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 今日は、蓮様がデートと張り切ってた日だ。

 でも実際はデートではなく、ただの本格的な御茶会になり、僕は、現在お母様お父様の元に戻され、飛鳥井夫婦、烏ケ森夫婦やその子供たちと一緒に行動してる。

 そして、驚いたことが一つあった。


「始めまして、飛鳥井 (リン)です」


 そう、蓮様は双子だった……。本来なら、蓮様だけ白桜の許嫁だったのが、昨日の連様の横暴により、急遽双子の弟、凛様も加わることになった。ゲームでは、蓮様の兄弟は姉だけだ。

 ゲームの世界だ、ゲームの世界だと思っていたけど、全然違う設定がポンポン飛び出してきて、正直驚いてる。

 しかも、烏ケ森夫人と飛鳥井夫人も双子ときた。目玉が飛び出ることは、このことだ。


「俺も、同じ学校へ通うことになったんです。よろしくお願いします!!」


 元気よく笑う、凛様。どうやら、飛鳥井家と烏ケ森家はお受験ではなく『裏道』で入学したようだ。

 そういえば、蓮様の行動だったら、確実にお受験では通らなかったしね、納得だ。


「そうなんだ。楽しみにしてるよ」

「はいっ!!」


 子供らしく、無邪気に笑う凛様。こっちを、最初から許嫁にすればよかったのに。

 まぁ、そんな二人の父は、ヤがつく自由業よいうより、高級クラブのホストと言ったほうがしっくりくる……。

 しかし、行動はヤクザっぽい部分が非常に多い。良くも悪くも、昔良き忠義に固いヤクザだ。絶滅危惧種なんだってね?


「いやーっ、桜の姫君。昨日は、うちの馬鹿息子が失礼なことをしたな」

「いえ、ご心配なく」


 危なかったのは、君ら一族のほうだったしね。


「姫香ちゃんのことが気に入ったらしいのね、しょうが無いわよ」


 そうそう、実のところこの飛鳥井父がクセモノだ。

 ただのエセホストではなく、うちの両親を手懐けるのが非常に上手かった。

 だって、朝出会った時には、もう既に昨日の恐怖は無かったかのように、うちの両親は蓮様とご挨拶をしてた。

 その横には、このエセホストが居たわけだ。

 やはり、ホストにはトーク術が必要。それだけのトーク術があるんだろう。

 これはっ……、是非見習いたいッ……。お師匠様、弟子入りさせてください!!


「聖羅学園はなー、俺が頑張って買い取ったんだ。俺が理事長だぞー。だから、何か合ったら、すぐ俺に言いな?」

「はい、ありがとうございます」


 あ、あれー? そういう理由があったのか。全然知らなかった。

 師匠が経営する学校だったなんて……、びっくりしたな。

 っていうより、買い取ったから、飛鳥井家や烏ケ森家はお金持ちグループに入ろうとしているわけだ。

 横の繋がりも欲しいんだろう。

 それで、白羽の矢が立ったのが、うちの家。

 いやー、お師匠。よく考えてますねー。素晴らしい、実に素晴らしい。


「うちの蓮と凛を、よろしくなー?」

「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」


 師匠、トーク術の伝授、よろしくお願いします!! 一生ついてく所存です!


「全員挨拶は終わったことだし、水族館行きましょう?」

「わぁーっ、水族館だー!!」

「俺、イルカ、イルカ見たいっ!!」


 子供のように純粋にはしゃぐ凛様と悠斗様。

 なのに、子供の皮を被った狼は、すまし顔で僕の横から離れない。

 さっきからずっと、僕の横をキープし続けるんだ、この狼は。


「蓮様、君も混ざらなくていいのかい?」

「あん? 凛と悠斗が仲いいから、俺には関係ない」


 あぁ、拗ねてるのね……。プイッとそっぽを向くその感じ、やはり子供らしさが伺える。まぁ、六歳児だし、年齢相応の行動だろう。


 ぎゅーっと僕の手を掴んだまま離さないし、一緒に見て回る友達が居ないのか。

 まぁ、その性格だ。仕方ない面もあるだろう。


「それにしても、今まで凛様は何処に住んでたのかい? 昨日、家に居なかったような」

「――あー、アイツは今まで資格が無かったから、別な親戚の家で暮らしてた」

「へぇー、そうなんだね。あまり親しくないのかい?」

「ほとんど、会う機会はない。悠斗と近い家だったらしく、悠斗とは毎日遊んでたらしい」


 そっかぁ。ゲームの設定的に、凛様と悠斗様のほうが近いね。

 そうなると、今まで蓮様は一人ぼっちだったわけだ。

 だから、あんなに必死になったのか。自分にも、凛様の悠斗様、という感じの友人が欲しかったんだね。

 生活も、後継者ということで何不自由なく我儘に育っただろう。

 色々、嫌な事件が積み重なった結果が、昨日の騒ぎになったわけか……。なんか、色々子育てについて考えさせられるな。


「色々複雑な家庭なんだねー。うちは、金持ちだけが取り柄のごく普通な家庭だからなぁ」

「一人っ子っていうのが強いんだろう?」

「それはない。僕が双子だっとしても、別な親戚が育てることもないだろう。――まぁ、許嫁も僕じゃなく、別な子供が推薦されるのはありうるな」


 まぁ、残念ながらそういう存在は居ない。うちの両親は、凄く仲がいいからね。今でも、毎晩一緒に眠っているほどだ。近々、弟か妹が生まれる予定だし、これから先もラブラブなんだろう。

 少々、某ハーレークイーン小説を呼んでるような会話に、呆れてしまうけど。


「――そうか、いかにも愛されてる子供だからな」

「まぁねー、そこは否定しないよ」


 うちの家は、親馬鹿ですから。


 僕らは、僕の両親と一緒に歩きつつ、先に行った飛鳥井家、烏ケ森家の後を追う。

 所々寂しげな蓮様の表情を見る限り、昨日の夜は、彼が暴走する理由があると見た。

 それが、何なのか……、僕にははっきりわからない。

 でも、両親の優しい眼差しを見る限り、両親はそのことを知ってるんだろう。


「うわぁーっ、イルカだー、イルカー!!」

「パパー、イルカ乗りたい!!」

「アハハー、凛。それは危ないから、駄目だぞー?」

「もう、凛ってば……!」

「うふふ、可愛いわね……!」


 飛鳥井家、烏ケ森家の家族団欒風景には、何処にも飛鳥井 蓮という男の入る隙は無かった。蓮様が僕の手を強く握り、無表情のまま、ただじっとその光景を眺めていた……。

 僕の両親は、何も言わずに連様の頭を撫でる。

 それは、まるで君の居場所はここだよ、と知らせるようで……。

 僕も、連様の手を握る力を強める。僕の、存在を知らせるように。


 その日、先に売店に行った僕らは、お揃いのペンギンの人形を買った。イルカにすれば、凛様や悠斗様と被るだろう。そう、お父様が言ったから。

こうして、ヤンデレは育っていく。

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