気付いた時には
突然だが、私は転生と言うものを経験したらしい。
ああ、うん。言いたいことは大体分かる。『何言ってんのコイツ』とか『遅めの中二病?引くわー』とかその辺りだろう。そう考えるのが普通の反応だ。
だが事実である。私は転生という物を経験した。このことに嘘偽りは無い。まあ、転生と言っても神様だとか何かにあったということではなく。気がついたら転生していたのである。転生する直前の記憶では、会社に遅刻しそうになり、某世界最速の人すら超えたのではないかと思う程の速度で全力ダッシュをし、会社まであと少しと言った所で憎き赤信号に道を阻まれた。だが、『赤信号、皆で渡れば怖くない』を割りと本気で実行していた私は、信号無視をしてダッシュ。その時、速度無視をしてきたバイクに跳ねられお陀仏、のはずだった。
そのはずだったのだが……
「どうしてこうなった…」
鏡に映った自分、恐らく自分であるだろう長耳金髪碧眼の絶世の美少女を見て、そう呟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時は少し遡る。
「……え?」
気が付けば、私は知らない天井を見上げていた。
いや、待って。ちょっと待って。ステイステイ。何がどうなっているの?私は確か、会社にダッシュで向かっていて、それで信号無視をして、それで……
「あっ……」
思い出した。思い出してしまった。目の前に迫って来るバイクを、自分が轢かれる―――死ぬ瞬間を。
と、そこまで思い出した所で、気付いた。
「いや、おかしいよねこれ?」
私は確実に死んだはずだ。私自身がそれを覚えているのだから間違いない。なのに、何で私はこんな何処とも分からない場所の、やたらとふかふかなベッドで寝ているのだろう。というか、何だか頭が重たい様な……
ベッドから起き上がると、髪が下がってくる。って、私の髪ってこんなに長かったっけ?
「……ええ?」
目に入ったのは、びっくりする程綺麗な金色の髪の毛。触ってみると、とんでもなくサラサラとしている。このまま、いつまでも触っていたい気持ちになって来た所で、やっと気付いた。
「……え、金髪?」
私は髪を染めた覚えなど無い。しかし、この超サラサラでツヤツヤな髪は間違いなく私の頭から生えている訳で。と、そこでふと、鏡が目に入った。そこに映っていたのは―――
「……はい?」
金髪長耳碧眼の、1000人中1000人が振り向く様な絶世の美少女だった―――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
―――そして今に至る。
うん、回想を挟んでみたけどまるで意味がわからない。
まず、何故死んだはずの私が生きているのか。いやホント訳が分からない。私バイクに轢かれたよね?確実に逝っちゃったよね?何で生きてるの?
そして、ここはどこなのか。周りを見る限り、木造の建築物と言うことは分かる。……私が住んでいる町では、木造の建築物など無かった筈だけど。
最後に、これが一番訳の分からないことなんだけど―――
「これってあれだよね……。エルフ、っていう奴だよね…」
―――私の見た目が、ファンタジー物等によく出てくる金髪長耳碧眼……所謂、エルフと言う奴になってしまっていることだ。それも、目に入った瞬間に見とれてしまいそうになるくらいの、とびきり美少女に。いやもう、なぁにこれぇとしか言い様がないのだけれど…。
「どうしてこうなった……」
深い溜息と共に、私はそう呟いた。
勢いで書いたこの作品。亀更新になると思いますが、宜しくお願い致します。