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第3章 その5

 生まれてくるまで赤ん坊は、母体に守られ、温かい水に包まれているのだと聞く。

 不思議な心地良さを感じていた。優しい腕にそっと抱かれているような。

 病の癒えた幼い日、ブルーノと入れ替わった最初の朝、どちらも同じ浮遊感の中にいた気がする――。





「…………」


 ルディアはぱちりと瞼を開いた。柔らかな毛布の感触。覗き込んでくる三つの顔。天井の木彫り細工から察するに、ガラス工房へ戻ってきたらしい。


「……助かったのか」


 掠れた呟きにモモが「良かったね!」と笑いかけた。アルフレッドもほっとした様子で胸を撫で下ろす。アイリーンに至っては滝のごとく涙を溢れさせていた。


「うわっ!?」


 身を起こそうとしたルディアは枕元の桶に気づかず引っ繰り返してしまった。飛び散った水が寝台と床をどぼどぼに濡らす。


(どうして洗面桶がこんなところに? 溺れたショックで熱でも出していたのか?)


 尋ねようとしてふと気づく。レイモンドとバジルが妙に開いた距離を取り、戦々恐々とルディアを眺めていることに。


「ひっ、姫様……?」

「なんですよ……ね……?」


 若い兵士が何をそんなに怯えているのやら。怪訝に眉を寄せるルディアの横で「なっさけないなあ」とモモが肩をすくめてみせた。


「二人とも姫様の正体見てビビっちゃったんだよ」

「は?」

「姫様がアレならブルーノやアンバーだって中身は同じでしょ。気にしたってしょうがないじゃんねー」

「ちょっと待て、なんの話だ?」

「えっ!? ……あれ? 姫様もしかしてさっきのこと覚えてない?」


 モモまずいこと言ったかも、と少女は兄の陰に隠れた。アルフレッドと目を合わせれば騎士はあからさまに動じた素振りで謝罪する。


「す、すまない。どうやら俺たちのほうが先に知ってしまったようだ。あー、その、ブルーノと身体を交換した方法……というか……」


 歯切れの悪い物言いに苛立ちが増した。私の正体? ブルーノと身体を交換した方法? 気絶している間に何があったのだ?


「おい、説明しろ」

「ヒッ!」


 逃げ出そうとした女の首根っこを捕まえる。この汗の量からして相当重要な情報に違いない。


「白状するなら早いほうがいいぞ? 理由はどうあれお前が私を誘拐したのは事実なんだ。情状酌量の余地がなければ監獄行きは待ったなしだからな?」

「う、ううっ」

「弟と揃って縛り首になるかもしれんなあ。ブルーノの命運もお前次第というわけだ」

「ヒイッ……! わ、わかりました。言います! もう何もかも皆様にお話ししますぅ……!」


 やっと観念したらしく、アイリーンはううっと青い額を拭った。今にも卒倒しそうな彼女をそっとカロが支えてやる。その姿はまるで魔女と使い魔だ。


「だ、大丈夫よカロ、ありがとう。覚悟を決めるわ。私だっていつまでも自分のしでかした過ちから逃げ回ってるわけにいかないものね……」

「アイリーン」

「全部喋って私に死罪が下ったときは、ブルーノを頼むわね……。あの子は何も悪いことはしてないんだから……」

「わかった。任せておけ」


 意味深な会話の後、気力を奮い立たせたアイリーンは「ついてきてください」と乞うた。


「十三年前あそこで何があったのか、それからお伝えしないといけません」


 ルディアはアルフレッドたちと顔を見合わせる。十三年とはまたえらく昔の話ではないか。

 ピンと来る者はいないようだった。わからない、とかぶりを振る面々とともにルディアは魔女の後ろに続いた。自分はアクアレイアの王女ルディアだと、まだこれっぽっちの疑いも持たないままで。




