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魔王の器  作者: 月野文人
第四章 大陸大乱編
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 ルキフェルであったものは消え去ったが地獄絵図は続いている。その中心にいるのはクラウディアだ。生き残った神族たちは攻撃対象をクラウディアに絞り、一斉攻撃を仕掛けようとした。それを悟ったクラウディアはルキフェルであったものと一体化して、その攻撃に対応したのだ。

 小柄で童顔、そして華奢な体のままのクラウディア。ルキフェルであったものと一体化して変わったのは背中から生える六枚の黒い羽と、狂気を宿した瞳くらいだ。瞳のほうは一体化する前からそうであったが。

 そんなクラウディアに群がる神族。だが戦いはクラウディアが圧倒している。六枚の羽はそれそのものが意思を持っているかのように動き、神族たちに襲い掛かっている。どれもほぼ一撃。神族はクラウディアの一撃を食らうと砂が崩れるように消滅していった。


「……どうしてあそこまで?」


 神族を圧倒する戦闘力を見せるクラウディア。格は違ったとしても元は同じ神族であったはずが、どうしてここまでの差があるのかカムイは不思議だった。


(あれは物理的な攻撃じゃねえからな。急所とか関係ねえんだよ)


 クラウディアの攻撃は精神攻撃。精神体である神族の体のどこにあたってもダメージは同じ。神族の精神、つまり存在そのものを破壊しているのだ。


「それは何となく分かるが神族の攻撃はどうして効かない?」


 神族側もただ一方的にやられているわけではない。様々な魔法を使ってクラウディアを攻撃している。だがその直撃を、羽で防いでいる形だが、受けてもクラウディアがダメージを受けた様子はない。


(さあな。そこまで俺も詳しくねえ。でもよ。壊れちまっているものをさらに壊したって壊れていることに変わりねえだろ?)


 クラウディアの精神はすでに崩壊している。これ以上ないほどに。


「……神族にとって天敵だな」


 クラウディアの攻撃は触れるだけで消滅。自分の攻撃は全く通用しない。これでは神族は戦いようがない。


(ああ……俺が求めていた力だ)


「えっ?」


(神族を殺すにはああいう力が必要なんだな……俺には無理だったな。せめてこんな姿になる前であれば……って言っても実際に手に入ってねえか。結構、恨みは強かったつもりだったのによ)


 クラウディアの力は世の中への強い恨み。どす黒い感情が触れる神族の心を犯し、その存在を否定させている。だが魔剣カムイはその力を持てなかった。同じようにこの世界を恨んでいたはずなのに。


「神族を恨んでいるのか?」


(この世界を恨んでいた。だがその気持ちも今はかなり薄れちまったな)


 この世界にも信じられる存在があった。信じても良いという思いが芽生えた。そうなるともう恨みは募らない。恨みが神族を殺す力になるとすれば、それがこれ以上強まることはない。


「……それでクラウディアに勝てるのか?」


 力はクラウディアのほうが上。神族と同じように魔剣カムイも消滅してしまう可能性がある。


(……勝てない)


「そうか……」


 クラウディアを止める手段はない。そう思って落ち込むカムイだが。


(勝つ必要はない。勝とうと思えば負けだ)


「……どういう意味だ?」


(お前には分からねえよ。とにかくお前は俺を彼女に突き立てろ。普通の剣での戦いだと思ってやればいい)


「……分かった。それしかないならやるしかない」


 自分よりもクラウディアのほうが魔剣カムイに近い存在なのかもしれない。そんな思いがカムイの頭によぎった。出会ったばかりの頃であれば決して頭に浮かぶことなどない思いだ。

