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その瞳の色  作者: 梅花
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悲痛の別れ

村の若いカップルのための結婚式までサレットは必要以上に教会を訪れ時を見計らってはリスターの傍に行き何か手伝うことはないかと甲斐甲斐しく動き回った・・・


挙式当日サレットはどうやってその役に納まったのかフラワーガールの役をやり厳かな顔をしてバージンロードに今朝摘んだばかりの白いバラの花びらを撒いて入場した。


神父の後ろに控えるリスターから遠く離れない場所に陣取りウットリと式の進行をお手伝いするリスターを眺めていた・・・


サレットは新郎新婦に自分とリスターの姿を重ね幸せそうにウットリと見つめていた・・・


式が終わりブーケトスに若い娘たちが群がりブーケは何分割にも割られ娘たちは嬉しそうにパーティー会場へと向かった・・・サレットもセーラもブーケのおこぼれをもらいウキウキしていたがお互いが持っている事に気がつくとキッとお互いをにらみつけた・・・ 


「サレットさんでしたっけ?こんにちわ私クロスのクラスメイトのセーラって言います。」セーラはこれでもかと言わんばかりの微笑を浮かべてサレットに白々しく挨拶した。


「・・・初めましてね、セーラさん?クロスと同い年なのかしら?若々しくて可愛らしいわね」サレットは見下すように上から下までじろじろ眺めた。


「・・・有難うございます。サレットさんもブーケのお花もらったんですね。」セーラは負けるものかとサレットのあからさまな視線に怖気る事無くニコニコと笑った。


「・・・ああ、これ?・・・まぁブーケのお花を欲しがるのは女の性じゃなくって?」

「まぁ、貴女みたいなお嬢さんにはまだ早すぎるように思うけれど?」サレットはフフフと零れた笑いを手で隠しながら明らかに嘲笑した・・・


「・・・ええそうかも知れませんわね、サレットさんみたいなお年になると焦って来る事もある出しょうから。」

「まだまだ若くてよかったですぅ。」ウフフと可愛らしく笑ってしてやったりと微笑む。


「・・・」サレットはあからさまに年増扱いされた事に怒りセーラを睨みつけた。


「そう言えばサレットさんはこの村に滞在されるのも後1週間位でしたよね?都に戻られてもどうぞお元気で、たまには此処にも遊びに来てくださいね、素敵な恋人を連れて。」セーラはそれだけ言うと嬉しそうにそれじゃあ。と軽やかに去って行った・・・


「~!!!!」サレットは怒りで顔を真っ赤にしてブツブツとセーラの事を罵った。


なんて礼儀知らずで年上を敬わない態度かしら!?だから田舎娘は嫌なのよ!!躾なんて成ってないし・・・それにあの紫の瞳!!人魚の血筋だって一発でわかるわ!だから人魚は嫌いなのよ!!


サレットはどしどしと良家の子女にはあるまじき足音を立てながら村長宅へと帰って行った・・・


******


セーラが披露宴会場に戻るといつもよりも正装に身を包んだリスターとクロスが楽しげに話をしていた。


「あ!セーラ!!こっちこっち!!」リスターの凛々しい姿にウットリと見入っているとクロスがこちらに気がついて声をかけてくれた。

もじもじしながらも嬉しそうに頬を染めてセーラは2人の下に来るとリスターを見上げた。


「あの、リス?今日はとっても素敵です。」俯き加減にもじもじとセーラが勇気を出して告げると一瞬ビックリした顔をしたが嬉しそうにリスターは有難うと言ってセーラの頭をポンポンと撫でた。


「・・・セーラの今日の格好も可愛いよね?」クロスがセーラを後押しするようにリスターに尋ねるとリスターも優しく微笑んでとっても可愛いよと言ってくれた。


「・・・。」セーラは嬉しいのと恥ずかしいので頬を染めながら消え入りそうな声で有難う。と囁いた。


リスターは再度セーラの頭を撫でるとクロスに酒は飲むなよ!と厳しい顔を向け会場の立食テーブルを厳しい目で睨んだ。

分けが分らずそっちに目をやると今正にシャンパングラスに手を伸ばしているアンディーとルーの姿があった・・・


リスターは

アンディー!ルー!!と叫ぶと2人の下に行き此処までは聞えないものの2人に説教をしているのは見て取れた・・・


2人は散々怒られ、両親に言うぞと脅しをかけられシュンとした表情でセーラとクロスの元にやってきた。


「リスターは背中にも目がついテンのか?母ちゃんより怖かったぜ。」アンディーはリスターの姿が見えないかキョロキョロ辺りを見回した。


「アンディーが悪いでしょ?お酒なんて飲もうとするから!」セーラも腕を組みアンディーとルーに更に説教をしようとした。


そもそもね!と始めたので見かねたクロスがまあまあと仲裁に入り皆で何があるか見に言って腹ごしらえをしようと誘った・・・。


*******



一日がリスターと話せずに過ぎていく・・・朝の挨拶すら出来ない事もある・・・後6日・後5日・・・日は無常にも過ぎていく・・・サレットは自分の気持ちにもう確信を抱いていた。