 ******




 先導されてやって来たのは島の裏手の小さな入江だった。打ち寄せる白波は穏やかで、遠浅の海は底まで透き通っている。

 馬蹄型の岩場を下りると申し訳程度の砂浜があった。側にはぽっかり開いた洞窟。薄闇の奥にアイリーンは進んでいく。


「ここって子供の頃、俺らが秘密基地にしてた?」


 レイモンドの問いにバジルが頷いた。ハートフィールド兄妹は懐かしそうに棚のがらくたを見やっている。


「秘密基地……か。私にとってここは大切な実験場だったわ。一人でも何時間でも研究に没頭できた……」


 波は洞穴の奥深くまで侵入していた。適当な手桶を掴み、アイリーンは海水をひと掬いする。それから彼女は傷んだ机のひきだしを開き、大きな虫眼鏡を取り出した。


「私がこれを見つけたのは十二歳のときでした」


 ご覧くださいと促され、分厚いレンズを覗き込む。直後ルディアは反射的に身を引いた。


「な、なんだこれは!?」


 鳥肌の立つ両腕で己の肩を抱きしめる。

 手桶の中には半透明の繊毛を持つ不気味な線虫が泳いでいた。それも一匹や二匹ではない。大きいのから小さいのまで、ゆうに十数匹はいる。


「……っ」


 知らなかった。美しいとばかり思っていた王国湾にこんな気色の悪い生物がいたなんて。さっき溺れたときうっかり飲み込んでいやしないか不安になってしまう。


「一体何が見えるんです? 僕も見てみたいです! ちょっと虫眼鏡をお借りしても……うげっ」

「なんだよ、俺にも見せろよ! ……ってウエエエエ!」

「モモも! モモも見たい! あっ……」

「うっ! こ、これは……」


 視野を拡大した途端、四人は揃って絶句する。気まずそうな防衛隊の反応を尻目にアイリーンは努めて淡々とこの発見に至った経緯を語った。


「……私の父とモリスさんは幼馴染で、私もこの工房にはしょっちゅう遊びにきていました。あの日私は飼っていたオウムが死んでしまったので、棺作りをお願いしに来ていたんです。完成を待つ間、ここでぼんやり骸を洗ってあげていたら不思議なことが起こりました。死体が息を吹き返したんです」


 話の繋がりが見えなくてルディアは眉間にしわを寄せた。


「息を吹き返した? 仮死状態だったということか?」


 尋ねるとただちに「いいえ」と首を振られる。


「私も最初はそう思いました。でも違ったんです。調べてみると王国湾のごく一部に生息している線虫が、死体に取りつき動かしているとわかったんです」

「し、死体に取りつく? 線虫が?」

「はい」

「蛆のように死体を食い荒らすのではなく?」

「はい」


 アイリーンは愛鳥の蘇生後、好奇心を抑え切れずに様々な実験を繰り返したと打ち明けた。必要な器具はその都度モリスが形にしてくれたらしい。極小の世界を覗くレンズは特に重宝したという。


「三年かけて判明したのは海には多くの微生物がいるということでした。でもその中で、動物の死骸に住み着くなんて風変わりな習性を持つ虫は一種類のみでした。私が『脳蟲(のうちゅう)』と名付けたこの虫は、名前の通り生物の脳を巣にします。寄生された宿主は生きていた頃と変わらずに餌を食べ、排泄し、成長し、繁殖しますが生前の記憶は持ち合わせません。私のオウムも覚えさせた言葉どころか初めは飛び方すら忘れていました」


 ルディアはごくりと息を飲んだ。王国の足元にそんな恐るべき生き物が存在していたという事実に。だが本題はここからだった。


「犬や猫、鳥の骸を拾ってきては甦らせ、私は得意になっていました。損傷の激しいもの、寿命死したもの、蘇生しない例はほかにもいくつかありましたが、どんな状態なら復活可能か私には簡単に見抜けました。……そんなとき弟が、まだ五歳だったブルーノが、この島の入江で水死したんです」

