覚えときな」
「こっちでは農家のことをナヤって言うのか・・・。急いでるところ悪いけどちょっとその荷台の中の野菜、見してくれないか?」
「勘弁してくれよ兄ちゃん!そんな時間はねぇ!俺は今から領主様のところに行ってこの野菜を届けなきゃなんねぇんだ!どうしても見てぇって言うなら荷台に乗って乗りながら見な!」
「じゃあそうさせてもらう。それと兄ちゃんじゃない。俺はナクマ・ユウシだ。短い間だがよろしく頼む」
「なら俺もおっさんじゃねぇ。ジゴって呼んでくれ」
「了解した。じゃあ失礼するぞ」
俺はジゴの野菜が積んである運車に乗り込んだ。
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「へぇ、トマトにきゅうり、トウモロコシにキャベツか・・・。夏野菜が多いって感じだな・・・。だけどこのトマトは水吸いすぎ、きゅうりは水が少ない。トウモロコシは大丈夫そうだけどキャベツは虫が多いな・・・。」
「おいユウシ!何ブツブツ言ってんだ!俺の作る野菜はそんなにおかしいか?!」
「あんまり良くないな・・・。なぁジゴ。お前菜屋になってからどのくらいだ?」
「俺が30の時に始めたからまだ4年ぐれぇだ!それがどうした?」
「いや、野菜を見てどのくらいやってきたか気になっただけだ。お前な、このトマトは水のあげすぎで破裂しそうじゃないか。それに比べてきゅうりは水が少なすぎだ!あとキャベツも虫食いが多すぎだ!」
「お前みたいな若造に野菜の何がわかるってんでぇ!この作り方で4年やってきてるんだ!」
「いっとくが俺はお前より野菜作ってきた時間は長いからな!見た目だけで人を判断するのはやめたほうがいいぜ!」
ジゴの野菜にダメだししてたら運車を引っ張る蛙のような見た目の竜・ヌロンのスピードが弱まり、止まった。
「おら着いたぞユウシ。ここが領主・リルローレ様の御屋敷だ」
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あと、これから後書きではユウシが異世界に来て知った事、知り合った人のことを書いておこうと思います。
『菜屋』・・・野菜を育て、販売する者。日本では農家と呼ばれる者。
『ジゴ』・・・菜屋。年は34。スキンヘッドでがたいがいい。
『ヌロン』・・・ 荷車を引いたり出来る蛙のような見た目の生き物。
他にもいろいろな種類がいる。日本では馬や牛に近い。