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その瞳の色  作者: 梅花
19/29

逃げろ

 

 …村長は心配に駆られ老体に鞭を打ちながら走った…カージスの家に向かって…


 何故今頃?何故居場所が分ってしまったのか?村長の頭の中はパニックだった…とにかくカージスに知らせ家族を安全な場所に向かわせなくては…村長は必死だった…急いで駆けつけるとカージスの家からは夕食の準備中なのか芳しい匂いとサニーが台所に居る姿が窓から垣間見えた。


 村長は玄関を訊ねようとお思った…しかし寸での所で思い直すとそっと木立伝いに移動し台所の勝手口へと回った…。もしかしたらもう見張られているやも…村長ははやる気持ちを抑えるとそっと勝手口をノックした。



コンコン…「サン忙しい時間にすまんわしじゃ…すまんが静かに開けてくれ…誰にも気付かれん様に。」


 サニーは忙しい時間の突然の来訪者にビックリしたが村長の只ならぬ様子に小さく頷くとそっと扉を開け村長を中に通した…


「こんな時間すまんしかしカージスに火急の用があるんじゃ、すまぬが直ぐに家族を全員集めてくれ。」村長は家の中に入ると背後を確認して扉を閉め台所の窓という窓のカーテンを閉めた。


「…はい。ですがリスとクロスが裏山の湖で…あの…」サニーはどうしたものかと言葉を濁した。


「お前達の秘密ならすべて知っておる2人は其処ではないかと思って既に他のものを其処に向かわせておる…念のため山中で連絡が来るのを待つようにとな…。」


「…分りました。」サニーは頷くと書斎に居るであろう夫を呼びに急いで向かった…


 はぁ…小さく溜息をつくと村長はきっちんの椅子に座ると2人に連絡を頼んだジェイが直ぐに向かってくれる事を願った…


 慌てた様子でカージスとサニーが台所に現れた。


「村長?火急の用事とは?」カージスは緊張の面持ちで村長に詰め寄った…


「恐れていたことが起きた…カージス酒屋が知らせてくれた…此処がばれた様じゃ…確信は無いが金髪で青めの男を探しているそうじゃ…逃げろ!!暫く姿を隠せ!」


「村長…分りました。」「サン、リスとクロスは湖か?」カージスは素早く頷くとサニーに向き直った。


「ええ…夕食まで戻らないわ。」サニーは目に見えてうろたえた表情で頷く。


「あの子達にはジェイが知らせてくれたはずじゃ、怪しまれんように妻にジェイを伝言に使うように言付けた…今頃は2人に合流して事の次第を伝えておるじゃろう…2人とは後出会える、さぁ早く行くんじゃ!!」


 村長の言葉にカージスとサンは力強く頷くと村長を家から見送り直ぐに取る物もとりあえず家を出て行く準備をした…


「サン!早くするんだ!急がなくては村長の折角の忠告が無駄になる!」


「ええ、でももしも戻れなかった時の事を思うと…」サニーは大きなバックを抱え家の中をキョロキョロ見回す…


「体さえ無事なら何処でだってまたやり直しが利く!行くぞ!!」


「あなた…あの子達は大丈夫かしら?」サニーはカージスに手を引かれながら不安げに夫を見上げる。


「村長がついてる、まずは此処に居る事の方が危険だ!」カージスはサニーの手を引き玄関の扉を開いた…


 




