第4章 その3
着きました、と師に示されたのは十戸ほどの集落だった。谷間を細く流れる川に沿って小ぶりな家屋が点在し、全体にひっそりしている。見た目は山道とさして変わらず、アークの里だと知らなければ素通りしそうな土地だった。
ルディアの受けた印象通り、ここに長居する旅人はいないらしい。宿を取るなら昨夜泊まった湖畔の村のほうが便利だし、わざわざこの里を通らなくてもほかに馬車道があるそうだ。
生計は何で立てているのか尋ねたら「塩ですかね」と返された。集落を囲うマルゴー杉の林の奥に岩塩の採れる洞窟があるらしい。
「まあ今ではほとんど空っぽですが」
口角を上げ、悪戯っぽくコナーは肩をすくめてみせた。師の足は傾斜の強い坂道をすいすいと上っていく。
ルディアは背後を気にしつつ黒い外套の後を追った。すぐ側にはブルーノを抱えたレイモンドが、その後ろには数歩遅れてチャドとグレッグがにこりともせずついてきている。
コナーはルディア以外の者にアークを見せる気はないと言った。だから先にアウローラに会わせてもらう段取りになっている。
娘のことは多分一番簡単で、一番気の重い話だった。たとえ父親でもやはりチャドにはすべて明かせるわけではない。何もかも喋らなくていい程度に事態が収まってくれているのが不幸中の幸いだった。
「こちらです」
師は集落の中ほどに立つ切妻屋根の木造家屋に進んでいった。玄関が開くと同時、奥から中年農婦が出てくる。
「あら、お帰りなさいませ」
髪も瞳も濃いブラウンの、一般的なマルゴー人のなりをした女は訝り気味に一行を一瞥した。コナーが何事か耳打ちすると途端に彼女は愛想良くなる。
「どうぞお越しくださいました。お入りください。何もないところですが」
促されるままルディアは屋内に招かれた。表口は簡素な居間と簡素な台所に直結しており、一見普通の民家と変わらない。やたら棚が多いのと雑に紙類が突っ込まれているあたりが師のアトリエという感じだ。
レイモンドとブルーノとチャドが玄関をくぐったところで一度パタンと扉が閉まる。しばらくすると家の中にはコナーだけが入ってきた。
どうやらグレッグは外で農婦に足止めされているらしい。手際の良いことで彼に蟲の知識がないのは既に伝達済みのようである。この里の人間はほとんど蟲だそうだから、客の区分を伝える方法も確立されているのだろう。
「では小姫の寝所に参りましょうか」
先導する師に従ってルディアたちは最奥の部屋に入った。二つ並んだ寝台の横、昼の光が差し込む窓辺に揺り籠が置かれている。なんだか一幅の絵のようだ。宮廷事情も世界情勢も露知らず、柔い布に包まれた赤ん坊が眠っている。
誰も何も言わないから寝息がすうすうよく響いた。初めに赤子に近づいたのは足音を忍ばせた白猫だった。
眠りの妨げにならぬように背を伸ばし、ブルーノは揺り籠を覗き込む。だが少々背丈が足りず、彼は寝床の周りをぐるぐると回った。人の姿をしていればすぐにも姫を抱き上げてやれただろうに。
見かねてルディアは手を貸しにいく。揺り籠の前に両膝をつき、太腿に猫を乗せ、一緒に娘の顔を見た。見覚えのない顔をした娘の。
「…………」
身を入れ替えたとは聞いていた。だが現実にその光景を目にすると、言葉にならない感情が胸を押し潰す。
焦げ茶の巻き毛。瞼で秘された瞳の色も多分同じ。
無関係の乳児ではないのかと思いたい己を笑い、顔を上げる。コナーは淡々とした口調で「中身が入っているかどうか確認なさいますか?」と問うた。
「いえ、結構です」
悩みもせずに断った己も母としては冷淡な部類だったと思う。
アウローラなどと名付けたから同じ運命を辿らせたのか。娘には人間でいてほしかったのに。
