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 僕は、お婆様の見舞いを終えた後、従兄弟の家に来た。


「天音ちゃん、今日は居るかしら?」

「いい子なんだが、お友達と遊んでることが多いからね」

「そうね。義姉さんもガミガミ怒っちゃうから、家に居づらいって言ってたわ……」

「あぁ、姉さんの悪い癖だ」


 そう、ここは黒ギャルお嬢様天音ちゃんの家だ。モットーは、NOダイエットYES運動。Eカップの巨乳さんなのに、運動のおかげでボンキュッボンな体型を維持してる自称モテ子さん。

 でも、運動音痴だ。天音ちゃん曰く、持続が大切とのこと。


「こんにちわー」

「あらー、来てくれたのー?」


 中から出来てきたのは、ほっそりとしたモデル体型の女性だ。

 これが、天音ちゃんのお母さん。僕の、叔母様……、じゃなくて雪お姉様。


「こんにちは、雪お姉様。シャンプー変えました? 髪の艶がよくなってますね」

「あらー、わかるー? 姫香ちゃん娘に欲しいわぁ~」

「ふふっ、ありがとうございます」


 実を言うと、つい最近天音ちゃんが家出してた。そのせいで、雪お姉様は老化が進み、一時期心身共にボロボロの状態になっていた。

 この様子を見れば、天音ちゃんが帰ってきたんだろう。


「天音も家に居るのよー? 会いたがってたの。さ、上がって!!」

「それは嬉しいです。お邪魔しますね?」


 にこり、と笑って僕は玄関に立つ。

 そして、いつものようにお父様とお母様が玄関に入りやすいよう、整理整頓を始める。

 実は、雪お姉様といい天音ちゃんといい、片付けができない人達だ。

 細かい所は、お手伝いさんがするものの、お手伝いさんも天音ちゃんの家だけ受け持ってるわけじゃない。

 なので、細かい部分は、僕が来た時来た時で片付けていくんだ。

 しかし、天音ちゃんが結婚してもこのままと考えたら、見た目より内面を頑張ってほしいと切に願ってしまう。天音ちゃんの彼氏のショーくんも、片付けできなさそうだからなぁ。結婚して、生活できるんだろうか?


「いやぁ、毎回思うんだが、天音ちゃんをうちの家で再教育すべきだと考えてしまうよ……」

「そうね……、猫ちゃんも居るのに、綺麗なお家じゃないって可哀想よ……」


 ぱっと廊下を見たら、猫砂が散らばってる。

 僕は、いつもの場所から箒を取り出し、手際よく片付けていく。前世で綺麗好きだから、その癖は今でも残っているわけでして……。


「いつも偉いわね、姫香。先行っとくわね?」

「はい、お父様、お母様」


 天音ちゃん、見た目は凄く可愛いんだけどなぁ。ボンキュッボンだし、身長も高いから、下手なモデルさんよりモテる。

 むしろ、モデルさんというのは細すぎるため、男ウケはよろしくない。

 だから、天音ちゃんはモテるためにも日頃の美容関連は疎かにしないんだ。

 これは、雪お姉様受け売りなのさ。


 まぁ、天音ちゃん。お願いだから、その意欲を家事全般に回して欲しい。

 後、雪お姉様もね。

 洗濯物が溜まりっぱなしだよ……。


「あーっ、姫ー!! マジ会いたかったんだけど~?」

「やぁ、天音ちゃん」

「あーっ、洗濯物やってくれたの? マジ助かる。そうだ、うちの子なんない? 歓迎するけど?」

「お断りしとくよ。お父様とお母様が悲しむから」


 天音ちゃん、お願いだから、そういうことは家事全般ができるようになってから言って!!! 僕がこの家に住むと、僕過労死するから!!


「あー、やっとできた子供だしねー。あ、そだ。今からショーくん来るの。ゲーセン行こ?」

「お父様とお母様に聞かないと……」

「ダイジョーブ、ダイジョーブ。姫が今日来るってショーちゃんに言ったら、張り切って人形取るって言ってたし」

「あはは、それなら、ちょこっと行っちゃおうかな?」


 ショーくんとは、付き合って2年。ショーくんのお父さんがヤがつく自由業をしているため、なかなか表立って会えないんだ。

 しかも、お金持ちは我が家だけ。天音ちゃん家族やさっき会ったお婆様は一般人だ。

 実を言うと、グランマ……、アメリカのお婆様がお金持ち。

 

 だから、ショーくん一家を自由にさせてあげるお金がない。

 それを知ってるからこそ、天音ちゃんは雪お姉様にショーくんを会わせないんだ。雪お姉様が、色々気を使うことを知ってるから……。


「ショーくんが迎え来るって」

「すぐ来るの?」

「うん。近くで、なんか用事あったみたい」

「へーっ、そうなんだ」


 天音ちゃんが、僕を抱っこしてくれる。

 なんだか、本当のお姉ちゃんみたいで落ち着くなぁ。

 天音ちゃんが一般人だから、過ごしやすいのかも。


「外で待ってよ」

「うん」


 天音ちゃんが、僕を抱きしめながら頬ずりしてくる。くすぐったくて、つい笑ってしまう。

 暖かいなぁ、天音ちゃん……。


 そんなことをしてると、遠くから車の音が聞こえてくる。ショーくん?


