ワイルドベアー2
――――ガガガガガッドスッ
俺が同じ所に《マジックアロー》を打ち込むと同じ所に矢が風をまといながら突き刺さる。
《弓使い》スキルであったスキルだが俺は魔法以外はあまり詳しくない。
確か属性を付加してなんたらだった気もする。
「ナツミ、火属性で」
これで伝わったのだろう。
ナツミが火属性を付加した矢を打ち込んでくる。
森にいるモンスターは大体火属性が弱点だ。
無属性?有利になる場面もないし、不利になる場面もないさ。
それにしても、
(ナツミの弓、精度高いな)
同じ所になんてなかなか出来るものじゃない。
矢代や弾代で不遇とか言われている弓や銃も当たれば高火力に分類される。当たればだが
俺の周りで当たらない奴はほとんどいないからそうは思わないかもしれないが、低レベルの弓なんて特に当たらないらしい。
人聞きだが、弓は放射状にモンスターに向かうから軌道を計算して弓の角度を調整しなくてはいけないし、
銃は反動が少ないがあり、照準が狂ってしまうらしい。
銃の場合はSTRさえしっかりあれば反動は抑えれるが、弓は慣れとしかいえないらしい。
そう考えるとナツミの弓の腕は凄いを通り過ぎて恐ろしいといえる。
*
「ラスト!」
俺は最後の足掻きとして振りかぶってきた《ワイルドベアー》の腕を《加速》を使って避ける。
振りかぶったことで隙が出来た所にナツミが弓を正確に叩き込む。
すると《ワイルドベアー》は光の粉となって消えていった。
俺達の前には、レベルアップを告げるウィンドウと入手経験値、ドロップしたLのウィンドウが現れる。
このウィンドウはボス戦のときに出るものだ。
雑魚狩りでこんなのが出てたら邪魔で仕方ないというβプレイヤーからの要望に運営が答えてくれた結果だったりもする。
「やったぁぁぁぁぁ!」
俺は喜ぶナツミを横目に見ながら、時間を見る。
(1時間・・・呪文詠唱にナツミの存在が大きいな)
次に使ったアイテムの数を確認。
MPポーションが10本ほど、HPポーションは1本も減ってない。
俺のHPは満タン、ナツミのHPも満タン。
(完全勝利)
「《ワイルドベアーの皮》も手に入れたわ!
これでローファーが作れる!!」
ローファー・・・?
あぁ!!
あの地味にステータスが高い靴!
β時代のファッション重視組で流行っていたローファーがあったはずだ。
あのローファーの初期ステータスは確か靴にしては高いオール3のはず、それにUG回数も10回と多い方だった奴だ。
材料が《ワイルドベアーの皮》2枚って・・・あまり数が出回らなかったのはこのせいか・・・
「ベルちゃんありがとぉぉぉ」
ナツミが抱きついてくる。
こいつ・・・盛ったな・・・どこをとは言わないが。
*
「さぁ作るぞ!!」
ナツミが貸し工房で大きな机の前に座って、《ワイルドベアーの皮》を出す。
そして皮に型紙を当てると、皮に型紙をなぞるような線が書かれる。
その皮を裁ち鋏で切り、ミシンのほうに移動する。
その間、暇だから製作の様子を見に来ていた俺はあきたから、工房内にあったキッチンで適当に食べれそうなものを《料理》スキルを使って作る。
βの時は生産系スキルをとってなかったから、貸し工房内にキッチンがあるなんて思わなかった。
《料理》スキルは熟練度が低くても食べれるものは作れる。
よくあるような低いと失敗して真っ黒こげの暗黒物質が出来るようなことはない。
運営の食べ物を粗末にしないという心意気なのだろうか。
《料理》スキルといっても《時間短縮》や《バーナー》、《水生成》といった項目があるだけで、ほとんど現実と変わらない。
《時間短縮》はそのまま焼き時間や発酵時間、煮込み時間が短縮できるスキルだ。物凄く現実に欲しい。
《バーナー》は小さい火を指先から出して軽くあぶるということがしやすい。簡易コンロといったところだろう。
《水生成》はMPを消費して水を作れるスキルだ。キッチンには水道があるから使わないが、外だと役に立つだろう。
と料理をしていたらナツミが大声で出来たと叫んでいるから見に行こう。
ついでにこの出来た《熊肉のサンドイッチ》を持って・・・味の感想を聞きたいな。
俺的にはいけると思うんだが。
*
「ベルちゃん見て見て!