「この子にアウローラの魂が……?」
いつの間にか隣に来ていたチャドが赤子の頬に手を伸ばした。触れていいかためらうように怖々と。
(魂か。一体何を表す名なのだろうな、それは)
師がアウローラに処方したのはルディアたちが脳蟲と呼んでいる蟲ではなく、もっとアークの中枢に近いものだそうだ。脳蟲よりも上等で、一人目の宿主の記憶をそのまま取り込めるらしい。だから人格が変容することもないのだと。
それでも別人と見なす人は別人と見なすようですが、との言葉を思い返す。ルディアにはどちらとも言えない。蟲を単に魂の結晶と認識しているチャドのことが羨ましかった。
「アウローラは最初からずっとアウローラだったのだね?」
元夫の質問に「ああ」と答える。間に脳蟲がもう一匹割り込んでいるような事態はないと。
彼の言い出しそうなことは大体予測がついていた。マルゴー人の身であれば公爵家に命を狙われる心配もない。このままひっそり育てたいと提案されるに違いなかった。そうして己にはアウローラの「肉体だけ」が残されるのだ。
(よくできた筋書きだ)
王家を再興するために娘に成り代わった自分を想像して吐き気がする。だがそれは最も現実的な案に思えた。すぐに使えはしなくとも最高に近いカードであると。我が子の人生まで乗っ取るのかという声を無視できるなら。
「…………」
沈黙がまた部屋に満ちた。コナーが「そろそろいいですか?」とルディアを呼ぶ。アークのもとへ行こうとの誘いだ。
頷いて立ち上がり、揺り籠に背を向けた。同時にチャドが問いかけてくる。
「私に引き取らせてくれるかい? 今のこの身体ごと」
拒否などできるはずがない。
「わかった」と頷いてルディアは寝室を後にした。
******
「すみません、俺ちょっと」
短く詫びてレイモンドはどうするか迷っていた身を翻す。一旦は閉ざされたドアを開き、外へと足を急がせた。
一人で行くと聞いていたのに追いかけてしまったのはどうしてもルディアが気になったからだ。すれ違い様に見た横顔がどこかつらそうだったから。
きょろきょろと辺りを回す。見れば彼女は既にコナーと林道に踏み入ろうとしており、慌ててそちらへ駆け出した。
「レイモンド?」
足音に気づいた二人が振り返る。ルディアは「待っていろと言っただろう」と困ったように眉をしかめた。
「や、その、大丈夫なのかなと思って」
しどろもどろにレイモンドは彼女を案じていることを伝える。何か無理していないかとはコナーの前では聞けなかったが。
「なんだ? お前もついてきたいのか?」
「う、うん」
発された問いに少し悩んで頷いた。放っておけなくて飛び出してきたのだ。側にいても問題ないなら側にいたい。
「それは駄目だね。アークのもとに連れて行くのは彼女一人だ。君は大人しく待機だよ」
が、肝心の画家の態度はにべもなかった。顔の前で手を振られ、あっさりと突っぱねられる。曰く、隠れ里の蟲ではないルディアを案内することも本来は避けるべき危険行為なのだそうだ。
「何がアークの消失に繋がるか知れない以上、蟲ですらない君を信じることはできない。悪いが戻ってくれたまえ」
きっぱりとした物言いにレイモンドは唇を噛んだ。「けど後でどんな話したか教えてもらうなら同じじゃないすか?」と食い下がってみるものの、コナーは頑として聞き入れない。
「又聞きと現物を見るのとでは天と地ほどの隔たりがあるよ。輝くものを目にすれば人間は欲を出す。自分を過信しない分別を持ち合わせているつもりならお利口にしていられるね?」
反論を封じられ、レイモンドは押し黙った。画家の隣に視線を移せば愛しい王女が心配げにこちらを見上げているのに気づく。その心配がアークについて聞けなくなるかもという懸念を含んでいるのはひと目で察せられた。