「は?」


 思わず声が裏返る。何をほざく、だったらお前の目の前にいるこの男は何者だ。そう追及しようとして喉を詰めた。一連のアイリーンの告白がルディアにどう関与しているか、おぼろげながら見えてしまって。


「実験に夢中だった私はあの子が外で溺れているのに少しも気づいていませんでした。何をどうしても弟は目を覚まさなくて、私は怖くなってしまって……」

「ブ、ブルーノに脳蟲とやらを寄生させたのか!?」


 うっすらと涙を浮かべ、アイリーンは沈黙する。できることなら違うと否定してほしかった。そんな恐ろしい所業は行っていないと。


「こ、子供だったんです。弟を溺愛してる両親に恨まれたくなくて……。幸い脳蟲の存在は私とモリスさんだけの秘密でした。父も母もあの子が死んで別人になったとは考えもしていなくて、それで私はすっかり安心しきってしまって。……今度は自分のしたことを正当化しようとしたんです」


 どのみち助からなかったのだから間違ったことはしていない。身体だけでも生かしてやれて良かったのだ。そう思い込みたかったと彼女は懺悔した。そのためにもっと許されざる罪に手を染めてしまったと。


「同じ頃、外科医資格を持つ父が宮殿に呼び出されていました。イーグレット陛下はご息女の病を治せる医者を探しておいででした。医師団に加わった父に、私は秘薬と偽ってここの海水を渡したんです。姫様が完全に息絶えて、一つの鼓動も打たなくなったらこれを与えてみてほしいと」

「…………」


 その光景を思い浮かべ、ルディアは声を失った。

 虫眼鏡越しでなければさっきの脳蟲を視認することはできなかった。藁にもすがる思いでコンラッド・ブルータスはまじないを実行したに違いない。秘薬にどんな化け物が潜んでいるかも知らず。


「……ちょっと待て……」


 額を押さえ、ちょっと待ってくれとルディアは繰り返した。それでは何か、私の正体というのは。ブルーノと入れ替わった方法というのは。


「器がなければ脳蟲はちっぽけな虫に過ぎません。でも一度でも自我を持てば宿主が代わっても同じ記憶を保持します。姫様が弟の肉体にありながら自身の心をお忘れでないのは――」

「私の正体があんなウゾウゾ毛の生えたミミズもどきだと言いたいのか!?」


 手桶を指差し呼吸を荒らげる。あまりにも現実味のない話だった。信じるに値しない嘘八百だった。ここに四人も証人がいなければ。


「いや、そっくりだぜそいつ。さっき姫様の耳から出てきた変な虫と」

「大きさこそ違いますけど、まさにウゾウゾ毛の生えたミミズもどきでしたよ」

「確かに少々受け入れがたい見た目かもしれないが、その、なんだ」

「モモはあれくらい肩に乗せたって平気だよ! 元気出して!」

「ッ元気なんか出せるか馬鹿! 寄生虫だぞ!? 波の乙女の化身と謳われるこの私が! 十八歳のうら若き乙女が!」


 声の限りに怒鳴り散らし、ぜいぜいと肩を揺らす。泣き崩れたアイリーンが「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度もその場に土下座した。


「ほ、本当はずっと知らずにいてほしかったんです。ショックだろうし、生活に支障はないし、仮死状態にさえならなければ脳蟲は出てこないし! でも、でも、何も知らない姫様がグレースに狙われていると思ったら居ても立ってもいられなくてえっ……!」


 ハイランバオスに成り代わったグレース・グレディが王女の肉体を乗っ取る計画を立てたとき、アイリーンはアイリーンなりに説得しようとしたそうだ。多くの信者がハイランバオスを必要としている。祖国を思うなら第二の人生を両国の平和に役立ててほしいと。だが欲深な女狐に彼女の言葉は届かなかったらしい。


