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その瞳の色  作者: 梅花
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第27章


 

 クロスを残しトゥリーとリスターに追いついたジーンはクロスに進む先を聞かれた事を話し、どの様に説明するかを手短に話し合った…


 「…分かっていた事だ…打合せ通り第一段階の目的地までは話しておこう。当面の事はそこからだ。それでいいだろリス?」


 「…はい。簡単に納得するとは思いませんが取り決め通りに…」リスターは頷くと手綱を引き馬の速度を落とした。


 トゥリーとジーンもそれに習い後から急いでやってくるクロスを待った。




 


 「…ハァー……待ってって言ったのに聞こえなかったの?」クロスは3人にやっと追いつき息を切らせながら不満を訴えた。


 3人はクロスを黙って見つめ不思議そうに首を傾げるクロスにリスターが話しかけた。


 「…クロス、私達の向う先を伝えておこうと思ってね、でもここじゃいつ誰かが通りかかるとも限らないから少し道からそれて話をしよう。」


 クロスは3人のまじめな表情を見て静かに頷くとトゥリーの後をそっと付いて行った。





 「……クロス…これから向う場所について話しておく。」道から少し離れた場所に小さな小川が流れていた。4人はその傍で馬を下り水を飲ませるとトゥリーとジーンが視線を合わせジーンが頷き皆に座るようにと促していつに無く真剣な眼差しでクロスをを見つめると話し始めた……





 「昨夜トゥリーと話し合って決めた。これは決定事項だいいな?」ジーンは2人の目を見て話したがジッととくにクロスを見て頷くのを待った。


 


 クロスが3人の視線を感じてコクッと頷くとジーンが「よし」と呟きトゥリーを見た。



 

 トゥリーは皆を見回して荷物の中から地図を引っ張り出してくると皆が座る中心に広げた。


 


 「私達は今後ディアナ山脈沿いに北上しコーベデェイルの街を目指す。そしてそこからは…我々の国…カサ・エグランテリアに向う」トゥリーは静かに言うと地面に広げた地図を指し示した。


 「そんな!父さんと母さんを救出しに行くんじゃないの?なんでエルフの国なんかに!?」クロスはビックリして声を荒げた。


 「シィィィ!!静かにするんだクロス!そんな大きな声で言うんじゃない!!」怒ったかのようにジーンが声を潜めクロスの口を塞ぎ黙らせた。


 「ハァ…クロス…決定事項だといっただろう?」トゥリーは深く溜息をつき肩をすくめた。


 

 「いいか?大人しく聞けるなら続きを話そう…しかし口を挟むなら…有無を言わさず引きずって行く…どうする?大人しく聞くか、引きずられていくか?」ジーンはクロスの口を塞ぎ瞳を覗き込み2択を迫る。


 クロスはジーンに口を塞がれたまま目だけで皆を見てリスターを見つめると無言で頷かれた…モゴモゴと小さく唸った。


 「Yesか?」


 「モゴォ…」クロスは頷いた。

 

 「よし。いいだろう」ジーンはクロスから手を離すとニヤッと笑うとクロスを地面に座らせバンと背中を叩いた。


 「イタイ…」クロスは抑えられていた口元と叩かれた背中をさすり恨めしげにジーンを睨んだ。


 



 「…ふぅ…いいかな?今から話す事は極めて重要な事だ…心して聞いてくれ。」



 「もう知った事と思うがこの世界には君たちドラゴン族が存在する国が2カ国ある…一つはこの国ラ・レーヌ・オジェそしてもう一つがトラディスカント・ベルズ…」



 「この国…ラ・レーヌ・オジェには王であるドラゴン、12騎士団そして元老院…全ての生けるドラゴン達は何かしらの任務、責任を負ってこの国の為に仕えている……」


 「そしてかの国…トラディスカント・ベルズでは生ける健全なドラゴンが一体どの位居るのか…それは我々にも未知数だ…それだけ多い。」話し終えトゥリーはクロスの様子を見る…そして集中して耳を傾けている様子を見ると一つ頷きそして話を続ける…  



 「君達の父上はどちらの国に属しているのか?それは私達にも解らない…」


 「ただ解っている事はカージス殿は同属に襲われ攫われた。そして彼の意思で君たちを私達に託したのだ…私達は君たちをエグランテリアへ連れて行く。それはカージス殿と以前決めた事だ。事は君たちが思うほど簡単な事ではないのだよ……君たちのお父上はこの事を以前から予期していたんだ…」



 「君たちに出来る事は私達に従う事。それ以外の選択肢は無い。」トゥリーは溜息と共に話し終えると片手で顔を覆い俯いてしまった。


 



 トゥリーが話し終わると辺りは静寂に包まれた…ジーンが心配してクロスの顔を窺おうとするがクロスは俯きその表情を窺う事は出来ない。


 



 「…なら…ならどうやって父さん達を助けるんですか?」クロスは俯いたまま搾り出すように訴えた。


 「そうさな…カージス殿とサニー姉さんを攫った族がどちらからの者か解ればいい…どっちにしろ我等4人が当たって行けば救出出来るという問題ではないのだよ、国が…国が絡んでいる…この国ならば堂々と尋ねればいいがかの国であったら…」



 「まずはエルグランテリアに行き指示を仰がなくては…どうにも動きようが無い…まして今は君達を守るためにも国に帰らなくては…」トゥリーは今や遠くを見ながらクロスに答えるというよりも自身の考えを呟いているようであった…



 「…解りました…様は今すぐ父さんと母さんを助けに行く事は出来ないって事でしょ??僕一人が行って助け出す事も出来ない。お2人が父さんと話し合って決めている事に逆らう事もできやしない…なら僕は行くよ、エルフの国に…それが1番の近道なら…2人には迷惑を掛けてしまって申し訳ないけど…よろしくお願いします……」そう言うとクロスは立ち上がり2人に丁寧に頭を下げた。


 


 「……そんな今更他人行儀な真似やめろよ…」頭を下げられ一瞬言葉を失った様子のジーンがビックリして言うと赤い顔をしてクロスが顔を上げた。

 

 「そうだよクロス…私達は君たちの事を弟のように思っている…要らぬ礼はするんじゃない」トゥリーもそう言うとクロスの頭を撫でた。


 「…ありがとう…」クロスは照れくさそうに言うと視線を逸らした…



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