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 飛鳥井家のお父様は、未だ帰られない。

 おかげさまで、僕は連様と二人っきりになった。非常に嬉しくない事態だ。早く、帰ってきてくれ。


「とても大事そうに持ってるな?」

「あ、あぁ。従兄弟のお姉様とその婚約者がプレゼントしてくださった物だ」

「ほぉ、仲がいいんだな」

「あぁ、実の姉のような存在だからね」


 まだ、クマをもふもふしてるから気は紛れる。

 でも、こいつと二人っきりだなんて、あまりにも辛いぞ。

 何を話せばいいかわからないしね。あー、辛い。家に帰りたい。

 そして、お母様やお父様と一緒にテレビを見るんだ。


「――そうだ、明日デートに行こう。お前のために、服を準備したんだ」

「へぇ、それは嬉しいね。でも、入寮日はいいのか?」

「そんなの、執事たちがやるから、俺らがすることはないさ」


 くっそ、コイツ、ハメやがったな!? なぁにが、時間がないですよ、だ。


「それなら、お父様とお母様の顔を見に行きたい。暫く会えないんだから、いいだろう?」

「――はぁ? 明日は、デートだ。変更はしないぞ」


 あーあ、連様の機嫌が一気に悪くなった。どうして、こいつはこうも短期なんだ。


 それにしても、クマをもふもふしているせいか、ちょっと眠いな……。クマの匂いも落ち着くし、このまま寝てしまおうか……?


「よー、蓮!」

「――げ、悠斗……」

「何だよー、そんな顔するなって! 今夜、お前の両親が帰って来ないから、俺の両親が心配して来てくれたんだー。ありがたく思えよー!」

「――チッ。余計なことを……」

「あらー、蓮くん。ご挨拶はー?」

「――こんばんわ、烏ケ森夫妻……」


 おや、これはこれは、可愛らしい悠斗様のほうだね。僕が居たら、それこそ邪魔になるなぁ。今日は、これで帰らせてもらおうか……?


「こんばんわ、烏ケ森夫人。はじめまして、烏ケ森様。どうも、うちの父と母がお世話になってます」

「あら、可愛いクマさんだと思ったら、白桜さんとこの……?」

「いやぁ、クマが一人で座ってるものだとばかりに……」

「えっ、えぇっ!?」


 ほーら、悠斗様が驚いてる。今夜は、仲良しの蓮様と一緒に楽しく過ごす予定だったのにね。ごめんね、邪魔者な僕は退散させてもらうよ。

 いや、むしろ君が来てくれてありがたいな。


「く、クマ……。か、母さんっ……!?」


 あれー、クマが一人で座ってるみたいで、怖いんだろうか?

 いや、実に申し訳ない。でも、僕にはこの大きさが丁度いいんだ。


「あらあら……、しょうが無いでしょう? 今知ったのだから、プレゼントなんて、用意してないわよ」

「仕方がないよ、悠斗。蓮くんは、予め用意してあったんだろうね」


 いや、このクマは蓮様のプレゼントじゃないよ。全く、変な勘違いをするものだね。


「いえ、これは、私の従兄弟のお姉様とその婚約者がプレゼントしてくださったものです」

「あら、そうだったの? よかったわね、悠斗」

「あぁ、プレゼント……。姫香は、俺の許嫁ですから。もちろん、彼女へのプレゼントは用意してますよ?」


 服だっけ? まだ会って間もないんだから、こういう場合消えるものが一番だと言うのに。

 何故、服を選ぶかね。本当に、君は帝王の名に相応しい男だよ。ゴーイングマイウェイって感じだなぁ。


「え、えぇっ!? 母さんっ!!」

「落ち着いて、悠斗。まだ正式に決まったわけじゃないから。3人で会った時点で、貴方も許嫁に含まれてるのよ」

「――へー。それは、初耳ですねぇ……」


 蓮様、もう少し君は感情を隠すことを覚えたほうがいい。

 その、不機嫌オーラどうにかならないのかな?


「実に申し訳ないことをしたね。白桜家は、華族の中で、未だにその実力を誇ってる金持ちの中でも指折りの金持ちさ。そんな令嬢には、許嫁の一人や二人居て可笑しくないんだ」

「そうなのよ。悪いけど、貴方の家が本家だからって、こちらも形振り構ってられないの」


 ということは、烏ケ森家と飛鳥井家は親戚同士!? 烏ケ森が分家で、飛鳥井が本家。

 全く、君ラバではそんな設定なかったのに。似てるようで、全く違う世界ってことか。

 どちらにせよ、この二人は危ない。自衛という意味も含め、王子様コースは外せないね。

 だって、お父様とお母様をあんな目に合わせた人物と親戚だなんて、御免こうむるよ。


「よ、よかったぁ。え、えと……。あ、明日、ど、どっか遊びに行かない……? 俺ね、水族館行きたいの」


 いやぁ、実に六歳児らしい反応。帝王様が、あまりにもその実力を発揮するから、少しだけ自分の年齢を忘れかけていたよ。


「はぁ? 明日、姫香は俺とデートだ」

「本当に、君は人のスケジュールを勝手に組み立てていくのが好きだね。入寮のことと言い、少々やり過ぎじゃないのか?」

「ごめんね、姫香ちゃん。コイツ、兄貴に似て、少々癖が抜けない奴なんだ」


 ってことは、足を洗っても元々の仕事病が抜けないということか。

 実に、恐ろしいね。


「蓮くん、明日お出かけするのはいいけど、白桜夫妻も招待するわよ?」

「ま、まぁ。それくらいなら、きちんと手配してますよ……」


 おぉっと、意外と烏ケ森夫妻には抵抗できないみたいだねぇ。

 しかも、お二方は常識人ときた。ありがたいな。


「後、このことは姉さんにも報告するわ」

「げっ……」

「何がげっ、よ。当たり前じゃない? 後、明日私達も行くからね。ったく、馬鹿な貴方のフォローをしなくちゃいけないのよっ!!」

「そうだぞ。姉貴にも言われたろ? 白桜のお嬢様と俺らじゃ、住む世界が違うんだ。俺らのルールでやっていけば、そのうち厄介なことになる。だから、今のうちに慣れることも含めて、白桜の許嫁になるんだ」

「そうよー、姫香ちゃんのパパを見習いなさいっ!!」


 どうやら、金持ちのルールを学ぶ一貫として、お付き合いを始めたらしい。

 それなら、あんな態度をとっても仕方ないのかな? とも思ったりね。

 でもさ、子供なのにあの迫力はどうかねぇ。


「わ、わかった……。ひ、姫香。さっきはごめん……」

「貸し一つね」


 まぁ、こうして無事穏便に話はすすんだ。

 もちろん、このまま飛鳥井家に泊まったけど、烏ケ森夫人がうちの両親に謝罪したことで、うちの両親が提携を切ろうとした行動も止まったんだとか。

 後一歩遅かったら、飛鳥井家と烏ケ森家は元の生活に逆戻りだったわけだ。チッ、惜しかったな。

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