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 私には、夢がある。


 それは、この世界で『攻略キャラ』を押しのけ、ヒロインと結ばれること。


 そう、私……、いや僕は、この乙女ゲーム『君色ラバーズ』の世界に転生してきた、転生者だ。

 それがわかったのは、今出会った男の子たちが原因だね。

 出会った場所は、僕の家。僕の家は、薔薇の温室があるんだ。温室内に、綺麗な滝や小川も作られてて、結構セレブなお客さんが遊びにくるのさ。


 帝王『飛鳥井(アスカイ) (レン)

 知王『烏ケ森(カラスガモリ) 悠斗(ユウト)


 この二人の名前を聞いた瞬間、僕は自分の名前をもう一度復唱し、自分の運命を悟ったね。あ、ちなみに帝王と知王は、この頃には呼ばれてないよ。

 僕の名前は、『白桜(ハクオウ) 姫香(ヒメカ)』。

 白桜財閥の一人娘(現在6歳)、そして、君色ラバーズのライバル役にして、別名『悲劇のヒロイン』。

 由来は、こうさ。白桜ちゃんは、何も悪いことはしてないのに、ただ当て馬役にするため、仲の良かったこの幼なじみ二人から裏切られ、最終的には一人ぼっちになってしまう。

 一旦ゲームの幕は降りるけど、次回作で、白桜ちゃんは別な恋人を見つける。でも、一作目の主人公『千鳥(チドリ) (カオル)』に奪われる。

 別に、白桜ちゃんが何か悪いことをしたわけでもないよ? ただ、カッコイイ男の子と仲良くなってるのが『悪い』と薫ちゃんに言われるのさ。薫ちゃんは、ただカッコイイ男の子とたまたま仲良くなっただけのレッテルを貼られた。でも、白桜ちゃんは違う。カッコイイ男目当てで近寄った、と認定され、長年付き合ったお友達にゴミのように捨てられちゃうのさ、可哀想にね。

 簡単に言えば、携帯サイトで転がってる出来の悪いハーレム物かな?

 もちろん、このゲームは糞ゲーオブザイヤーにノミネートされ、キングオブ糞ゲーの座をもぎ取った、有名な作品。あのヘヴン状態なゲームだって、真っ青さ。

 作った会社は、倒産。その後、同人で、君ラバの三作品目を売りそうとしたけど、「これ以上、白桜を虐めるな」って苦情が相次ぎ、同人活動すらできなくなったという話。

 まぁ、白桜がいい人に出会えるゲームなら、売れたって言う話しだよ? でも、ライターの本名が薫ちゃんで、嫌いな奴が白桜ちゃんっていう脳内設定があったとか。リアルで、何一つ勝てない親友に逆恨みして作った作品なんだって、怖いね。


 そういうわけで、薫ちゃんも悪女にするのも可哀想でしょ? お友達二人だって、2作品目で、自分たちが間違っていたと苦悩する場面があったしね。それなら、僕も攻略キャラの一人になればいいと思ったわけ。


 だって、僕は前世では男装カフェに面接を受けに行く途中で、交通事故に巻き込まれて死亡した。女の子から、キャーキャー言われたかったのに、未練を果たせず死んだのさ。それなら、有効活用するに決まってる!


 僕は、可愛い未練を果たせて、薫ちゃんは、カッコイイお友達が増えるだけ。帝王と知王は、友達を失わなくてすむ。まさに、僕が夢見たハッピーエンドだよ! あっ、でも、僕は当て馬になる気はないから、薫ちゃんを奪う前提でいかせてもらうけどね?



 そうと決まれば、張り切ってカッコイイとこ見せなくちゃ!


「飛鳥井お姉様、烏ケ森お姉様、蓮様、悠斗様、はじめまして。奥様にご挨拶したいのですが、何処にいらっしゃいますか?」

「あら……、お姉さまですって。お上手ね……!!

「まぁ……、男の子じゃないのが、もったいないくらい……!!」


 僕は、お母様に言われたとおりに挨拶した。

 なのに、お母様ってば顔真っ赤。可愛いなぁ。いつまでも、年齢を感じさせない可愛さだね、お母様! そんなに可愛いから、お父様とラブラブなんだよ。お父様が羨ましいや。


「この子ってば、もう……!! お二人は、奥様よ」

「わぁ、そうだったんですか? お二人がお若いので、間違えちゃいました……。ごめんなさい……」


 しゅんっ、と落ち込んで見せれば、飛鳥井夫人と烏ケ森夫人は、破顔した顔で頭を撫でてくれる。撫で方が優しいやー。髪型崩さないように、優しく撫で撫でしてくれるのって、気持ちいいよね?


「よ、よろしくな……」

「……」


 ぎゅっと、烏ケ森夫人の後ろに隠れているのは、悠斗様。目をうるうるさせちゃって、お母様とられると思った?


「どうしたの、悠斗? 蓮くんも、姫香……ちゃんも、ご挨拶したわよ?」

「大丈夫だよ、悠斗様。僕はお母様が一番だもん。年齢を感じさせない永遠の可愛さって、凄いよね?」

「うふふっ、姫香ちゃんが一番可愛いわよ。私の可愛い可愛いお姫様」


 お姫様、か。僕は、これから王子様になっていくんだ。まだまだ、焦るひつようもないさ。

 そんなことを考えてると、視線を感じた。隠れて、もじもじしながら、悠斗様は僕を見てる。お母様のこと大好きなんだねー。僕もだよー。

 でも、君のお母様じゃないから、安心してねー?


「あ、あの……」

「うん、どうしたの?」


 耳まで、顔が真っ赤だー。可愛いなぁ。それでもって、目をうるうるさせたまま僕をじーっと見続ける。あれー、警戒させちゃった? 仲良くしたいんだけどなぁ。


「お、お、お友達に、なって、ください……」

「えっ? もちろんだよ、よろしくね!」


 手を差し出せば、遠慮がちに悠斗様も握手してくれる。ぎゅっと手を握ったら、悠斗様が嬉しそうに、笑ったんだ。

 やったー、友達できた!! 警戒されてるみたいだけど、これから徐々にわかってもらえばいいよね?


「三人とも、同じ学校へ行くのよ?」


 そういえば、この前『聖羅学院』のお受験したような。

 あーっ、そういえば、今思い出したけど、君ラバの舞台は聖羅学園の高等部だったね。エスカレーター式って言ってたから、気づかぬ間に着々とゲームの舞台は出来上がっているのか。


「わぁ、楽しみにしてるね!」

「――そうか? なら、俺が出迎えに来てやろうか?」

「ううん、大丈夫だよ。寝坊した時が大変だし」


 昔の僕、朝起きれないタイプだったから。確実に遅刻する予感。絶対、夜更かししないよう、気をつけなくちゃ。


「そうねぇ、姫香ちゃんは朝弱いのよ。飛鳥井様にご迷惑かけれないわ」

「あら、これから、早起きできるよう練習しないといけないわね?」

「そうですね。僕、頑張りますっ!」


 そうだね。どうせなら完璧な王子様を目指したいし。隙のない王子に見せかけて、大切な人にだけここぞって時に、弱い部分を見せる。そうすることで、相手はイチコロさ。

 そのためには、日頃から隙がないように頑張らなくちゃ。

 待っててねー、薫ちゃん。君が望む、最高の王子様を目指すよ!! 皆が幸せになるなら、僕は結果が当て馬でも後悔はしないから!!

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