 時が過ぎ、様々な巡り会いがそれぞれの立場を、気持ちを変えていった。カムイはついこの間の様に感じていた学院時代の思い出が、一気に遠ざかった気がした。


◇◇◇


 周囲に群がっていた人々も今は消え去り、クラウディアは戦場に一人立っている。神族からの攻撃もかなり弱まった。戦える神族はもう数えるほどしかいないのだ。そのわずかな神族たちも戦いを止め、クラウディアの攻撃の届かないであろう高さまで浮かび上がってただ見下ろしているだけ。本当はこのまま去ってしまいたいのだが、ミハエルの指示がないので仕方なく留まっているだけだ。もっともそれも長いことではない。依り代を持たない神族では長く地の世界にはいられないのだ。


「……やっと来たね」


 無表情だったクラウディアの顔に笑みが浮かぶ。見る者に恐怖しか与えない不気味な笑みだ。


「もしかして待たせていたか?」


 カムイもそう。笑みを見ても緊張はますます高まるばかり。それでも何とか表面上は落ち着いた振りをみせている。


「死にたいのに誰も私を殺してくれないから。やっぱりカムイくんじゃなきゃ駄目かなって思って」


「そうか……期待に応えてやりたいんだけど大人しく死んでくれるか?」


 カムイは少し離れたところにディーフリートが倒れていることに気が付いた。生きているか死んでいるかは分からないがクラウディアを殺そうとしてそうなったのは間違いないだろうと思う。死にたいと言いながら、クラウディアはディーフリートをそんな目に遭わせたのだ。


「だから言っているよ。死にたいのに死ねないって」


 クラウディア本人には攻撃を躱す意思はないのだ。だがどれだけ酷い怪我を負っても、すぐに修復されてしまう。


「そうだとしても、せめて攻撃は止めてくれると助かるんだけどな」


 物理的な傷を負わせて倒そうというのではない。修復能力は問題にはならない。問題は剣が届く位置まで近づけるかということだ。


「……そうしてあげたいけど、この羽が言うことを聞かないの」


「その羽、勝手に動くのか?」


「そうだよ。勝手に周りの人を殺すの。きっと止まるのは殺す人が一人もいなくなったらだね」


 何が可笑しいのかクスクスと笑い出すクラウディア。

 クラウディアの攻撃対象は神族だけでなくこの世界にいる全ての人々。この世界の全ての人々を滅ぼすまで動き続けるのだ。それが分かったカムイには何も可笑しいことはない。


「……クラウディア。それだと神族と何も変わらない」


「仕方ないよ。私は神族に心を支配されていたのだから。この力だって神族のものだからね。結局、私は何でもないの。私はただの器。中身は空っぽなの」


 クラウディアの表情から笑みが消える。笑みだけではない。全ての感情の色が消えた。


「お前はどうしたいんだ? クラウディア。一人の女性、いや、人族、いや、存在としてお前はどうしたい?」


 だがカムイはクラウディアの無表情に悲しみを感じた。気のせいだという思いもある。だがそれでもそれを確かめたいと思った。


「私……死にたい。もう生きたくない。もう……生きているのがつらいの」


「……生きて何かしたいことはないのか?」


「ないよ。だってこの世界の誰も私に生きていて欲しいなんて思ってないから。唯一、そう思ってくれたかも知れない人は……死んじゃったから」


 クラウディアの無表情な顔に一筋の涙が流れる。悲しみは事実だった。だがカムイにはその悲しみを癒やす術はない。それどころか何もしてやれないのだ。


「……分かった。じゃあ話は終わりだ」


 クラウディアの為でなく、この地にいる生きている人々の為にカムイは行動するしかない。


「話だけじゃないよ。カムイくんと私の関係もこれで終わり」


「……そうだな」


 二人の間にどのような関係があったのか。カムイにとっては敵対関係でしかないが、クラウディアにとっては違うのかもしれない。それがどのようなものかカムイには分からない。分かりたくない。それを知っても、やはり何も出来ないのだから。

 クラウディアに向かって歩き出すカムイ。そのカムイの動きにすぐにクラウディアの背中の羽が反応した。動きというより殺気に反応したのかもしれないとカムイは思う。どうでも良いことだ。どちらであろうと羽はクラウディアが殺されるのを許す気はないのだから。