リスターは都で出会ったどんな男性よりも優雅で魅力的だ・・・それにあの瞳・・・きっとエルフの血が入っているのだろう・・・よく晴れた空のように美しく瞳の中心は其れよも濃くその周りには白い星が輝いているように見える・・・サレットはその日何度と付いた深いため息を吐く・・・


リスターに会ってしまったら都のどんなに位の高い貴族であろうときっとかすんで見えるでしょう・・・お父様にお母様に何て言えばいいのでしょう?ああ~きっとその内お父様が見つけてくる何処かの貴族の家に嫁がされてしまう・・・ちょっと前ならそれでも良いと思ってたでも・・・今となっては・・・サレットは膝を抱き自分の悲しい境遇を思って涙を流した・・・


******



どうする事も出来ずについにその日はやって来た・・・


昼前にはすべての荷物をまとめ終わり迎えの馬車がやってくるのを待つばかりであった・・・応接間のソファの上で膝を抱えさめざめと涙を流す孫娘をこの村が気に入って離れがたくなったと勘違いをする村長は又着たら良いじゃないかと孫娘の肩を叩き慰めその様子を悲しげに眺める村長夫人はどうしてあげる事も出来ないわが身を攻めていた・・・


コンコンコン・・・


ついに迎えの馬車は遣って来てサレットの荷物は来たときと同じように迅速に積み込まれあっという間にサレットを乗せるだけとなった・・・


「お爺ちゃん、お婆ちゃんお世話になりました。」来たときとはまったく違う態度に村長夫妻も別れの悲しみの涙を流し必ず又来るようにと言って見送った・・・


サレットはハラハラと涙を流しながら有難う。また直ぐ来るわと言って意を決したように馬車に乗り込むと出してと弱弱しく指示して窓から身を乗り出し祖父母に手を振った・・・・


・・・サレットは暫くの間過ごした村を眺めようと窓から身を乗り出し過ぎていく風景を眺めていた。

すると村長の家に続く道にリスターとクロスの姿を見て慌てて御者に止めて!!と叫んだ。

馬車はスピードに乗ったばかりで中々止まらなかったがちょうどリスター兄弟の姿が良く見える場所で砂埃を上げながら停車した。


「リスター!」サレットは良く見えるようにと窓から身を乗り出しリスターを呼んだ。


「サレット・・・もう出発されていたんですね、お別れの挨拶をしようと伺うつもりだったのですが・・・」リスターは会えてよかったですといつもと変わらない笑顔で微笑んだ。


「・・・」サレットはもう会えないと思っていた人に会えた喜びが声に出せなかった。


「それでは御者の方を長く引き止めるわけにはいきませんので・・・どうぞ道中お気をつけて、都に行ってもお元気でいてください。」と微笑み握手をしようと手を差し伸べた。


「・・・っつ。」サレットはぽろぽろと涙を流しリスターの手を握るとぐっと握りはい。お元気でと呟いた・・・


リスターが手を離そうとするとその手をぐっと引き寄せサレットはリスターの頬にそっと唇をかすめる程度のキスをした。

ビックリしたリスターがパッとサレットの顔を見上げるとサレットは顔を真っ赤にして瞳を潤ませると視線をそらした。


「・・・申し訳ありません。で、でも・・・リスをずっとお慕いしておりました。この気持ちを伝えぬまま都に帰る事は・・・次は何時お逢いできるか分りません。どうか私の事を忘れないでください。」・・・そう苦しそうに言うと御者に出してと泣きながら伝えリスターから顔を隠してしまった・・・


・・・唖然として見送るリスターとクロス・・・


「兄さん・・・凄い人に思われたね・・・」クロスはサレットの馬車があげる砂埃を目で追いながらクスッと笑うとそう変わらなくなった兄の肩を叩いた・・・


「・・・ああ・・・そうだね。」リスターも目で追っていたがそっとサレットに触れられた頬を撫でると優しく微笑んだ。


クロスに肩を叩かれると笑いながら、

「さあ、帰ろうか…皆には内緒だぞ?」と言ってクロスの頭をクシャっと撫でると肩を組み2人は元来た道を戻っていった……。




サレットさん無事に帰られました。

しかし強烈な彼女…まだもう少し登場します。

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