飛翔
俺は、最近の日課になりつつある、《エレルニア》の雑貨店からMPポーションを仕入れて、《ヘネシリウム》のライの店で卸すために森の上空を気持ちよく飛行中だ。
いつ飛んでも気持ちがいい。
下には綺麗な緑の絨毯、上には青い空、ところどころに白い雲があり、見ていてとてもいい気分だ。
きっと空気を感じることが出来たなら透き通ったような感じなんだろうか。
風は感じれるのにな。
――――ピッ
ん?
俺の視界の端っこで、スキル取得のアイコンが光る。
なんだろうか。
どうせ、この当たりのモンスターは飛行できないし、弓持ちゴブリンの矢も届かない高度で飛んでるし、速度を緩めないまま、スキル欄を見る。
《無属性魔法》の欄の下にツリー形式で魔法が書かれており、その中で点滅を繰り返している魔法が一つある。
「《飛翔》?」
また飛行系魔法か?
《飛翔》: 《浮遊》の上位魔法。今までの速度の3倍以上出すことの出来る。
上手く飛べるかは貴方しだい。
・・・3倍って効いたら赤いのが思い浮かぶのはもう俺が終わってるのか?
まぁいいや、一旦使ってみよう。
一回降りないとな。
*
「《飛翔》」
まだ、呪文を知らないからシステム任せで使う。
図書館で呪文を発掘しなくてはいけないなぁ・・・
魔法を使うためにMPを流すと、俺の体が今までの《浮遊》と比べて勢いよく上空に持ち上がる。
これは・・・今まで使ってた《浮遊》よりも制御がしやすい。
俺は一気に雲の上まで高度を上げる。
そこから地面に向かって急降下。
長い髪が後ろになびいて行く。
顔に当たる風が痛い。
どれくらいスピードが出ているのか知らないが、5秒もかからないうちに地面が目の前に近付いてくる。
もう《浮遊》だとこれ以上、地面に近付いたら激突するという高度まで来たら一気に上昇するように魔法を操作する。
今まで以上の上昇能力だ。
もっと低い高度でも地面に激突はしなさそうだ。
バレルロールの次にロール、高度があがったことを確認した後、地面に高速で降下し、木の天辺の枝の少し上で急停止してからの、急上昇。
空中で一瞬停止してからの逆方向への全力飛行。
そこから空中で体を捻りながらの自由自在の機動。
(楽しい!!)
《浮遊》で得られなかったこの上昇していく中の風や下向きの重力、今まで以上に小回りが効く自由自在の高速飛行。
絶対に一般人では現実で感じることの出来ない感覚。
なんといってもこの青い空を独り占めしたかのような開放感。
たまらんっ!!
*
「主任」
スーツを着崩したかのような服装をした男性が奥の席に座っていた女に声をかける。
「どうかした?」
「息子?さん。
また、変態機動してますよ」
「あー・・・
ちょっと映して」
主任・・・響の母親は部署ごとに一つある大型モニターに映された銀髪の少女の空中の曲芸を見て、頭を抑える。
周りにいた職員もその危なっかしい、かつスリル満点の変態機動を見て、手に汗を握っている状況だ。
「また、あの子は・・・」
「あはは・・・
息子さん現実でも空を飛べるなんてことはないですよね?
いくらなんでも慣れすぎじゃありませんか?」
確かにベルの飛行は、慣れていないと出来ないようなことばかりだ。
狙ったように木のスレスレで停止したり、地面に向けての全力飛行からの急上昇。
ベルは《飛翔》を《浮遊》とよく似ていると思っているが、まったく違った魔法なのである。
最高速度も違うし、消費魔力も違う。
似ているとしたら、姿勢制御ぐらいだろう。
「ないない。
あの子、頭のネジが数本飛んじゃってるんじゃないの?」
自分の息子ながら怖いわぁーとかいう見た目高校生の主任である。
「そういや、なんで私の息子がこれやってるって知ってたわけ?
なにずっと見てたの?」
ここに部署の大きな目的は、ゲーム内の治安維持とアバター関係品の製作である。
街の様子をみて、大きな事件があるとそれを解決するのだ。
事件といってもほとんどがバグからくる事件だが。
人気のないような森の上空なんて見るような余裕はあまりない。
毎日5万人フルで入らなくても小さないざこざから大きな事件まで多数ある。
「い、いえ、可愛いからってずっと見ていたわけじゃ・・・」
男の職員には冷や汗が見える。
母親は男を睨むが、
「まぁいいわ。
貴方が持ってるベルちゃんブロマイドは没収するけ「ごめんなさい。ずっと見てました。没収だけは勘弁してください!!」・・・あっそう・・・」
男はロリコンであった。
*
なんかどこかからか見られていたような気がするが気にしないでおこう。
――――カランッ
「ベルちゃん、いらっしゃーい」
ん?NPCしかいないな。
まぁ良いか。
「こんにちは、ハルさん。ライは?」
このNPCはハルという名前で、主人がいない間に店を切り盛りしてくれるNPCだ。
特徴としては語尾が延びる。
「まだ来てませんよぉー」
なんだずっといるかと思ってたんだが、いないのか。
ハルさんでいいか。
「買取お願いします」
「分かりましたぁー」
俺はNPCに大量のポーションを渡す。
「これまた多いですねぇー
ちょっと待ってくださいねぇー」
カウンターの下から具現化させてあるリムを取り出して数え始める。
一旦アイテムボックスに入れて、指定枚数取り出したらいいのに・・・
「それだと雰囲気ぶちこわしじゃないですかぁー」
本当にハルさんはNPCなのだろうか・・・
てか、また思考読まれたし・・・




