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その瞳の色  作者: 梅花
18/29

追っ手

 カツンカツン……


 石で出来た硬い廊下に革靴の音が木霊する……


 コンコン…


「閣下、失礼します。」その者は部屋からの返事を待たずして室内へと身を滑らすように入っていく…


「ヴェルトか…どうした?」


「夜分にすみません…閣下、遂に詳しい場所を突き止めました。」


「此処より東南、ニュークスの更に先にある村ルチェッタと呼ばれる村です。」


「…そうか…追っ手は?既に手配したのであろう?」


「御意…情報を入手後配下の者を向かわせました。今頃は先発に連絡して合流している頃と思われます。」ヴェルトはニヤリと微笑み閣下と呼ぶものに軽く頭を下げる。


「で、あるか…では私もそちらへ向かおう…この事を陛下には?」


「いえ、必要は無いものと思いましたので…かの国の者に報告いたしますか?」ヴェルトは怪訝そうに相手を見えげる。


「否、必要ない。私が皇帝に直接引き渡せばよい事だ。もう下がれ、この事はくれぐれも…」


「はっ、分っております…では私は持ち場に戻ります。何か御座いましたらいつもの方法でご連絡ください。」ヴェルトはサッとお辞儀をするとくるりと背を向けするりと扉を抜けていった…


 …遂にこの時を迎えたか…14年長かった…今まで巧妙に存在を消していたのに何故今頃になってこうもあからさまに姿を現したのか…?まあ良い。おかけで物事が皇帝陛下の意のままとなろう。


「ハハハ…」男は高らかに笑うと小雨の降るベランダへと出て行った。


「…ッチ…うっとおしい雨だ。」そう言うと男はマントをサッと翻し耳の上部から美しいルビーの付いたピアスを外すと一瞬にして赤銅色の瞳と同じドラゴンへと姿を変えた。



 ッチとドラゴンは舌打ちをして大きな翼を広げ1,2度大きく翼を上下させそのままベランダより飛び立っていった…ルチェッタ村を目指して…



******



 追っ手達は夕方、各家庭では主婦達が夕食準備に終われる頃村の外れに集まっていた…全身黒ずくめ傍からみてもその姿は異様でこの村にはえらく不釣合いであった…男達は3人の男だけが別行動を取りこの村では数少ない酒屋へと入っていった…


 その店の看板にはナミナミと注がれたビールジョッキとよく焼けた肉の絵が描いてあり容易に其処が飲み屋であることを想像させていた。店内より漏れる光と早々に酔っ払った村人の声が戸口より零れ男達は店の前で一度足を止めると目を合わせ頷き店内へと入って行った…



「…いらっしゃい。」給仕をする若い娘が振り向きいつもの様に明るく客を迎えたが相手が見知らぬ黒ずくめの男達であった為声は尻すぼみとなり次の言葉が出てこなかった…


「やあ、エールをピッチャーで頼む、それと腹ペコなんだ、その暖炉で焼けたベーコンを持ってきてくれ。」1人の男が格好とは裏腹に明るい声で注文すると3人は村人達が座るテーブルの直ぐ傍に座った。


「はい、ただいま…」娘は明るい声にちょっと不信感を抱きつつもグラスとビールを取りにカウンターへと向かった…


「や~やっと飯にありつけるな~。ニュークスの親方のせいで余計な仕事を押し付けられちまったよ…ったく…俺らは今日中に家に帰れるかな?」


「ま~そうぼやくなよ、あったかい飯も食えることだし、ちょっとした小遣い稼ぎが出来たんだ…こんなお使い軽いもんだ!」


「ほんとに、まずはビールで渇いた喉を潤そうぜ!話はそれからってもんだ!!」


 3人は陽気に言うと給仕の娘からビールを受け取り娘をからかう事も忘れず逃げて行こうとする娘の手を捕まえるとビールを注がせ卑猥な言葉を浴びせお尻をぽんと軽く叩くと嬉しそうに笑い声を上げ逃げていく娘を尻目に高くグラスを掲げ激しく乾杯すると一気に飲み干した。


「~かぁうまいぜ!生き返る!!」


「あ~こんな山奥にも旨いエールがあるもんだ!」


「それより此処に居る奴らに聞いて仕事を終わらせちまおう!」


「ああ、そうだな…後は親方に頼まれた書類を渡しちまってほろ酔い気分で帰れるってもんだからな!」男は陽気に言うと隣の席でビールを飲む村人らしき爺さんに声を掛けた。


「なあ、おいじーさん!この村に青い目をした男は居ないか?名前は…え~っと何だっけ?まあとりあえず青い目した金髪の野郎だ!おれたちゃニュークスのお偉いさんにそいつに渡すようにって書類を預かってきたんだ!」