「脳蟲には巣を守ろうとする本能が備わっているんです。グレースは特にその傾向が強くって、何がなんでも王国を支配下に置きたい、この手でアレイア海を管理したいと望むみたいで」

「そうか。ハイランバオスに乗り移ったということはお祖母様も私と同類なのだな? ならあの人はいつ脳蟲に寄生されたんだ?」

「若い頃に墓島近くで溺れたことがあると言っていたので、多分そのときに。脳蟲は生体に取りつくことができませんから、宿主になるのはほとんど水死体なんです」

「ではアンバーもその口か」


 頭の整理にはまだ時間がかかりそうだった。現実のすべてを受け入れるのも。

 脳蟲――、脳蟲か――。まさか自分がそんな生き物だったとは……。


「ふ、ふふふ、ははははは」


 突然笑い出したルディアにアイリーンがびくりと後ずさりした。


「うわ、壊れちゃった」

「ひ、姫様! お気を確かに!」


 モモとバジルの十五歳コンビも戸惑いを露わにする。

 お気を確かに? そんなもの無理に決まっているだろう。笑うしかないではないか。こんなぶっ飛んだ真実と向き合わされては。


「脳蟲には巣を守ろうとする本能があるだと? ……くっくっく、面白い! アクアレイアの女王となるにはこれ以上ない資質ではないか! 私に備わった本能とあの老いぼれの本能と、どちらが強いか勝負してやる!」


 時間は待ってくれない。無理矢理だろうがなんだろうがとにかく認めて飲み込むしかない。茫然自失している間に大切なものを奪われて、泣きを見るのはごめんだった。


「つ、強い」

「折れねー姫様だなー」


 感嘆するアルフレッドとレイモンドにふんと息巻く。

 強い? 折れない? 何を守るためにそうあるのだと思っている。


「アイリーン、お祖母様はどこまで脳蟲について知っている? お前くらいに見識は深いのか?」

「は、はい。海難事故の後、ジーアン領に漂着したハイランバオス様をお助けしたのは私でした。自分はグレース・グレディのはずだと名乗るあの人の事情は察せられたので、説明はひと通り。研究資料も見せちゃいましたし……」

「生態以外の具体的な関連事項は? 例えばこの入江の存在だとか、モリスのことは」

「そ、それは秘密にしていました。モリスさんに迷惑はかけられませんから」

「ブルーノの件は?」

「ヒッ! 滅相もありません! 言えるわけないです、実の弟で人体実験したなんて!」

「ということは私が脳蟲ということも知らないのだな?」

「はい、はい、仰る通りですうう」

「――では最後だ。お祖母様は独自に脳蟲の研究を進めていたか? 死刑囚や獣を使って」


 ルディアの問いにアイリーンは激しく首を縦に振った。


「そう、そうなんです! あの人私の研究ノートを盗んでそのままマルゴーに休戦協定を結びにいって……!」


 どうやら話は繋がった。「なるほどな」と呟いたルディアの横でバジルがぽんと拳を打つ。


「ニンフィで熊だの蛇だのコヨーテだのが襲ってきたのは全部ハイランバオスの仕業だったわけですね!?」


 理解の早い弓兵に続き、モモたちも指を突き立てた。


「つまりロバータとハイランバオスが裏で繋がってたんだ!?」

「っつーことはやっぱわざと猛獣けしかけられてたのか、俺ら!」

「そうか、防衛隊がマルゴー公国で不祥事を起こせば姫様や王家を貶められるから……!」

「軍事同盟に軋轢を生じさせる狙いもあっただろうな。お祖母様は私の結婚を取り返しのつかない失策にしたかったんだ。今の治世が終わっても王国に希望はないぞと民衆が思い込むように。しかもさっきの大事故だ。よりにもよって『海への求婚』の直後に大鐘楼崩壊とは……。王は守護精霊に嫌われている説が飛び交うに違いない」


