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その瞳の色  作者: 梅花
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出会い

サレットは朝早くに起こされ不機嫌そうに祖父を見上げ田舎の学校なんて行かないわよ!と怒鳴ると布団にもぐり祖父にこれ以上はなす切っ掛けを与えなかった。


村長はそんなサレットの様子を見ると諦めた様にため息をつき学校に行けば新しい友達も出来て楽しいよと話しかけてみた。しかし何の反応も無いので朝食は準備できているからねと優しくサレットをポンポンとたたくと部屋を後にした・・・




コンコンコン・・・


朝早くから村長の家を訪ねる者があった・・・


「誰かな?」言って村長が扉を開ける。


「おはようございます。村長。」


キラキラと輝く瞳で村長を見返すリスターの姿があった・・・


「リス…どうしたねこんな早くから?」村長は思わぬ訪問者にビックリしながらも朝ごはんは食べたかね?と言いながら家の中に招き入れた。


「ハイ。有難うございます。」リスターは丁寧に礼を言って招かれた室内に入るとソファにゆっくりと腰掛けた。


「実は、村長の御孫さんが今日から学校だと言うことを父から聞きまして・・・初めての場所で不安も感じられていらっしゃるやと思いよろしかったら学校までお供しようと思いましてお邪魔させていただきました・・・。」

リスターは少し恥ずかしそうに笑うと実は父に言われて来たのですがと付け加えた・・・。


「そうかね、わざわざ有難う。」村長は嬉しそうに礼を言うとしかし困ったように顔をゆがめる・・・。



「リス、わざわざ有難いのだが・・・実は孫娘のサレットが学校に行きたくないと言って起きてこないのじゃよ。」


「何度か説得したんじゃが…あの子は都会の育ちでなんと言うか・・・恥ずかしい事なんじゃが貴族の娘さんの様に振舞う所があるんじゃよ・・・。」



「そうですか・・・まだベットの中ですか?」リスターも困ってしまいどうしようかと村長を見上げて2人で思案する・・・



トントントン・・・静かに階段を下りてくる足音がする・・・



「おばあちゃん、もう目が覚めちゃったから朝ごはん頂戴。まったくお爺ちゃんのせいでせっかくゆっくり寝るつもりだったのにとんだ早起きよ!」サレットが目が覚めてしまったようでブツブツ言いながら起きてきた。


村長とリスターは顔を見合わせて頷くと村長はサレットに声をかけにキッチンへと向かった・・・



「サレット、目が覚めたのかい?」村長が優しげに問いかける声がする・・・


「お爺ちゃんのせいで目が覚めちゃったのよ!」キツク言い返すサレット。


リスターはサレットの声を聞いて自分とあまり年が違わないのかなあ?と思いそっと耳を澄ます。


「・・・・・・」キッチンで言い争いに似た声がする。


思ったよりも気が強そうだな…此処は一旦帰ったほうがいいかな?また放課後訪ねてきてその時に少しサレットと話をしてみよう。


そう思いリスターは立ち上がるとキッチンのほうへそっと赴き声をかける。



「村長、ご迷惑になってしまいそうなので本日は失礼させて頂こうと思うのですが・・・」

リスターがそっとキッチンに顔を出すと口論は突然やんで村長の孫娘と思われる子と目が合った。


リスターが思ったよりも大人びた風貌でリスターと目が合うとパッと顔を赤らめさっと紙を手ぐしで整えた。


「お爺ちゃん・・・」そっと祖父の袖を引いて注意を促すと恥ずかしそうに顔を赤らめたまま下を向いてしまった。


「おお、リスターすまないな。リス、この子が孫娘のサレットだ。サレットこの子がさっき言っていた牧師様の息子のリスターだ。」村長が気まずい空気に気づかずに紹介するとサレットは立ち上がると恥ずかしそうに俯いたままよろしくとちょっと頭を下げた。

リスターもよろしくと礼儀正しくお辞儀した。


「村長、どうやら今日は出直したほうがよいのではないでしょうか?朝のお忙しい時間に押しかけてしまって申し訳ありません。」言ってリスターがそれでは又と退出しかけるとサレットが慌てて引き止めた。