 カムイに向かって伸びてくる二枚の羽。素早くはあるが躱せないほどではない。一瞬迷ったカムイだが剣を合わせるのではなく、体を動かすことでそれを避けた。


(……正解。あれには触れたくねえな)


 カムイの選択が正しかったことを魔剣が教えてくれた。


「それ早く言えよ。どうしようか悩んだだろ」


(近づかなけりゃ分からねえこともある)


「まさか本体に近づいても駄目だなんて言うなよ」


 羽は駄目ということであれば良い。だがクラウディアの全てが駄目となれば打つ手がなくなってしまう。


(それだってやってみなけりゃあ分からねえ)


「……それはまた……頼りない答えをありがとう」


(嫌みを言うな。世の中に絶対なんてねえんだよ)


「分かってる!」


 無駄話をしている暇はない。カムイを敵として認識した羽はカムイが動かなくても攻撃をしてきた。それを避けて前に出るカムイ。一気にクラウディアとの間合いを詰めようとしたが、さすがにそれは甘かった。

 背中の羽は六枚。二枚を避けてもすぐに別の二枚が襲い掛かってくる。さらに残りの二枚はクラウディアの体を覆うように広がっていく。


「冗談! それじゃあ殺せないだろ!?」


 クラウディアに文句を言ってみても事態は変わらない。クラウディアの体を完全に覆われては剣を届かせることが出来なくなる。


「ちっ。これは厳しいな」


 守るだけではない。四枚の羽はもの凄い勢いでカムイに襲い掛かってくる。守る二枚の羽の隙を見つけられないカムイはただそれを避け続けるしかない。これでは永遠にクラウディアを殺すことなど不可能だ。それどころかいつまで避け続けられるかも怪しいものだ。


「泣き言を言ってるんじゃないよ!」


 背後から聞こえてきたマリーの声。それとほぼ同時に炎がカムイの横を通り過ぎていく。炎をクラウディアの体を包み込み爆発を起こす。

 炎が消え去った後には、無傷のクラウディアの姿があった。


「……まあ、無理だと思ってたけどね」


 クラウディアの力が元はルキフェルのそれであるなら魔法が効くはずがない。


「それでも戦い続けるしかありません! 倒せると信じて!」


 ヒルデガンドが檄を飛ばす。ヒルデガンドの言うとおり、諦めるわけにはいかないのだ。


「ヒルダ……死ぬなよ」


「……その約束は出来ません。クラウディアを倒すことが最優先ですから」


「そうか……」


 ヒルデガンドを死なせるわけにはいかない。そうかといって下がれとも言えない。それはヒルデガンドを侮辱することになる。自分の背中を任せる相手はヒルデガンドと約束しているのだから。

 大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせるカムイ。そこから一足飛びでクラウディアとの間合いを一気に詰めていく。

 襲い掛かる黒い羽。左側からきたそれをカムイは持っている剣で打ち払う。魔剣ではない。普通の剣だ。

 右側からきた羽はヒルデガンドの剣が防いだ。だがさらに二枚の羽が襲い掛かってきた。


「なっ!?」


 カムイではなくヒルデガンドに向かって。慌ててヒルデガンドを突き飛ばすことでそれを避けさせるカムイ。だが羽の攻撃はそれで終わりではない。六枚の羽が一斉にヒルデガンドに襲い掛かった。


「させるかっ!」


 地面に倒れているヒルデガンドの前に立ち塞がって剣を振るうカムイ。それと同時にマリーの魔法がクラウディアを襲う。倒せないまでも攻撃してくる羽の数を減らす為だ。それはまんまと嵌まり、二枚の羽は守りに戻った。


