第25話
3人は元の人成らざる者から人へと大きく変った姿でジーンの待つ村へと入っていった…
村人は青年将校が珍しいのか遠巻きにチロチロと3人の姿を窺った。リスターは従順な見習い兵士を装いながらも内心穏やかではなかった村人の視線が気になるのだ……
リスターはふんぞり返って3歩前を歩くトゥリーにそっと話しかける…
「若様、どうやら村人達は若様のお姿がもの珍しいらしく羨望の視線を送ってやまない様子ですね」リスターは主人の機嫌を取る従者のようだ…
「なぁに、見られたって減るもんじゃない。好きに見せてやんなさい」トゥリーは鼻歌を歌うようにさらっと言うと本当に口笛を吹きながらながらフラフラと歩いていく。
リスターはその言葉で安心する事もできず後ろをビクビクと若干挙動不審に歩くクロスを見てそっと溜息をついた…
3人がジーンとの約束の旅籠に到着した。トゥリーがジーンは何処だろうと見回すと店内は夕暮れ近いためか賑わいを見せ始めていた。
トゥリーは手近な開いているテーブルに乱暴に腰掛けるとリスターに座るよう身振りで示しクロスには麦芽酒と暖かいスープそしてこんがり焼いたベーコンを注文して来いと乱暴に銀貨を2、3枚投げてよこした。
クロスは投げられた銀貨を慌ててキャッチするとぺこりとお辞儀して高慢な態度のトゥリーに背を向けまるで従者がやるようにわざとなのか本心なのかブツブツと悪態をつきながら店主の元へ注文をしに行った。
クロスが居なくなるとトゥリーはリスターにそっと身を屈め唇を動かさずジーンとはこの旅籠で待ち合わせているから直に現れるだろうと呟いた。リスターは小さく頷くとカウンターで注文をしている容姿の変ったクロスを心配そうに見つめた。
暫くすると店主から渡された麦芽酒の3つのグラスを悪戦苦闘して持とうとしているクロスに黒髪の短髪の青年が話しかけているのが見えてリスターははっとして立ち上がろうとした…
椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がろうと手を突くとトゥリーがその腕をサッと握り殺気立つリスターに笑顔で1つ頷いた。はっとしたリスターはクロスのグラスを一緒に持ってやって来る黒髪の青年を落ち着いて見て見た。
満面の笑みのクロスと共にやってきたのは白髪を綺麗に黒く染め金色の瞳を黒く変えたジーンであった…
「やぁ、遅かったなトゥー随分待ったぞ?」黒髪黒目のジーンは笑顔で旧友に会ったかのごとくトゥリーに手を伸ばし立ち上がらせると肩を激しく叩いた。
「おお、ジッー待たせ済まなかったな。馬を盗まれて難儀していたんだ」トゥリーは叩かれた肩が痛かったのかちょっとさすりながら笑顔で握った手に力をこめて空々しい挨拶を返した。
「そうか、それは難儀だったな」手が痺れたのか握り方を握手から組み合うように変えて更に力を込め此方も笑顔で返した。
その2人の空気を察したのかリスターがサッと立ち上がりジーンに椅子を引き席を勧めるとサッと麦芽酒を渡し笑顔で頷いた。
「さあ、再会を祝して乾杯しようじゃないか」歌うようにトゥリーが言うとリスターとジーンがグラスを持ち乾杯した。クロスはグラスを持とうとしたがリスターにサッと取られ睨まれてしまうと身を縮め渡された水を大人しく飲んだ。
暫く4人?2人はでっち上げ話にまるで真実かのように花を咲かせ周囲の視線を感じなくなると酔っ払ったかのごとくジーンの取った部屋へと仲良く引き上げていった…
「意外と早かったじゃないか?」部屋に入り廊下に誰も居ない事を確認するとジーンが部屋の中央の椅子に腰掛けて怪訝そうな表情を向けた。
「ああ、その気になれば狼よりも早く走れる」ニヤッとジーンに笑いかけて椅子を暖炉の傍にもって行くとそこに腰掛けてリスターとクロスにも近くに座るように身振りで示した。