(『お前はアクアレイア人じゃない』の次は『お前は蟲じゃない』ってか)
嘆息を飲み込んで数歩分あった距離を詰めた。ルディアの手を取り、できるだけ優しい声で囁く。「待ってるから、一人で無理すんなよな」と。
「ああ、ありがとう」
返された微笑に少しほっとした。先程よりは落ち着いた表情だ。
「じゃあ行ってくる」
歩き出したコナーを追って恋人は林の奥に消えていく。尾行したってすぐにばれるんだろうなと諦めの息をつき、しばらくしてレイモンドは踵を返した。
鳥のさえずり。川のせせらぎ。響く音楽は穏やかだ。こちらの胸の重さとは裏腹に。
(心配なのは姫様一人じゃねーんだよなあ)
寝室に残してきた幼馴染を思い、介入すべきか否か悩んだ。さすがにチャドもここまで来てブルーノを無視はしないと思うが。そんなことを考えつつ林を抜けてコナーの家に戻ったら、玄関先でこれまた別の陰鬱そうな男に出くわす。
「あ、グレッグ……」
名を呼ぶと元傭兵団長が振り返る。
「なんだ? お前も追い出されたクチか?」
問うてきた男は上体を屈めて窓から屋内を窺っていた。その隣では不機嫌な兵士の相手にくたびれた感を隠しきれない農婦が肩をすくめている。
「ったく、なんで俺らは中に入っちゃいけねえんだよ。こっちは護衛のためについてきてるってのに」
苛立ちを示す台詞に農婦はなんの反応もしない。同じやり取りは既に何度も行われているらしく「なーにが先生の言いつけだ!」と憤慨しきった声だけが空しく辺りにこだました。
このままでは玄関を蹴破りそうだと荒れた男を見て危ぶむ。鍛えられた彼の肩を叩き、レイモンドは「まあまあ」と短気な元傭兵団長をたしなめた。
「王子様もようやく子供に会えたんだし、しばらくそっとしとこうぜ。俺らは散歩でも行かねーか? ブルーノも先生と出かけちまったしさ」
うっかり中に乗り込まれてアウローラの顔を見られると厄介だ。どう見ても別人だぞと突っ込まれたとき言い訳できない。この男はなるべく遠くにやっておこうと軍服の袖を引く。
初めは渋ったグレッグだが、農婦が「そうしてくださいますか? 私もこれから食事の支度があるもので」と水を向けると仕方なしに頷いた。厄介払いに不服そうではあったけれど、ひとまず傭兵はレイモンドについてくる。
足を向けたのはルディアたちが歩いていった杉林とは逆方向の川辺だった。岸に転がる大小の岩を踏み越え、目的もなくただ歩く。防衛隊と傭兵団の関係がこんなにこじれていなければ弾む会話もできたのだろうが。
(おっさんはルース殺したのがモモだってわかってんだもんなー)
一昨日狩りで一緒になった護衛たち。彼らはあまり深い事情に通じていないようだった。ルースが公爵家の密命を受けて動いていたこと、アクアレイア人と何かあったらしいことは察していても、そもそもの発端となった王族亡命の件などは。
だからどうにか最小限のギスギスで場をなごやかにできたのだが、グレッグは違う。彼がこちらに近づくのは探りを入れたいときだけだった。
粗探しと言ってもいい。多分グレッグは防衛隊にも責任があったと思いたいのだ。努力すれば殺し合いを回避することはできたはずだと。
「ありゃ、行き止まりか」
岩の向こうで岸辺の通れそうな道が途切れているのを発見し、レイモンドは足を止めた。後ろの男に戻れと促す。「橋でもあるかと思ったんだが、悪ィ」と詫びて。
「…………」
引き返す間もグレッグは閉ざした口を開かなかった。少し痩せた背中を見て深い憔悴を感じる。
