アリス2
「君たち可愛いね。
お茶しない?」
「奢るよー」
違和感だらけの金髪青年3人が俺達、小学生に見える2人と高校生2人に声をかけてきた。
《Magia Online》はリアルばれを防ぐためにある程度はアバターを弄れるが、現実の体の影響を考えて特に骨格は弄れないようになっている。
現実でデブでもやせたように出来たり、女性だと胸を盛れたり減らしたりは出来る。
βで現実で引きこもりのデブだったのが、ゲーム内で現実の姿をやせた風にして使っているととてもイケメンになり、現実でもそのアバターぐらいまで頑張ってダイエットしてイケメンになった人がいる。
その人はその様子をブログという形で日記をつけていて今では衝撃映像とかそんな感じのテレビでダイエット特集をすると結構な頻度で話題になる人だ。
その努力やブログから垣間見えるその人の優しい感じが伝わって来た人だ。
そして昔から好きだった幼馴染に告白して、結婚まで行った人だ。
ブログは「末永く爆発しろ!」などとお祝いのコメントで溢れている。
話はそれたが、体は大きくは変更できないが、コンプレックスを減らす程度には変更できるが、顔は自分の顔をベースに結構弄ることが出来る。
弄りすぎると笑顔が怖くなったり、表情がおかしくなったりして顔に違和感が表れる。
そのためほとんどの人は、大きい顎を削ったり、二重にしたり、鼻を高くしたりとプチ整形程度しか弄ってない。
この金髪青年3人は現実と全て違う顔にしたのだろう。
違和感がないところを探すほうが難しい。
「ごめんなさい」
「いかないのデースッ!」
「無理」
上からトミー、アリス、俺だ。
デンは俺の後ろに隠れておびえている。
そういや、こいつ男性恐怖症だった。
小さいころの・・・俺からいうことじゃないな。
「ねーねーそんなこと言わずにさぁー」
デンの俺のスカートを掴む手の震えが大きくなった。
「・・・しつこい男は嫌われるぞ」
アリスがデンを少し見て、男たちを睨みながら、普段では使わないような低い声で声をかけた。
アリスは空気が読める女だ。
デンが男たちを見て震えるのが分かったのだろう。
それに、これはマジ切れ寸前のアリスだ。一回だけ見たことがある。
「ぇ?いいじゃん!
いこーよー」
「消えろ」
アリスは目にも止まらぬ速さで忍刀を抜くと一番前にいた男の首筋に突きつける。
俺はそのアリスの動きに合わせて周りにいた男の周りに、少し前から小さな声で唱えていた《マジックアロー》を一人2つ、一つは目の前にもう一つは首筋に操作して静止させる。
街中はPK禁止だが、衝撃は入るし、武器を向けられる恐怖はある。
俺達の行動が早すぎて男たちはまったく反応が出来なかった。
「消えろ」
「は、はいぃぃぃ」
「ご、ごめんなさぁぁぁぁい」
男たちは散り散りに逃げていった。
周りで見ていた人達もどこかしら安心したような顔だ。
後から知ったがあの青年トリオは、自らを攻略組とかいって「先に進む俺達のための物だ。よこせ」とかいって強奪、NPCの薬屋の別の客を追い出し、全て買い占めてしまう。あほらしい集団だったらしい。
*
「ねーねーベルちゃん」
狩りをするために《南の森》に向かっているとトミーが話しかけてきた。
「何?」
「ベルちゃんって今さっきどうやって魔法使ったの?」
あれ?トミーは知らないのか?
「詠唱しただけ」
「詠唱?」
これは完全に知らないな。
「一々スキルを選択しなくても戦士スキルみたいにモーションではなくて声による詠唱をしただけ」
この魔法の詠唱に気が付いたのはなぜ戦士系スキルはモーションでスキルを使えるのに、魔法だけスキル選択する必要があるんだ?という疑問からだった。
何かあるかもという期待を持って街の図書館で調べたら詠唱呪文を見つけたのだ。
「そんなこと出来たんだ・・・」
「そうなのデースッ!
先生は皆の魔法の先生なのデースッ」
「どういうこと?」
「ベルはβで使えないと言われていた魔法の有能性を見つけ出したのです」
「??」
トミーが頭の上にはてなを浮かべながら頭を傾けている。
「先生は魔力の概念の発見、魔法の呪文のとかの発見したのデス!
βでは超有名人だったのデースッ!」
「へぇ・・・ベルちゃんが・・・
あっだからアリスはベルちゃんのこと先生って言ってるんだ」
「それとは関係ないのデス。
先生は私の日本語の先生なのデス」
「へぇ・・・ってえぇ!?」
「私このゲーム始めたとき日本語出来なかったのデス」
あの時は本当に大変だった。
アリスは日本語できないし、俺も英語は授業ぐらいしか分からなかったし。
プレイヤーはアリスのモデル体系を見て恐れ多いのか近付かなかったし、アリスが声をかけても逃げていた。
まぁ英語を理解できなかったから逃げたんだとは思うが。
結局、日本語ができずに説明が分からずに、何をどうしたのかプレイヤーを倒すゲームとして認識してしまったのだ。
そしてアリスは最強で最凶なPKとして有名になった。
俺がある程度、魔法系のことで有名になりだしたころにアリスに襲われたんだ。
まぁ勝ったが。
その後、話してみるとまったく何を話しているのか分からなかった。
かろうじてチャットとして話している内容を打ってもらうとなんとか理解できたからこっちも単語を繋げた様な英語だが、なんとなくは伝わったようで会話はできた。
それからだな、俺とアリスの馴れ初めは。
そんな感じの話をアリスが皆にした。
「へー、ベルちゃんがですか・・・」
デンは俺を見ながら、多分、英語の勉強をしていたのはこのためかとでも思っていることだろう。
何気にβ時代の半分はアリスと一緒にいて、アリスに日本語を教えていたからな。
「そのときはもっと話してたのデス」
うぐっ・・・
あの時はなんとか言葉を伝えようと必死だったからな。
ロールプレイなんてしてる暇はなかった。
「あっ《ワイルドベアー》についたのです。
狩るのです」
よかった追求されなくて・・・
「了解デースッ!!」
「分かった!!」
デンは銃を構え、アリスは手裏剣と忍刀を構え、トミーと俺は杖を構える。
「いくのですっ!」
デンの掛け声と共に、《ワイルドベアー》に銃弾が、手裏剣が、魔法が飛んだ。
デンの男性恐怖症は最初から決めていました。
リアルのデンは女子高に通う女子高生です。
家族の男にも怖がってしまうほどの男性恐怖症で、ベルがネカマをしているのもデンに配慮した結果だったりします。
その事実を知らないのはデンのみだったり・・・