「それより準備は?明日にでももう此処を立ちたい」トゥリーが自分の髪を指で梳くと水が流れるようにいつのもトゥリーの姿に戻っていた。
「お前、人間に化けたつもりかも知れんが全然カモフラージュになってないぞ!目立ちすぎだお前達!特にお前で次はリス」少し語気を荒げてジーンが指を挿し指摘すると名指しされたリスターがビックリした表情になった。
「え!?私もですか?」リスターは短くなった髪に手をやり色を見ようとして長さが足りない事を思い出し不思議そうに身なりを見回した。
「まぁね、容姿まで変えるのはいかがな物かと思って、リスとクロスには瞳と髪の色以外手は加えていないから」しれっと言うとその話には興味無いとばかりにそっぽを向いた。
「ほーぉう。見目麗しのエルフ様はご自分の容姿を弄りたくは無かったと…今回は良いが次からは要らぬ注目を浴びないようその整った顔にも手を加えて頂きますですからね!」フンと鼻息荒く変な敬語で言うとジーンはへーへーと適当な返事をするトゥリーに一瞥をくれてクロスを手招きした。
ジーンに呼ばれて傍まで行くと突然強く抱きしめられクロスはビックリした。
「…大変だったな…心配してたんだ…ずっとお前達に何か遭ったんじゃないかって…無事でよかった…身体も心も…」ジーンはクロスを強く抱きしめながら背中をさすってやるとリスターの方をじっと見つめ強く頷いた。
「ジーン…ありがとう…」小さく鼻を啜りながらクロスが言うとジーンは身体を離しクロスの頭をクシャッと撫でながら破顔した。
「お前幾つになっても泣き虫だなぁ、まあ後は任せておけ俺達がいつだってついている」
「感謝します…父との約束を守って頂いて…」リスターがトゥリーとジーンに向って小さく頭を下げそっと言った…
礼を言われた2人は顔を見合わせ深刻な顔をするとジーンが小さく当たり前だと呟いた…
「さて、話はわかってる…明日は早い。リスターとクロスの部屋は隣だ、湯を使って早く寝ろ」ジーンはもう1度クロスの頭を撫でると笑顔で言った…
暫くするとリスターとクロスは大人しく指示に従い隣の部屋に行き寝支度をはじめた。
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コンコン…時計が日をまたぐ少し前リスターがトゥリーとジーンの部屋の扉を叩いた。
「リス、クロスはもう眠ったのか?」ジーンが声を潜めて訊ねる。
「ああ、寝息を確認してから来たよ…」リスターが言うとジーンはそっと扉を広げて中に招き入れた。
「リス、待っていたよ…ジーンとはあらかたの予定を話し合っていたんだが君との話をしない事には前にも進めなくてね…」火の弱くなった暖炉の前にはテーブルと椅子に長い足を組んで座るトゥリーの姿があった…
「遅くなって済みません、中々クロスが寝付かなかったもので…御2人に報告しなくてはならない事があります。これからの事を…」リスターは俯き悲しげな表情で呟く…
「…掛けなさい…私達も話さなければならない事があります…」
トゥリーの優しい声に促されリスターは椅子に腰掛ける…………
「これから何処へ向かう予定ですか?父からは2人に任せてあると伝えられています」
「ああ…まずは安全な場所にお前達を連れて行かなくてはならない…クロスは怒るだろうが…」
「それでカージス殿は犯人については目星は?」
「はい。父は近々襲撃があるやもと思っていたようです…しかしこんなに早く来るとは………」
「…で………………………・・・・・・・・・・・・」
最後はカメラがフェードアウトしていく感じでお願いします。
カメラは暖炉の前で腰掛ける3人から徐々に遠ざかりドアが閉まります。
そして次の章へ…
つたない文章でごめんなさい。何方かいい表現方法があったら教えてください(泣)