こういうとき、ついつい棘を抜こうとするのはもはや習性なのだろう。気がつくとレイモンドは強張った後ろ姿に話しかけていた。
「すまねーな。こんな辺鄙な村まで来させちまって」
グレッグはぶっきらぼうに「別に」と応じる。「亡命請け負った延長だろ」と続けた彼は自嘲気味にせせら笑った。
「まあ結局、お前らのお姫様は公国が殺しちまったわけだがな」
酷い台詞だ。どう返せばいいかなどわかるはずもなくレイモンドは黙り込む。グレッグはグレッグで己の言葉に動揺したのか急に早歩きになった。
置いていかれないように、けれど追いつかないように、気をつけながら歩を速める。動揺は心のほうも加速させてグレッグを多弁にした。
「責めないのか? 怒ってないのか? 仕えてた主君なんだろ? なんだってそんな普通の顔ができる?」
矢継ぎ早の問いかけにレイモンドは眉をしかめる。
己とて思うところがないではない。ルースが奪ったルディアの身体は彼女にとって父親との繋がりを示す唯一のものだったし、取り戻せるなら取り戻してやりたかった。それが可能ならルディアもきっとそうすることを選んだだろう。だが現実には、失われてしまったものは二度と返ってこないのだ。
「終わったことを根に持てるほどアクアレイアにゃ余裕がねーんだよ。姫様も俺たちにそんなこと望んでない。大体おっさん、ルースが裏で何してたか全然知らなかったんじゃねーの?」
こちらが質問を投げ返すと今度はグレッグが黙り込んだ。「知ってたらきっと止めてただろ?」と重ねた問いに重い沈黙が立ち込める。
ルディアと違ってルースは死んだ。魂のかけらさえこの世のどこにも残っていない。だから多分、グレッグよりはつらくないし、ごちゃごちゃ言う気にもなれない。本当はただそれだけだ。
「……俺がもっと頼りになりゃあ、あいつ話してくれてたかなあ」
ぽつりと落ちた呟きにレイモンドは何も答えられなかった。ただ目を伏せ、瞼の裏に在りし日の副団長を思い浮かべる。
マルゴー人には珍しい、色素の薄い瞳をしていた。誰の目にもパトリア外の血筋であるのが明らかな。ああいう外見の人間がマルゴーで生きるには苦難の連続だったに違いない。同類であるレイモンドには簡単に想像できた。
(言わなかったんじゃなくて、言えなかっただけかもな)
そう思ったがグレッグに憶測を伝える気は起きなかった。言えば余計に彼を苦しめる気がして。
レイモンドが返答を避けたため、グレッグも話すのをやめてしまう。小石を踏む乾いた足音くらいしか彼の発する音はなくなってしまった。
(こいつらにはもう関わらないほうが良さそうだ)
漠然とそう感じる。近づいただけで傷が開くような相手とは距離を置く以外道がない。追いつめたくないのならこちらから離れてやるのが親切だ。
(上手くやれてるときもあったんだけどなあ)
無言のままレイモンドは歩き続けた。どれくらい経てばコナーの家に戻っていいか考えながら。
(近づいただけで傷が開く、か)
ふとブルーノが心配になる。猫の口では上手く伝えられないこともあろう。昔のチャドなら喜んで意を汲む努力をしてくれたに違いないが。
今頃二人で何を話しているのだろう。あの弱気な幼馴染が少しでもいい道へ進めればいいけれど。
******
ルディアもレイモンドも出て行ってしまったので、また揺り籠に首を伸ばすのが難しくなってしまった。そっと見上げた傍らの貴公子には、当たり前だが膝に乗せてくれそうな気配はない。
チャドは飽きもせずアウローラの寝顔をじっと眺めていた。姿は他人の子供なのにあまり気にしていない様子だ。そのうち眠りから覚めた赤子がぐずってふええと泣き出すと、彼はようやく出番が来たとばかりに娘を抱き上げた。
「あー、あー!」
