第23話
サブタイトルがうまい事思い浮かばないのでいっそ番号をふる事にしてしまいました(^^;
今更ですがお許しを・・・・
「トゥリー、どうした?」馬に乗り先を進むトゥリーが突然立ち止まり空を見上げているので後を追っていたジーンが話しかけた。
「何か来る…」トゥリーはジーンの疑問に対し短く答えると嵐の前触れの様に黒い雲に覆われた空を睨んだ・・・
「何?」ジーンはトゥリーの短い返答に対しその視線の先を見上げ神経を集中した。
「・・・大丈夫だ、鳥だよ・・・あ、でもあの鳥!」そう言って指差した先の鳥を凝視しトゥリーは指を口にあてピュ―と長い口笛を吹いた。
「何だ??」ジーンは訳がわからないままトゥリーの口笛に答え此方に向って降下してくる白い鳥を見つめた。
鳥は2人の頭上まで急降下すると急に翼を広げバサバサと羽ばたきスピードを落としジーンの見つめる前でトゥリーの差し出した腕に器用にとまった…
「こいつは何だ?」ジーンはトゥリーの腕にとまり可愛らしく右足を差し出している白い鳩を指差し訊ねた。
「伝書鳩だよ、ちょっと待って」トゥリーはジーンの疑問にさらっと答え鳩の前足に括りつけられた紙を外し小さな巻物を伸ばすとその内容に見入っている。
「誰からだ?」ジーンはトゥリーの手元の小さな紙切れを覗き込もうと馬を寄せた。
「ちょっと近くてうざい」そう言ってトゥリーはジーンの寄せてきた頭を押し返した。
「ナンだよ、うざいって!ってか内容は何で誰からか早く言えよ!」う~と唸りながら金色の瞳を細めてトゥリーを睨み付けた。
バサバサバサ!!トゥリーの肩にとまって羽を整えていた鳩が2人の頭上に羽ばたいた。
「ああ、待って今返事を書いて君に託すから」そう言いながらトゥリーは馬の脇腹に括りつけられた積荷をゴソゴソ漁り炭になった木片を取り出すと紙切れになにやら走り書きし空に舞った鳩を優しく呼んだ。
鳩はジーンの方を警戒して中々降りてこない・・・
「ジーンお前の強面のせいで鳩が寄って来ないじゃないか!ちょっとあっちに離れててくれ!」トゥリーはジーンを睨みつけ鳩に優しく声を掛けた。
ジーンはッケと言ってブチブチ呟きながらホンの少し離れてトゥリーが鳩の足に手紙を括りつけて空に放す様子を見ていた。
「で?そろそろ話しては貰えませんかね?こちとらあまり気が長い方では御座いませんので」吐き捨てる様に言い自分に近付いてきたトゥリーを軽く睨んだ。
「ジーン…カージス殿が攫われた。サニー姉さんも一緒だ。あの子達があの場所で待っている」トゥリーの予期せぬ言葉にジーンはハッと言葉を失い真剣な眼差しでトゥリーを見つめた。
「…急ごう・・・幸い村までもう直ぐだ…お前が先に行け馬より早い」
トゥリーは馬からひらりと下りると積荷から必要な荷物を取り出し1つに纏めながらジーンに話しかけた。
「ジーン、悪いが先に行く、その場でお前を待ったほうが良いか?」ジーンはそう言うと馬から降りトゥリーの馬の手綱を受け取った。
「…イヤ、その場に留まるより動いた方がいい…そうだな…先の町のコルダナの宿で待ち合せよう。俺は必要な物を揃えて待っている。」ジーンはそう言ってトゥリーの肩を叩いた。
「解った…じゃあ2日後に町で」そう言うと2人は荒っぽく抱き合いお互いの背中を叩いた。
「…2人を頼むぞ。」
「解っている。」
短い言葉を交すとトゥリーはジーンに背を向け走り出した。あっという間に森の木々に紛れて見えなくなったその背中を見送りジーンも馬に跨り約束の町へと駆け出した。
2人は2日目の野宿に向け煮炊きの為の小枝を拾いに直ぐ裏の森の中を静かに歩いていた―――
「兄さん、もうこれ位で良いかな?」クロスは小枝を蔓で纏めた束を5つリスターに見せながら訊ねた。
「…ああ、もう十分だろう…戻ろう」リスターは自分の集めた束と一緒に持つとクロスの背中を押し野営地へと戻った…
2人は言葉少なめに煮炊きを始める。クロスは湖に水を汲みに行きリスターは竈を整え火打ち石で火を起す…クロスの持ってきた水を使いもうお馴染みとなった押し麦の粥を作る。
クロスは押し麦の粥を見ながら兄に聞えないようにそっと溜息を付き小枝を集める際に見つけたきのこを夕食に加えてもらおうと見せに行った。
リスターはクロスの持ってきたきのこから食べられる物を選別し器用にちぎり粥の中に入れ味を調えた。
クロスは今日はちょっと粥の味が違うのを見て少しだけ嬉しくなると岩場に干していた毛布を取ってきて2人が座る石の上にそっと掛けた。
「兄さん、トゥリーもジーンも後どれ位で来るかな?」クロスは粥を啜りながら訊ねた。
「そうだな…どうだろう?早くて後2日か3日か…暫くは待つしかない。」リスターはクロスに優しく微笑み頭をクシャットなでた。
「そうか…早く来てくれると良いね」クロスもリスターに笑いかけでもこのお粥は飽きてきたと言って笑わせた。
「…神様どうか父さんと母さんが無事でありますように…」クロスは満月の月を見つめ祈りの言葉を呟いた…
リスターはクロスと同じ月を見上げながら顔を歪め早く眠ろうとだけ呟いてクロスに背を向けてしまった…クロスの心は乱れ目頭が熱くなるのを感じた・・・リスターに悟られまいと涙を急いで擦るとお休みなさいと言って背を向けて静かになった・・・
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クロスから規則的な寝息が聞こえ出して少し経った頃リスターはそっと起き上がりクロスが気づいていない事を確認するとそっと寝床を後にした…
野営地から少し離れた湖のホトリデリスターはエルフの様に見える秀麗な顔を歪めて湖面を睨みつける…一つ大きな溜息をつくと目を瞑り両手を広げ意識の糸を広げ伸ばしていく…
リスターの意識は風に乗り鳥の様に周辺を彷徨い目的の物を探す――――
―――――――そう遠くないはず…リスターは更に意識を伸ばすために更に集中する・・・・・・
―――――――いた!そう思った瞬間広範囲に伸ばした意識の糸をその一点に纏め飛ばす・・・
トゥリーは飛ぶように走り目的の湖を目指していた…あの日伝書を受け取ってから飲食を極力押さえ走り続けていたのだ…。
後もう少し、そう思って木々の枝を使い勢いをつけてジャンプし周辺を見渡すと目的の湖が遠くに見えた・・・地面に着地し走り出そうとした瞬間何かが迫ってくる気配を感じ地面に身を伏せ気配を消し息を止めた。
息を殺し集中するとその気配が見知った物である事に気が付き安堵の溜息をついた。
その気配が自分の意識に触れてくるのを感じると息を整えその青白く光る幻像に眉を顰めた。