 顔をしかめ、ルディアはマントを翻した。

 もう正午は過ぎているだろう。洞窟に差し込む光は相当まぶしくなっている。


「一旦街へ戻ろう。お父様や街の様子を知りたい」


 ついてきてくれるか、との問いに防衛隊は両極端な反応を返した。


「はーい、了解!」


 返事がいいのは相変わらず物怖じしないモモだけだ。バジルとレイモンドは揃って黙り込んでしまう。

 男たちの動揺はまだ消えていないらしかった。可憐な王女が実は脳に住まう不気味な寄生虫でした、なんて言われたら仕方ないのかもしれないが。


(くそ、堪えているのに傷つくだろうが)


 それでも目上の人間に対する遠慮や配慮はあるようで、二人とも一緒に行きたくないとは言わない。


「あの、えっと……、む、虫の姿はしばらく見なかったことにしていいですかね?」


 バジルはそう苦笑いを浮かべ、


「お、俺もできれば中身は永久にしまっといてほしいかなー」


 とレイモンドも青い顔で目を逸らした。

 これはうっかり街に噂が広まった場合、次期女王の座が危ぶまれそうである。口止めの必要があるなとルディアは銀貨の計算を始めた。


「一度仕えると誓った以上、主君は主君だ。正体がなんであれ関係ない。これからも防衛隊は王国とルディア姫をお守りするぞ」


 と、それまで思案にふけっていたアルフレッドが「いいな?」と隊員たちに念押しする。きっぱりした騎士の態度にルディアは目を丸くした。少なからぬ感心を抱きつつ。


「アルフレッド、ありが……」


 が、紡ぎかけた感謝の言葉はたちまち霧散した。アルフレッドにぷいと顔を背けられて。おい、台詞と行動が噛み合っていないぞ。


「うわっ、アル兄まだ拗ねてるの?」


 面倒臭そうにモモが嘆息する。拗ねているとはどういう意味だとルディアが二人を一瞥すると、モモはおもむろに兄をたしなめ始めた。


「姫様が三ヶ月も身分を明かしてくれなかったのは、モモたちの力じゃ助けにならなかったからでしょ? 騎士として忠誠を誓ったのに頼ってもらえなくて悲しかったのはわかるけど、それをいつまでも変な風に引きずって……」

「ば、馬鹿、違う! ルディア姫は俺たちの主君だが、今は防衛隊のブルーノだろう!? 隊長としてそこを忘れて振る舞うわけには」

「はいはい。姫様に媚びを売るんじゃなくて、しっかり任務に励んでるところ見せたいんだよねー。頼れる騎士だと思われたいんだよねー。でもそういうの、言わなきゃ伝わらないからさあ」

「モモ!」


 逆立つ髪より真っ赤になってアルフレッドが妹を怒鳴りつける。なるほどとようやく合点した。つまり昨日のアルフレッドは、ルディアの暴虐非道というより自分自身の不甲斐なさを責めて落ち込んでいたわけか。


「『一人で突っ走る前に連携する努力をしろ』ではなくて、素直に『俺を信じてくれ』と言えば良かったのに」


 ばつ悪そうにして振り向かない、広い背中に肩をすくめる。失望させたわけではなかったのだなとこっそり安堵した。


「信頼とは実績なしに得られるものではないだろう。そんな風に頼まなくても、いずれ誰より信の置ける男だと思わせてみせるさ」


 笑みは自然に零れ出た。ルディアが何者であれ、この堅物は己の信じる騎士の道を貫くに違いない。どこの誰と入れ替わろうと、どこの誰と結婚しようと。


「私はそう簡単に他人を信用はしないぞ?」

「わかっている。俺だって生半可な気持ちで騎士を志したわけじゃない」


 不思議に穏やかな気分だった。身を挺して庇われたときの頼もしさが、まだどこかに残っていたからだろうか。


「よし、では行こう」

「了解!」


 揃った返事に満足し、ルディアは一歩踏み出した。おそらくは彼ら四人との初めの一歩を。






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