「青い目?この村で青い目って言ったら牧師様のことだぁ!あの方以外にこの村にゃ青い目のお人なんかいやしねぇ!」爺さんはビールをちびちびやりながら歯の抜けた口でしゃべった。


「そうかい!で何処に行ったらその牧師様に会えるんだい?」


「牧師様んちは村の東の奥に行った緑色の屋根の大きなお宅だ!この道でて右にまっすぐ行ったらそっから東に向かって行けばすぐさ!」爺さんは酔っ払ってるのか大きな声で叫ぶように言った。


「そうかい!ありがとうよ!!おかげでさっさと仕事を済ませて家に帰れるってもんだ!」男は大声で爺さんに向かって礼を述べると店の親父が持ってきたベーコンに食らいついた。


 …そうして1時間とちょっとすると爺さんが帰っていき男達はそれから半時間ほど居座ると金を置いてありがとうよ!と叫んで出て行った…



*****



 …店の娘は走っていた。何かおかしい、こんな時間に牧師様を尋ねてくるなんて…今までそんな事無かった…なんだかやな予感がする…村長様に知らせなきゃ!!



コンコン…


「村長様夜分にすみません、Dog & Duckのロッサです!」


「…どうしたんだい?こんな時間に店はかきいれどきじゃろうに?」村長はビックリしながら扉を開けると玄関に佇む赤毛の娘を見下ろした。


「…知らせるべきか迷ったんですが…父さんに言われて急いできました。」娘は辺りを気にしている様子できょろきょろと落ち着きが無かった…


「…入りなさい。」村長は娘を家に招きいれると辺りを見回してから扉を閉めた。


「知らせる事とはなんだい?」村長は娘をおちつかせようと優しい声を掛けると微笑みかけた。


「はい、あの…さっき半時ほど前に見慣れない3人の黒い服の男達がやって来て牧師様に用事があるとかで店にやって来たんです。トーマス爺さんにこの村に青い目の金髪の男がいるかって尋ねてました。そしたらトーマス爺さんそれは牧師様の事だって教えてしまって…」ロッサは一気に話してしまうと心配そうに村長を見上げた。


「…よく分ったよロッサ、牧師様には私から伝えておくから店に戻りなさい。君が居なくなったら怪しまれるかも知れない…」村長は娘の肩を叩くと落ち着かせようと気を使った…


「…はい。分りました…じゃあ私はこれで。」ロッサはまだ不安であったが自分が居ないことで怪しまれるやもと思うと急いで店へ戻って行った…



 

 …どうしたものか…もしや気付かれたのか?村長は不安に駆られると妻に教会に行って来ると告げて足早にカージスの元へと向かった…



******



 3人の男達は先程の陽気さなど微塵も感じさせない様子で他の待ち伏せをしていた男達と合流しある人物が訪れるのを待った…


 村の外れの森の中で小さな火を起こしその人物を待った…突然鳥達がギャアギャアと騒ぎながら飛び立ち木の枝が折れる音と共に小さな火の傍に赤銅色のドラゴンが優雅に舞い降りてきた…


 男達は居住まいを正すと焚き火をすばやく消しドラゴンが元の姿に戻るのを待った…ドラゴンが居た所に黒髪に白いものが混じり始めた黒い鎧を身に纏った男が耳にピアスをしながらマントを翻し男達に向き合った…


「…それで?」男は男達を見回すと低い声でリーダー格の男に話しかけた。


「はっ!家は見つけました。所在も確認済みです。直ぐ向かわれますか?」


「もちろんだ…だが必ず全員生け捕りにせよ。気をつけろ小僧も居るはずだ、姿を変えられて逃げられたら面倒なことになる。家の周囲を取り囲み逃げ道を封じ女を人質にしろ。女は暴れたら多少手荒で構わん目的は子供だ!14,5歳位だ見ればわかる傷はつけるな必ず生きたまま陛下の下に連れて行くんだ!」


「御意!」男達は跪き頭を下げると夜の闇の中へと姿を消して行った…


 男は配下の者達が闇に紛れて行ったのを確認するとニヤリと笑い男達の後を追った……



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