「カムイ! もう平気です!」


 立ち上がったヒルデガンドがカムイの声を掛ける。


「……分かった」


 ヒルデガンドが立ち上がったからではなくクラウディアの攻撃が止んだことでカムイは一息つくことが出来た。


「カムイくんは優しいね。そんなにその女が大切なの?」


 また不気味な笑みを浮かべたクラウディアが話しかけてきた。


「……そうだと言ったら?」


 クラウディアが何を求めているのかカムイには分からない。曖昧な答えを返してみる。


「そんな女のどこが良いの? 一度は人の物になった女だよね」


「それがどうした? 俺はそんなことは全く気にしていない」


 ヒルデガンドに対する敵意。クラウディアにそれがあるのは分かった。


「じゃあ、私のことも気にしない?」


「……どういう意味だ?」


「私も人の物になったわ。それでもカムイくんは私のことを許してくれる?」


「……クラウディア。それは俺が許すようなことじゃない」


 クラウディアが誰と結婚していようとそれはカムイには関係ないことだ。クラウディアの意図が全くカムイには分からない。かつてと同じ。元皇都の城でクラウディアと二人きりで会った時と同じで話がかみ合わない。


「そうだね。カムイくんにとって私は大切な存在じゃないものね……ねえ、カムイくん」


「何だ?」


「私とその女の何が違うのかな? その女は何もかもを手に入れて、私は何もかもを失った。私とその女の何が違うの!? 違わない! 違わないよね!? ただ……ただ私は……」


「…………」


 ヒルデガンドとクラウディアの何が違うと言われてもカムイには答えようがない。違いは沢山ある。善悪を比べればヒルデガンドのほうが明らかに善だ。

 だがクラウディアが聞いているのはそういうことではない。ちょっとしたズレ。それが二人の運命を大きく変えてしまった。そういうことなのだ。


「……殺してやる。その女を殺せばきっとカムイくんにも私の気持ちが分かるよ! 私とカムイくんは同じになれる! だから死ね! お前は邪魔だ!」


 クラウディアの背中の羽がまたヒルデガンドに襲い掛かる。さきほどを遙かに超える激しさで。クラウディアの感情に反応しているかのように。


「死ね! 死ね! お前なんて死んでしまえ!」


 襲い掛かる羽を必死に防ぐカムイとヒルデガンド。マリーも援護の魔法を放つがクラウディアはもうそれに反応しようとしない。魔法の直撃を受けて体が焼けてもお構いなしで攻撃を続けている。どうせすぐにそれは治るのだ。


「ヒルダ!」


 防ぎきれなかった羽がヒルデガンドの体を貫く。


「……だ、大丈夫。致命傷ではないわ」


「……もう限界だ」


 クラウディアの攻撃はまだ続く。次は致命傷になるかもしれない。次でなくてもクラウディアを倒せなければいつかはヒルデガンドは死ぬことになる。


(一か八か、やってみるか)


 クラウディアの体まで剣を届かせることが出来ないのであれば羽を狙うしかない。勝算が少なくても。


「次でいく」


「だ、駄目よ」


 覚悟決めたカムイに向かってヒルデガンドが制止の声をかける。


「ヒルダ?」


「何をするつもりか分からないけど、私の為に勝算のない戦いはしないで。もう私を庇う必要もないわ。クラウディアを倒すことに全力を尽くして」


 ヒルデガンドの言うとおりだ。ヒルデガンドを守るだけではクラウディアを倒すことなど出来はしない。ヒルデガンドを囮にするくらいのつもりで戦わなくてはならない。


「しかし……」


「カムイ! 私を特別扱いしないで! 私に必要なのは『愛している』の言葉ではないの! ただ一言、『死ね』と言ってくれればそれで良いのよ!」


「ヒルダ……」


 屍を乗り越えてでも先に進む。アルト、ルッツ、そしてダークとの誓いだ。マリアとイグナーツも同じ。お互いに相手の死を恐れることなく無駄にすることなく夢の実現の為に共に進もうと誓った。ヒルデガンドが望むのは彼らと同じ立場。今回の戦いに臨んでそうなれたつもりだった。それがヒルデガンド、ヒルデガンドだけでなく仲間たちの喜びだったのだ。


