危険な君
少しシリアスになっております。表現は抑えていますが、苦手な方はお控えください!
物音一つしない静まり返ったアメリアの部屋に、アメリアの息遣いだけが響く。
倒れるアメリアを、ヒューが抱き上げここまでつれてきたのだ。
そして、医師の診察によると病的なものではなく、魔力的なるものが原因らしい。
魔力が関わるとなったら、自動的に魔術師 ルークの名が挙がった。急いで、王宮とカラムに連絡を入れ 今は、ルークを待っているのであった。
「…遅い。」
不安げにアメリアを見つめるヒューが、ポツリと呟いた。
「もう少しでいらっしゃいますわ、きっと。」
皆、焦る気持ちを抑えつけ、まだ来ぬルークの姿を待ちわびた。
バンッと勢い良く開けられたドアには、息を弾ませたクラウドと、どこか苦しげなルークがいた。
「クラウド様っ!魔術師様も…ようこそ、いらっしゃいました。…カラム様は?」
1人姿の見えないカラムの姿をベラが探すと、クラウドは呟いた。
「…カラム様はこない。」
リリーとベラが顔を苦くしたと同時に、ヒューはガタッとイスから立ち上がった。
「単刀直入に聞こう。アメリア様をこのような状態にしたのは、貴様の仕業か?」
「ヒュー様っ!」
怒りを露わにし、ルークに迫るヒュー。リリーは慌てて、声をかけた。
「…はぁ、ヒュー。馬車で聞いたんだが、こいつもなんだか、訳アリなんだよ。一応こいつの話も聞いてやってくれ。」
クラウドは面倒くさげに、言い放つとベッドの側へと歩いた。
「まぁ、座って話そう。話は長くなる。」
アメリアの寝ているベッドの上に座ったクラウドは、殺気を放つヒューと、ルークに声をかけた。
渋々ヒューは、ソファーへと座り、ルートも少し遠慮がちにヒューの正面に座った。
「アメリア様をそのような状態にしたのは、紛れもない僕です。
父の命令だった。…父と、アメリア様のお母様、カーラ様は、同い年なのです。そして、父はカーラ様に恋をしていました。父の初恋だったと聞きました。ですが、長年育み続け、はち切れそうなほど大きくなった父の愛は、カーラ様がご婚約したことにより、行方を失ってしまいます。最愛の人へと向けられず、行方を失った巨大な愛は段々憎しみへと変わっていきました。愛とは怖いものです…。無意識のうちに、父は、カーラ様ではなく、アメリア様のお父様を激しく恨むようになったのです。「あいつが、彼女を騙し私から奪った」などと、よく父の口から聞きました。でも、そんな父でも代々王宮に仕える魔術師だったのです。世継ぎを作らなくてはいけませんでした。王が見繕ってくださった妻と結婚し、父は一時落ち着きました。ですが、母は体の弱い方で、僕を生むと同時に他界してしまいました。そして、父はまた、化け物と化していました。誰も信じられず、部屋に引きこもるようになり、僕にずっと暴力を振るうようになりました。その頃の父の口癖は「お前など、生まれれなければルビーは生きていたのに」でした。そして、段々父は魔力で僕を苦しめるようになりました。何度、瀕死状態に落ちたことか…。
そして、それが何年も続くと、僕は父よりも優秀な魔術師になることができ、父の攻撃から自分の身を守れるようになりました。そんな時です。王宮に、アメリア様がいらっしゃり、僕の魔術の芸を見ることになったのです。父は、見たこともないような笑顔で喜んだ。「私が恋に落ちた頃のカーラソックリに違いない」と。
ですが、実際にアメリア様を見た父は、憎しみを瞳にうつしていました。アメリア様は髪に睫毛に、肌とお父様の血を引継ぎ真っ白だったからです。父が唸るような声で、言ったのを覚えています。「カーラを騙した、醜い男の血が入っている…」と。その日から父は、アメリア様も目の仇にしだしました。そして、父はついにアメリア様に手をそうとしたのですが、それに気づいたカラム様が阻止し、失敗に終わり、父はカラム様の命令で魔術師を引退することとなり、僕が王宮の魔術師となることになりました。そして、カラム様は腕の立つ騎士をアメリア様の護衛につけたと聞きましたが、あなただったのですね…。
そして、僕はやっと父のいない人生を生きることができました。生まれて初めて喜びというものを感じることができたのです。
しかし、父の想いは簡単に終われるほどの大きさではなかった…。
曲がりなりにも、王宮お抱えだった魔術師です。油断した僕など、取るに容易かったのでしょう…。僕は一瞬で父に捕まりました。そして、受けた魔撃で僕は一週間ほど苦しみつづけました。痛みがやっと引いたのは、豊作を願う祭り当日の日だった。父は、ウェールズ家の庭に行き、花にアメリア様を襲うよう細工をしてこいと、僕に命令した。…恥ずかしいことに、小さい頃ずっと苦しめれていた日々を思い出し僕は、命令に従ってしまいました。
でも、覚悟もなにもない僕にはアメリア様を殺すことなど、できるはずもなく…。睡眠状態になる、魔術だけをかけた。だから、アメリア様ももうそろ目を覚ますと思う。…申し訳ありませんでした。」
ルートは、唇を真っ青にし震わせ、苦しそうに胸元を掴みながら、淡々と話した。
「何も知らなかったのに、責めてしまって申し訳なかった…」
「いえ…怒るのは当然です。僕の方こそ、申し訳ありませんでした…」
リリーとベラは、顔を見合わせ眉を下げた。
「クラウド様…。魔術師様は、罪に問われてしまうのでしょうか?」
「んー?父さんにも母さんにも話したけど、2人ともルークを罪に問わせるつもりはないみたいだよ。自分達の過去の過ちを、子供達にまで引きずってしまって申し訳ないってさ。
まぁ、ルークの父は牢獄行きかな。」
「…そうですか。」
ルークが呟いたのは、たった一言だったが、その瞳には涙を浮かべ、光をともしていた。
やっと、父という頑丈な枷から抜け出せるのだ。
「…で、姉さんはいつになったらやめるの、それ。」
クラウドの言葉に、リリーとベラは目を丸くて、ベッドの側へと駆け寄った。
「まぁ、お嬢様起きていらっしゃったのですね!」
「中々、おきたよーなんて言えない空気で…。」
「ちなみに、ルークの長話の前から起きてたよ。」
「クラウド!そんな前から気づいていたなら、言ってよね!」
「僕が、姉さん…目を覚まして…なんて呟くたびに、眉をピクピク動かすもんだからさぁ、面白くって。」
アメリアは、クラウドをジロリと睨んだ。
「…で、姉さんはルークを罪に問わせたい?」
クラウドの言葉に、アメリアは大きな瞳を更に見開かせた。
「あり得ないわ!!私はもう、ルーク応援隊の隊長よ!話を聞いてて、ウルウルしてきて、鼻水が垂れそうになったわ!」
ブンブンと音がなるほど、アメリアは首を振りながら言った。
「お嬢様!鼻水なんて、はした無いです。口に出してはいけません!でも、私も応援隊に入りますわ!」
「私も入隊いたしますわ!」
リリーとベラは、楽しそうにアメリアの冗談に乗っかった。
「はいはい、じゃ僕も入隊ね〜。ちなみに、ヒューもだよ。じゃ、そういうことで父さんに報告してくるね」
クラウドは楽しそうに、コロコロと話すと部屋を出て行った。
ルークは、物心ついたころからずっと父に縛られ、外へはあまり出られなかったため、言葉遣いなどが少し幼いです^^;
読んでいただき、ありがとうございました!