《知的なローファー》だってさ!! 靴に脳なんてないのに!!」
ナツミが出来たローファーを俺に渡しながら笑っている。
(知的な・・・?)
【知的なローファー】 STR+2 DEX+1 INT+8 LUK+1 物理防御+2 魔法防御+2 UG10
こ、これは・・・
「タイトル付き装備・・・」
タイトル付き装備とは【知的な】とかがついてる装備や防具で、一つのステータスが元から強化されている物をいう。
βでも最後のほうに登場した装備品だからこんな始まったばかりでは出来ないはず。
「うーん・・・どうなのかな?いいのかな?
売るとしたらいくらぐらいかな?
5千ぐらい?」
ナツミは今までどんな武器を作ってきたんだ・・・?
「これは安くても5万」
一般人の1週間分ぐらいの金額だったはず。
昨日俺とデンは一人頭15kリム手に入れてるがこれは参考にする数値ではない。
もう少し真剣に金になるやつだけ狙えば一人一日3万は稼げる。
そんなのは一部だけだが。
一般人は良くても一日10kリムだそうだ。
運が良くて装備品拾ったらもう少しあがるらしいが。
「えぇ!?そんなにするの!?」
ナツミはアイテム欄を開いて机の上に何個か装備品を並べる。
《ワイルドボアの皮》製の帽子、靴、手袋がある。
「こんなにあるけど・・・」
俺は並べられた装備品を見ていく。
全部タイトル持ち・・・
一体何が?バグ?
「何か特殊なことしてる?」
「特殊なこと?
んー作るときに《付加魔法》使ってるぐらいかな?」
《付加魔法》なんて俺しらないぞ。
β時代にあったか・・・?
後で調べてみると激レアスキルでした。
《付加魔法》:装備品に追加能力を与える。追加能力はランダムに元についていたステータスが一つにまとまる。
生産者としてナツミはとても使えるスキルを手に入れたと考えていいだろう。
「これ全部、最低は5万リム。
オークションすれば30万リムまであがると思う」
「えぇぇぇぇぇ!!」
つまりはここにあるだけで100万リム・・・。
俺のあの家が150万リムだったから・・・うへぇ・・・
この《ワイルドボアの帽子》はSTR強化で、《ワイルドボアの手袋》はDEX強化、《ワイルドボアの靴》はAGI強化。これは売るときも気をつけないいといけないな・・・
「多分ライちゃんならなんとかしてくれるよねっ!!」
まぁ多分出来るだろうな。
ただの先行投資の予定だったんだが・・・これは先行投資どころじゃないな。
ナツミにいくらか皮アイテムを持っていって装備品を作ってもらおう。
この後、俺のサンドイッチを二人で食べ、ライの店に行くことにする。
実に好評でした。
「ナツミちゃんがこんな装備品を作れるなんてね・・・」
ライもナツミが出してた装備品を見ながら呟く。
「ナツミちゃん!
これからここに作った装備品売って!いい金額で買うから!
素材優先的に回すから!!」
「え、えぇぇぇ」
ライの専属の申し出にナツミは驚いている。
まぁそうだな。
生産職はまず素材を集める所が困難だから、素材を手に入れる手段が出来るだけでも大きい。
「もう専属なんて有名所の武器屋ならいるわよ。
鍛治屋が店をやってるところもあるけど、今はあまりないわ。
ついでに狩りに行くときはそこのベルを貸すわ」
!?
なんで俺が巻き込まれてるんだ!?
「ぇ!?
それならお願いしますっ!!」
おい。なんでナツミはそれで了解するんだよ!!
「ベルも別にいいわよね?」
いいけどさ・・・
「ベルもいいってさ!」
「ベルちゃん何も言ってないんだけど・・・」
「大丈夫よ。表情がいいって言ってるから!」
「は、はぁ・・・」
俺は無表情だったはずなんだが・・・
感想ありがとうございます。
仕事中に何書こうかとか考えてたら定時になってました。
ちゃんと仕事はしているので問題ありませんよ。
ちょっと掲示板っぽいの書きたくなったので何話かあとに入れるかもしれません。