「……茶番は止めて。私はそんなの見たくないの」


「クラウディア……貴様……」


「もう良いよ。カムイくんはやっぱり私とは違う。私たちが別々の道を進んだのは当然だよ」


「俺だけじゃない。お前もそうなることを望んだ」


 確かにカムイはクラウディアを拒否し続けた。だがクラウディアがカムイと共に歩むことを望んだかとなるとそうではない。クラウディアは常にカムイに対する不信感を持ち続けていた。どちらにも相手を受け入れるつもりはなかったのだ。


「……そうだね。今はそれが分かる……だからもう終わりにするね。私が全てを終わらせるの」


 クラウディアの背中の羽が一回りも二回りも大きくなっていく。それは太陽の光を遮り、カムイとヒルデガンドをその影の中に収めていく。

 魔剣を握りしめるカムイ。正直通用するとは思えないが、残された手はこれしかないのだ。


「カムイくん。サヨナ……」


「クラウディア様!」


 クラウディアの声を遮る叫び。周囲を圧するクラウディアの巨大な羽を恐れることなく、その影の中に騎馬が飛び込んでくる。その騎馬の上から降りるというより転がり落ちた騎士。


「……テレーザ」


 騎士の姿を見てクラウディアが呟きを漏らす。


「ク、クラウディア様。お、お願いです。もう止めてください」


「……う、裏切り者の言うことなんて聞かないわ」


「そ、そうです。私は、クラウディア様を……裏切りました。だ、だから……恨みは私に。私だけを殺して下さい!」


 苦しそうにこれを告げるテレーザ。神族の魔法で受けた傷は癒えていない。治療を受けることなくここまでやってきたのだ。


「……そんなの駄目だよ」


「お、お願い、です。殺すのは……わ、私だけ……」


「そんなの駄目だよ! テレーザは私の為に死ぬの! 他の人の為に死ぬなんて駄目なの!」


「ク、クラウディア様……で、では、私は、あ、貴女の為に、死にましょう。小さい頃からずっと……そのつもりで生きてきたのですから……」


「テレーザ……」


 クラウディアが信じられる唯一と言って良い存在。それがテレーザだった。そのテレーザが自分を裏切ったと知った時、クラウディアは自分の心から全ての光が失われたような気がした。だがクラウディアも分かっている。光を消したのは自分自身だったのだと。テレーザの想いに応えることなく逆に踏みにじるような真似をしてしまったのだと。

 テレーザだけではない。自分はオスカーの想いも顧みることをしなかった。自ら光を閉ざしてしまったのだ。


「えっ……?」


 背後に感じた気配。オスカーの熱をクラウディアは感じた気がした。だがそんなはずはない。オスカーはすでに死んでいるのだ。


「……すまない。結局、俺はお前の期待に一度も応えることをしなかった」


 クラウディアには見えない。自分の背中の羽がカムイの体を貫いている様子が。見えているのは自分の胸から突き出た漆黒の、血のような赤い紋様が入った剣先だけだ。


「……カムイくん。やっぱり……貴方は……最低な人だね。私は……貴方のことが……大嫌い。死んでも……恨み続けて……」


「ああ。俺を恨め。それでお前の気が済むのなら」


 クラウディアの体に突き立てた魔剣。それをカムイはさらに深く押し込む。


「あっ……」 


 クラウディアの体に吸い込まれていく魔剣カムイ。クラウディアの体の中で何が起きているのかカムイには分からない。ただクラウディアは、背中に生えた羽も動きを止め、ゆっくりと地面に倒れていった。

 それに続いてカムイの体も仰向けに倒れていく。


「……カムイ? カムイッ!!」


 ヒルデガンドの叫び声。それが動く人のほとんどいなくなった戦場に響き渡った。

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