思い出した君
会場には、もう参加者が集まっていた。
「姉さん。」
聞き慣れた声が聞こえ、振り向くと弟のクラウドが立っていた。
「婚約おめでとう。」
「ありがとう、クラウド」
天使のような微笑みを向けられ、沈んでいたアメリアの気持ちも少し明るくなった。
しかし、アメリアがクラウドに微笑んだ瞬間、カラムと繋いでいた手をギュッと握られた。
アメリアは、はっとし「私の笑顔、そんなに変だったのかしら…」とまた気分が落ちてしまった。
そのあと、パーティーは無事に終わったのだった。
だが、それきりカラムの態度はどこか他人行儀で目を見てくれなくなったのである。
それは、12歳の時から今までずっと続いている。アメリアは多少は苦痛だったがあまり気にせず過ごしていた。
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「はぁ…。」
アメリアは、何度目か分からない溜息をついた。気にせず過ごしていたとはいえ、やはり気分が落ちることもあった。
庭に咲いた花をゆったりと眺めた。
リリーが、冷めてしまった紅茶を下げようとしたとき、侍女のベラが駆けてきた。
その、異常な焦り具合にアメリアは顔を傾けた。
「一体どうしたの、ベラ。」
「お嬢様!あぁ、大変ですわ!カラム様がっ、カラム様が愛人候補をついに選ばれたようですわ!」
ベラが悲鳴のように叫び 告げた内容は、アメリアの頭に、鈍器で殴ったような衝撃を与えた。
「カラム様が…愛人……」
アメリアの国では、婚約者を見つけた貴族達は愛人候補を選べるという変わったしきたりがあった。だが、カラムは愛人を選ぶことを、1度もしていなかったのでアメリアは安心しきっていた。
なんとか、揺れる頭を抑え、アメリアは聞いた。
「そ、その方の名は…なんていうの?」
「…名はセシリー様というようです」
またもや、アメリアの頭がガンガンと揺れる。
セシリー…何処かで聞いたことがある名だわ…あぁ、頭が割れるように痛い…
「お嬢様っ!」
顔を真っ青にしたリリーとベラを横目に、アメリアは意識を手放した。
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少し冷たい、スルスルとしたシーツの感触を感じアメリアは目を覚ました。
「私…倒れてしまったのね。それにこれ…”キミプリ”の世界よね…」
寝込んでいる間に、アメリアは色々なこと。いわゆる、前世を思い出したのだ。
「これって、転成ってやつなのかしら?」