憂鬱な君
暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しいです!
いつからだろう。
あなたが目をみてくれなくなったのは
いつからだろう。
あなたが私のことを名前で呼んではくれなくなったのは
いつからだろう。
あなたが周りの目を気にし出したのは
いつからだろう。
あなたの愛が冷めたのは……
紫陽花:冷淡,辛抱強さ
ヒヤシンス:嫉妬
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「はぁ…。」
ちょっとした迷路のようなお屋敷から、少し離れた庭のベンチにアメリアは座っていた。
彼女は、アメリア•ウェールズ
ウェールズ侯爵家の娘である。
母譲りのエメラルドの目に、それを縁取る父親譲りの白く長い睫毛に、艶やかな白髪。細っそりとした肢体には、豊かなその身体。そして、ぽっと色づいた桜色の頬に、何もしなくても赤い形の良い艶やかな唇。
世の中の女子の願いを詰め込んだような容姿をした、まさに絶世の美女であった。
だが、そんな彼女は宝石のような瞳をおとし、嘆いていた。
「……私が、もっと綺麗だったら…」
他人が聞いたら、目が飛び出すような発言に、侍女のリリーは苦い顔をした。
「お嬢様…お嬢様は誰もが羨む程の魅力をお持ちですわ。」
実際に、今のアメリアも憂いを秘めたミステリアスな美女にしか見えない。こんな姿を世の男性が見たら、惚れてしまうに違いない。
でも、ここにはそんな男性はいない。いや、ある人の命令でそんな男性はいられるわけがないのだ。
「いいえ…だって、私には魅力がないから、カラム様は目もみてくれないわ…」
侍女は、それは絶対にないという顔をするがアメリアの目にはうつらなかった。
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カラム•エドワード
この国の王子である。そして、アメリアの婚約者でもある。
太陽に当たるとキラキラと輝く金色の糸のような髪をもち、王家特有の海の底のようなスカイブルーの瞳をもつ見目麗しい王子であった。
そして、知識を豊富にもち筋肉のついた引き締まった体はまさに智勇兼備という言葉がピッタリであった。
物心ついた頃から、アメリアとカラムは一緒にいた。
そして、これ以上ない条件を持っている2人が婚約を結ぶのは、当然のことであった。
アメリアも、カラムに恋心を抱いていたので告げられたときは喜んだ。そして、カラムも同じ気持ちなのではないかと、アメリアは思っていた。
そして、婚約を告げられた次の日に婚約をお披露目するちょっとしたパーティーがあった。
婚約をした女性は、大人の女性になったことを認められるのでその日はいつもより大胆な、深紫色の体のラインがわかる、マーメイドラインの胸元が空いたドレスを着ていた。
カラムと共に会場へと向かうため、待合室へと入った。
「カラム…いる?」
「あぁ、アメリ…っ」
はっとカラムが息を飲むのがわかった。
あぁ、そんなにドレスが似合わないのかしら…とアメリアは心配になった。
「とても、綺麗だよ。さぁ、行こうか。」
そんなの嘘だわ。アメリアはそう思った。
カラムは、アメリアを見ず淡々と台本でも読んでいるかのように言い、手を差し伸べてきた。
アメリアは、涙が落ちそうになるのを堪え、震える手をカラムの手の平の上にのせた。
私だけが、カラムの事を想っていたのね…
アメリアは、憂鬱になる思いを必死に抑え婚約パーティーの会場へとカラムと向かった。