チャドが赤子を揺すってやれば泣き声はぴたりとやむ。父の顔を覚えているのかアウローラはきゃっきゃと両手をばたつかせた。
小さな命を見つめてブルーノは目を細める。「忘れないでいてくれたのだね」とチャドも嬉しそうだ。
「城には連れて帰れないが、養育の支援をしよう。できるだけ会いにくるし、大きくなったら養女として迎えるぞ。約束だ」
未来を語る声は無償の愛に溢れ、聞いていると胸が痛んだ。彼がアウローラを受け入れてくれて良かったと思う反面、自分はどうだと悲しくなる。
まだ一度もちゃんと目を合わせてもらえていなかった。近づかないでほしいと全身が言っている。心臓の裂け目は塞がっていないのだと。
(ずっとこのままなのかな……)
これ以上どうにもならないのだろうか。告げるべきでなかった秘密を黙っていられなかったのは、ほかでもない己だけれど。
「茶色の髪もよく似合うよ。目はなんだか私のほうに似ているね?」
楽しげな二人の世界に立ち入ってはいけない気がしてブルーノは寝台の陰に後退した。早く誰か戻ってくるようにと祈る。
悲しいが、息を潜めて時間が過ぎるのを待つのには慣れていた。父の前ではいつもそうしていた気がする。声も立てず、身じろぎもせず、見つからぬようにずっとじっと。
(別人だって気づかれちゃいけなかったんだなあ)
本当の息子じゃないことも、本当の妻じゃないことも、気づかれたら終わりだった。だけどチャドは名前を知らないだけだったから大丈夫だと錯覚したのだ。彼ならきっとブルーノ自身を見てくれると。
なんて愚かな思い上がり。散々嘘をついておいて、加害者であるのも忘れて幸福を望んでしまった。父母のもとでは得られなかった温かいものを。
「…………」
どれくらいそうしていただろう。やがてチャドの声が途切れ、ぎし、と側で床板のきしむ音がした。つらいなら捨て置いてくれて構わなかったのに、姿がなければないで気に病ませたらしい。本当に優しい男だ。
「……あなたもこの子と遊んでやるかい?」
無理やり絞り出したような声に顔を上げる。血を吐きながら作り笑いをするような。
そんなものを聞いたら申し訳なさで堪らなくなってブルーノは首を振った。
己はアウローラの親ではない。現状を確かめたならそれで満足しなくては。
うつむいたブルーノにチャドは「そうか」とだけ言った。漂う微妙な雰囲気に赤子が「うー?」と不思議そうな声を発する。
わかりやすく怒ってくれればまだ良かった。いつまで伴侶ぶるつもりだと。だがチャドはブルーノを責めない。視界に入れまいと目を逸らすのも、きっと戸惑っているだけだった。どう扱えばいいかわからなくなった元伴侶に。
(ああ、僕、本当に酷いことしたんだ)
今更に思い知る。明かした事実が彼にとってどんなに重いものだったか。
名前を呼んでほしかった。そんな小さな願いのために己が抉った傷の深さは。
仕方ない。仕方がない。
すべて報いだ。浅い考えで他人の人生を踏み荒らした。
「……後で少し、二人で話す時間を取ろう。あなたはきっとそのために来たのだろう?」
優しい言葉が降り注ぐ。苦しげな、どこか観念したような。やはりチャドは誠実な男だ。一度関われば放棄できない。彼には責任のないことまで。
ブルーノはおずおずとチャドを見つめ、ごく小さく頷いた。もういいです、もういいんですと言えない自分を嫌悪しながら。
どうあっても彼とはこれが最後だろう。それならチャドに伝えたかった。
愛していたと。ずっと側にいたかったと。
けれどどうしてそんな言葉を口に出すことができるだろう? 真実を伝えたからこそ傷つけたとわかっているのに。
近づけないのに遠ざかれない自分があまりに滑稽で悲しかった。