…その時月の月光に照らされ逆光にになった玄関に一人の男が佇んでいた…





「…こんな時間にお出かけですか?そんな荷物まで持って…どちらへ?」満月のに照らされ顔の見えない男がニヤリと笑った…


「お久しぶりです。隊長?」カージスが暗闇に慣れてきた瞳で見つめる相手はニヤリと笑ったままカージスに近づいてきた…


「お、お前は…?」カージスはサニーを背に庇う様に後ずさると男と正面から向き合った…


「おや…お忘れですか?寂しいですね…アラン国王がご健在だった頃わが皇帝陛下との戦で何度と無く剣を交えましたが?」男はまた笑うと剣を引き抜きカージスの前に構える。


「無駄な抵抗などせず私と一緒に来てもらおうか?カージス閣下…?」


 カージスはチッと舌打ちするとサニーを屋内へ逃がそうと手を離し入り口を自分の体で塞いだ。


「おやおや家族を守られるのですか?貴方も相変わらずだ…しかし残念。私が一人で来ているとお思いですか?」男が剣を構えたまま薄く微笑むと口笛を吹いた…


「キャー!!!!!!」

 カージスが屋内に逃がした妻の悲鳴がこだまする…カージスがはっと振り返った時にはもうサニーは怪しい男に後ろから羽交い絞めにされ喉元に短剣を当てられていた…


「クソッ…」カージスは歯軋りすると腰の剣を引き抜きサニーを掴む男に向かって行った。


 カージスが男に剣を振り下ろすとサニーを掴んでいた手を離しドンッと手荒く突き飛ばすとカージスと剣を交えた。


「サン!逃げろ!」カージスはサニーにそう叫ぶと崩れ落ちたサニーから少し離れ歯を食いしばると3人の男を相手に激しく剣をぶつけた。


 サニーはとっさに立ち上がろうとしたが腰が抜けたのか立ち上がることが出来ない。少しでも逃げようと這ってその場から離れようとした…


「やれやれ…お前達相手をしてやれ…くれぐれも殺すなよ?」言うと必死で逃げようとするサニーの方に歩み寄り逃げられない様にスカートを踏んで動きを封じるとおびえた表情で振り返るサニーの腕を掴み乱暴に引き上げた。


「やめろ!妻には手を出すな!妻は関係ない!!」カージスは3人の男達に囲まれ身動きが出来なくなっていた。


「私一人の命で十分だろう?言う通りにする。だから妻から手を離せ!!」カージスは叫ぶと剣を下ろし手下の男に素直に捕まった…


「…あなた……。」


 一人の男に乱暴に後ろ手で縛られると背後から蹴られその場に跪かされた…グウッと唸り下を俯いていると髪を掴まれ上を向かされた。


「それで…お子さん達は何処ですか?」カージスの髪を掴み上げ無理やり目を合わせながら赤銅色の瞳の男が尋ねる。


「子供?そんな者は居ない。さあ早く妻を放してくれ!」カージスは白を切ると妻の手首にロープを巻く男に目をやりながら叫ぶ。


「私がそんなに甘い男に見えますか?これでも100年以上皇帝に仕える赤銅色のドラゴンですよ?」クックッと笑うと部下の一人に連れて行けと叫んだ。


「やめろ!私達に子供なんて居ない!妻はただの人間だ!私だけを連れて行けばいいはずだろう?」カージスは食い下がり半ば拝むように目の前の男を見上げた。


「…貴方は素直じゃない…この人はいわば保険です。貴方が子供達の居場所を吐かないのならこの方に聞くまでだ。」親指でサニーを指差すとサニーの腕を縛るロープを持った部下がサニーの胸に剣をかざす。


「さあ、奥さん…貴女にはお子さんが居ますよね…2人いや1人は別腹かな?」ニヤリと笑いサニーの腹に剣を当てポンポンと叩く。


「やめろ!子供なんて居ない!!」カージスは叫ぶと縛られたまま立ち上がろうとした。すると後ろから蹴られ再度地面に突っ伏した。


「イヤ!あなた!!」サニーは叫ぶと自分を縛り上げる男と剣を素早く見ると剣の上に自らの体を預けた…


 男は突然のことに驚き自分の剣に覆い被さったサニーの重みでよろけた。


「何をする!!」サニーの体を引き上げる。


「サニー!!!!」カージスは引き上げられたサニーの左脇腹がジンワリと黒い色に染まって行くのを見て悲鳴のように名前を叫んだ!


「クソッこのアマが!!」赤銅色の瞳の男が悪態をつきサニーの元に行くと気を失っているサニーの髪を掴み無理やり立たせると傷の具合を調べ部下に連れて行け!と命令した。


「…カージスお前がこのまましらをつき続けるならあの女は助からんぞ!!お前も来い!」赤銅色の瞳の男は怒りで身を震わせながらカージスの髪を掴み立ち上がらせると引きずるようにその場を後にした……



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