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その瞳の色  作者: 梅花
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第26話



 …3人の話し合いは夜更けまで続きリスターは明け方…朝日が昇る前にはぐっすりと眠るクロスの隣のベットにそっと身を沈めた…





 「コンコン…」


 「…リス?もう目覚めているか?出発しよう。クロスを起こして支度したら1階の食堂に来てくれ。」ジーンはリスター達の部屋のドアを軽くノックして小声で話しかけた。

もうすでに身支度を終えカーテン越しにそっと外の様子を伺っていたリスターが振り返りそっと人差し指を口元に立てるといまだベットで丸くなっているクロスに視線を向けた。

 

 「ハイ。」リスターも声を潜めて返事をするとジーンと頷き合い部屋を出て行くジーンの後ろ姿を見つめた…


 …半時もせず2人が身支度を終えて食堂に下りて行くとそこには昨日と同じ人間の姿に身をやつした2人が早い朝食をとっていた。


 「やあ2人とも遅かったね、我々は食事を終えたから君達もさっさと済ませて10分後には出掛けられる様に外に馬を用意しておきなさい。」不機嫌丸出しの我侭将校をまだ演じる様子を見てリスターはそっとため息をつきクロスの頭を掴むと一緒に深々とお辞儀をした。



 リスターとクロスは慌てて焼きたてのパンと熱々の野菜くずの入ったクリームスープをかき込むと急いで厩へと走って行った。


 10分後と言ったくせに20分は過ぎた頃宿屋の下僕に荷物を持たせた不機嫌顔トゥリーとジーンが2人の下にやってきた。リスターとクロスに下男が持ってきた荷物を馬に乗せる様指示しそれを終わるとトゥリーとジーンは馬に跨り合図もせずさっさと出発してしまった…。


 リスターとジーンは急いで下男に手間賃を渡し世話になったと挨拶をすると自分たちの馬に跨りご主人を追いかける従者の様にまだ夜が明けて間もない空の下出発した…




 リスターとクロスが急いで馬を走らせると村を出た少し先の木立の中に2人が隠れるように待っていた。


 「遅かったな、忘れ物はないか?急いでいくぞ。今日中にこの先の目的地まで進むんだ。」リスターとクロスにそう言うとトゥリーは馬を小走りにさせ林の中へと進んで行った…


 クロスはリスターがトゥリーを追う様に急いで行くのを見てから隣を行くジーンに不機嫌そうに話しかけた。


 「御偉い将校さんと可哀想な下僕はもう終わり?」クロスの問いかけにジーンは破顔するとさっと髪を掻き揚げいつもの白髪金目に戻した。


 「ああ、ゴッコはもうお終いさ。」ぐりぐりとクロスの頭を撫でるとニヤリと笑った。


 「あーよかった僕もう少しでトゥリーに噛み付くとこだったよ、気の毒な従者の気持ちがよく分かった。」そう言って瞳に手を翳すとクロスの瞳は新緑のようないつもの色に戻った。


先を歩く2人を見てクロスはそっと馬をジーンに寄せると小声で話しかけた。


 「ねえ、ジーン。僕まだ行き先を聞いてないんだけど…父さん達の居所は分かったの?そこへ向かっているの??」クロスは期待を込めてジーンを見上げた。


 「あ~それなんだが…いや、その…」困った様に頭を掻きながらジーンはクロスから身を離しあからさまな位言葉を濁しながら馬の歩調を速めた。

 

 「どういう事?ハッキリしてよ!」クロスも口調を強めジーンの後を追いながら詰問した。

 

 「いや~…おーいリスター!!」ジーンは困ってリスターに呼びかけると馬を走らせクロスを置いて行った。

 クロスは唖然として歩を止めてしまうと砂煙を上げ走り去るジーンの後ろをぽかんとした表情で見つめた。


 「はぁ?意味わかんない!?」クロスはブツブツと文句を零すと自分が置いていかれた事に気が付き馬を急かすと3人を追いかけた…


 「置いて行かれたし、意味わかんないし…ちょっと待ってよー!!」クロスは懸命に馬を走らせ先を行く3人に追い着こうとムキになった。



 「…イタ!!」頬をかすめた痛みにとっさに手をやると右目の直ぐ下あたりでチクッと痛みを感じ手を離した。

 「木の枝でこすっちゃったや…」呟きをこぼしクロスはチッと舌打ちをすると身を屈め先を急いだ。




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