狸の学校
圭太は小学2年生、軽度の発達障害があります。彼は学校に行くのが嫌でした。漢字のテスト、計算ドリル、嫌いでした。それに、彼の奇行がクラスメートをドン引きさせました。長く椅子に座っていられません。飽きると教室を抜け出し、校庭を走りました。教室に居場所がなくなった圭太でした。そんな圭太の父が、転勤になりました。山の中の鉱山跡、そこの管理人でした。
転勤地は狸山、えらいな山の中です。
母と妹は都市部の家に残り、父親と二人山の中の管理人住宅に引っ越すことになりました。お父さんと二人、野を越え山を越え、一本橋を渡り、管理人住宅に着いた。山の空気はいい。圭太はここに大好きなハンバーガーがない事に気が付きました。ラーメンはリックの中に入れてきた5食分のみ。不安でした。
着いたその晩、近くの集落の人がやってきて歓迎会を開いてくれました。川魚の塩焼きや、山ブドウなどの果物、菜っ葉のサラダ、ハンバーグ以外食べられないと思っていたが、おいしく食べました。お父さんは地元の小学校に転校手続きしました。小さな小学校でした。転校日お父さんに連れられて小学校に行った。目の周りがやけに黒い校長と、これもまた目の周りが黒い担任の古田先生、これまた目の周りが黒い給食のおばさんがいました。二人が皆に挨拶すると同級生が駆け寄りました。珍しいものを見るように周りに集まりました。圭太はたまらず逃げ出しました。校庭に出て運動場を一周しました。みんなが付いてきました。そして追いつくと、皆で笑いました。
翌日から圭太は喜んで学校に行き始めた。
給食はサラダと木の実、飲み物はジュースか水が多かった。
ある日給食当番になった圭太は、ポロッといいました。
ハンバーガー食べたいな。
おばちゃんは尋ねた。
それってどんなものなの?
あのね、丸いパンに挟まったハンバーグと野菜。
パンってどんなものなの?
あのね、まあるくてふわふわしていて、ジャムなんかはさんで食べるもの。
ハンバーグって何?
お店屋さんに売っていてまあるいもの。お母さんが作るとデケボコだけど。
野菜ってなあに。
キャベツを細く切ったもので、お母さんが切ると大きかったり小さかったりするけれど。
よくわかりません。しばらく考えて、決心しました。
おばちゃんは町までハンバーガーを買いに行くことにしました。
校長先生から費用のお札を受け取りました。
町に着くと、ハンバーガー屋さんに行きました。ここでハンバーガーを人数分買いました。おばちゃんはそれをもって、急いで山奥の小さな小学校に帰りました。
その日の給食は、ハンバーガーでした。
翌日ハンバーガー屋さんはレジの中に木の葉を見つけました。
久しぶりだのう。古だぬき、元気かなあ。
その学校は不思議な学校でした。圭太の学年しかいませんでした。全部で十五人ほど。小学2年生ばかりの学校、先生が計算を教えてくれました。それに飽きると校庭に出て運動場を一周しました。みんなが付いてきてくれて遊び疲れると大声で笑いました。給食のおばちゃんは、いつもおいしいものを作ってくれます。
今日はカレーライスです。
お米は村で取れます。
にんじんは、村長さんの畑で取れます。
じゃがいもは、校長先生の畑で取れます。
玉ねぎは、圭太のお父さんの畑でとれます。
では足りないものは、何だろう?
おばちゃんは、校長先生からお金を貰い、町のスーパーンマーケットに行くことにしました。
必要なものを買うと、レジでお札を出しました。
学校に帰ると早速調理です。
午前中は、化け方の時間。みんな給食が楽しみです。
先生は圭太に見学でいいと、言ってくれました。
一番化け方がうまいのは、ポン子ちゃん。
ポン子ちゃんは、村の村長の孫です。
まず入念に下準備をします。木の葉を頭の上に乗せ、くるくる回ります。
今日は一本足の一つ目小僧です。さすがポン子ちゃん、うまい見事な一つ目小僧が出来ました。
いつもいたずらばかりしているキン太は下手で一本足が頭の上の変なお化けになってしまいました。
給食の時間です。
給食当番は、慎重に配膳します。みんな、おんなじになるように。
「いただきまーす」と元気な声が響きます。お腹いっぱい食べて、そして
昼休みは一生懸命遊びました。
午後からは漢字です。一生懸命勉強しましょう。
中には違う子もいるけど。キン太は少ししっぽがズボンからはみ出ているよ。
スーパーマーケットのお姉さんはレジの中に葉っぱが入っているのに気が付きました。
いいにおいの葉っぱで、店中がいい香りに包まれました。
体育の先生は鋭いまなざしを持った鳥山先生です。体育の時間しか来ない先生でした
柔道や、剣道を教えてくれました。転んだ時の受け身や、飛び跳ねかたを学んでいくうち、山の中を走り回るのが楽しくなりました。走るのや、長く歩くのが苦手だったのが夢のようです。音楽を聴きながら、ダンスをするのも覚えました。木登りも得意になりました。泳ぎも教えてくれました。もう圭太は怖いものなしです。
一度高い木の上から落ちそうになりましたが、いつの間に来たのか鳥山先生がつかんで、そっと地面に下ろしてくれました。
なかなかリズムが取れない圭太にリズムの取り方を訓練しました。そしていつの間にか、ダンスもうまくなっていました。同級生のキン太が太鼓をたたきます。リズムに乗って圭太がブレイクダンスをします。同級生の良太が鐘をたたきます。声のいいまり子がサンバを歌います。学校中大騒ぎです。校長先生が出てきました。給食のおばちゃんはしゃもじを打ち鳴らして、音楽のリズムを取ります。体育の日は学校が踊る日になりました。
圭太はいつの間にか漢字や計算を、覚えてしまっていました。先生は何でも教えてくれました。でも化け方は覚えきれませんでした。担任の先生は何でも知っていました。
その学校で圭太は5年間を過ごしました。お父さんの転勤が決まりそこを離れることになりました。みんなふもとまで送ってくれました。名残惜しそうにいつまでも手を振ってくれました。
数年後圭太は大人になっていました。あの山の暮らしが思い出せません。お父さんにそれを聞こうと思いました。しかしお父さんも思い出せません。あの山の中にある圭太の母校はどこにあるのでしょうか?