「お待ちください・・・お爺ちゃん、私支度してまいりますからリスター様にもう少しお待ちいただいてください。」

言うとサレットはリスターにお辞儀をしてパタパタと支度をするべく部屋を出て行った・・・



「リス、すまないがどうやら行く気になったようだからもう少し待っていてもらえるじゃろうか?」


「ええ、当初からそのつもりでしたから構いませんよ、」リスターは微笑み村長の妻に促され席に座った。




・・・・半時ほど経った頃先程とは違って綺麗に身支度をしたサレットが軽やかにキッチンに現れた。


「リスター様、お待たせして申し訳ありません。」可愛らしく膝を折ってリスターに挨拶すると行きましょうか、といってリスターの腕を取ると強引に連れ出した。


リスターはビックリして引っ張られながらも振り返り村長夫妻に言ってまいります。と挨拶をした・・・



「サレットは大丈夫じゃろうか?」


「リスが付いているから大丈夫ですよ。」不安そうにしている夫を励ますように肩をたたき2人を見送った。




********




サレットとリスターはまるで貴族の散歩のように腕を組み学校までゆっくりと話をしながら歩いていた・・・


「リスター様はお幾つでございますの?」サレットは明るく言うとリスターの腕にゆっくりと寄りかかった。


「・・・様はいりませんよ、私のことはリスと呼んでください。私は今年19になりました・・・今は学生ではなく父の教鞭の手伝いをしております。」


「そうなんですね・・・リスター…リスはこんな田舎では珍しい容貌をしていらっしゃいますね、都でもそんなに美しい髪をしていらっしゃる方はそうそうお見かけいたしません。」サレットはウットリとリスターを見上げた。


「・・・そうですか、有難うございます。この村では容姿など誰も気に留めませんし、たいしたことではありません。」きっぱりとそう言うと何かに気がついたのか足を止め後ろを振り返った・・・


「・・・にいさ~ん!待って!!」サレットはリスターが優しく微笑むその先を見ると一人の砂色の髪をした少年が走ってくるのが見えた。


お互いの顔が良く見える位置までやって来ると少年はサレットの存在に気がついたのか急に止まるとリスターをじっと見つめ頷くと目の前を一瞬手で覆いハアハアと息をしてゆっくりと近づいてきた。


「兄さん、先に行っちゃったのかと思ってビックリして追いかけてきたんだ。」少年は嬉しそうに微笑みサレットに一礼した。


「サレット、紹介します。弟のクロスです。」紹介された少年は嬉しそうに微笑みサレットに一礼した。サレットがじっと見つめつとクロスは恥ずかしそうにポット頬を染めた。


「初めまして、僕クロスって言います。村長さんのお孫さんですよね?今日始めての登校だって聞いて僕も一緒に行こうと思って走って来ました。」


「・・・初めましてサレットですわ、リスに弟さんがいらっしゃったのね、」サレットは自分とあまり背の変わらないクロスをじろじろと見つめた。髪の色もリスターよりも色が薄いし、瞳の色もリスターのように綺麗な水色ではなく薄い茶色であまりパッとしない印象を受けた。


「クロス、父さんはもう出勤したのかい?」紹介が済むと3人は連れ立って歩き先程よりも少し速い歩調で学校へと向かった。


「うん。僕よりも先に家を出たからもう付いている頃だと思うよ。」クロスは嬉しそうに歩きながらサレットの反対側からリスターに返事をした。


「・・・そうか…サレット、すまないが此処から先へはクロスといってくれますか?私は父に用事がありまして、クロスだったら貴女をクラスまでお送りできますし・・・」サレットにすまなそうな顔を向けるとクロスに向き直りサレットを頼むよと言ってサレットの返事を待たずにじゃあと言って足早に去っていった・・・


「あ・・・・」さよならの言葉も言えずサレットはリスターの後姿を見送った・・・。


「じゃあ、サレット。僕と行きましょうか。」クロスはサレットの腕を取り自分の腕を持たせるとリスターよりも速いスピードでサレットを引っ張って行った・・・


サレットは急に不機嫌になり自分の腕を持って楽しそうにサッサと歩くクロスを見つめ兄弟なのに何故こんなにもリスターに似ていないんだろうといぶかしんだ。



予定の時間より早く着くとクロスはサレットをクラスの前に置き去りにして他のクラスメイトに事情を説明すると後は任せたとばかりにじゃあね!と爽やかに言って自分のクラスに行ってしまった・・・


サレットは唖然とその姿を見送りリスタートの違いをしみじみと感じそもそも自分はリスターと話したいが為に学校へ行くことを了承したのにと思い今の状態に沸々と怒りがこみ上げてきてクロスに紹介されたクラスメイトにも冷たく八つ当たりをした。



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