「ショーくんっ!!」


 天音ちゃん、いつも以上に目がキラキラしてる! 可愛いなぁ。

 恋してる女の子って感じだー。


「よー、姫、天音!! 今日は、姫の入学祝いだからなー。好きな人形とってやるよ!」


 ニカッと元気に笑ったのは、人懐っこい顔つきのショーくん。

 ショーくんも黒く肌を焼いてるんだ。ヤンキーって言うのかな? よくわかんないね。


「ショーくん、ありがとっ!!」

「いいってことよ~。さ、車乗れ!!」

「時間マジないから、急いでね」

「事故らない程度でいくぜー」

「ショーくん、助かるー。マジ大好き!!」


 後ろに乗り込んだ天音ちゃんが、後ろからショーくんを抱きしめる。この二人、いつもこんな調子なの。可愛い二人だなぁ、もう。


「何聴く?」

「嵐がいいー」

「お前好きだなぁ?」

「ショーくんの次にね!」

「知ってるっての!!」


 ケラケラとショーくんと天音ちゃんが笑う。僕も釣られて笑う。この二人と一緒に居る時は、なんだか作ってた王子様のメッキが剥がれてく。

 でも、それでいい気がした。天音ちゃんとショーくんと一緒に居ると、ずっと笑わせてくれるから、この時間を大切にしたい。


「天音ちゃーん、お菓子ー!」

「あ、ヤバ。忘れてた!!」


 天音ちゃんは、ポケットからチュッパチャップスを出してくれた。

 これは、僕が一番好きなラムネ味っ!


「じゃーん。これね、ショーくんが誕生日にくれたやつ! でかい奴そのままくれたの!」

「ショーくん太っ腹ー!」

「だろー? 姫が成人したら、同じのやるよ!」

「ショーくん、約束ね?」

「おう、任せろ!!」


 ショーくんの元気そうな笑い声が聞こえてくる。天音ちゃんも、飴を食べながらキラキラとした笑顔を振りまいてる。

 将来僕も、こんなに笑い合える恋人が欲しいな、なんてね?


「ウチの近場に、ゲーセン出来てさ。そこに、マジ可愛いクマ置いてんの」

「そうそう、でっかいやつな! でっかすぎて、姫持てないかもな?」


 あーっ、ショーくんからかってる!

 クマさんに負けるはずないよ?


「クマさんに身長負けるわけないもんっ」

「えーっ、姫ちっちゃいからぁー?」

「小さくないもん! これでも、アタシ大きいほうだよ?」


 あぁっ、つい一人称が……。ま、まぁいっか?

 今日だけーっ、今日だけーっ!


「ひーめ、ちっこいちっこい!!」


 天音ちゃんが、嬉しそうに抱きついてくる。くすぐったい……っ!

 天音ちゃんは、とっても嬉しそうだ。 この前なんて、ショーくんと会えないからって、落ち込んでた人誰かな~?


「おーっし、ついたぞ!」


 気がつけば、薄暗い路地の中に、ポツンとゲームセンターがあった。雰囲気ヤバすぎ。

 げーっ、なんかショーくんパパの本業で使いそうなトコだね……。


「なんだよーっ、その顔!」

「だって~」

「ウチ居るから、怖くないって!」

「えーっ?」

「安心しろよー、何があっても俺が守ってやる!」


 ニカッと笑ったショーくんは、アタシと天音ちゃんを撫でるの。

 ったくもー、調子いいんだから。そんなとこが好きだけどさ!


 それで、二人に連れられて薄暗い部屋の中に入る。

 そこには、二人が言ったとおり、色々なゲームが置いてある。まだ、真新しい機械ばっか。


「だろー?」

「ホントだー、すごーい!!」


 それで、奥にあるクレーンゲームに、目がクリクリしたテディベアが置いてある。薄茶色の毛皮に、白いうさみみ帽子を被った可愛いクマさん。

 わーっ、可愛いっ、凄い可愛いっ!!


「姫、こういうの好きだろ?」

「うんっ、大好きっ! 覚えててくれたのっ?」

「あったりまえ! 可愛い妹のタメだもんなー?」

「エヘヘー、ショーくんも、天音ちゃんもだーいすきっ! ありがとっ!」


 ショーくんの大きい手が、わしゃわしゃと私の頭を撫でる。

 

 そうして、ショーくんはたった一回でクマさんを取ってくれたよ。

 クマさんは、とってもふわふわしてて暖かいくて、気持ちがいいの。

 それに、可愛いっ!


「姫ー、大事にしろよー?」

「うんっ、大事にするー!」

「よーっし、姫のパパとママ待ってるから、帰ろ?」

「うんっ、また連れてきてね?」

「姫がいい子にしてたらねー?」


 ふふっと、天音ちゃんが得意げに笑う。

 こういう、お姉さんぶった天音ちゃんもだぁーいすきっ!

 

 ――こうして、僕は少々ハメを外したけど、無事にクマのぬいぐるみをゲットしたのだった。

もうちょっと、メッキの剥がれ方を上手く書きたい。

そのうち、訂正するかも。

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