表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの師  作者: ゲバ
1/1

プロローグ

習作。

 この世界の全ては魔素によって構成されている。大地も、川も、炎も、嵐も、そして生物も。魔素がその性質を変化させたものである。


 そんな世界で生きる人間が、存在を大きく変質してしまうことがある。その者たちは世界の法則から外れた事象を引き起こし、時に人々を守り、時に災いをもたらした。

 人々は彼らを、畏怖を込めてこう呼んだ。

 魔法使い、と。



 少女は息を切らせながら走っていた。褐色の肌に短く癖のある黒髪。冬だというのに上着もなく鼻を赤くしている。両手には膨らんだ紙袋を二つ抱えている。

 少女は家路を急いでいるのだ。なんせ今日は一人前の魔法使いとして認められた記念日。早く帰ってお祝いのパーティーをしなくちゃなのだ!


 もうすぐ家に着くというところで、道を塞ぐ者がいた。見慣れぬ男三人組で、三人とも手には小振りなナイフを持っている。どこからどう見ても強盗だ。

 その中の一人が少女に話しかける。


「嬢ちゃん、痛い思いしたくなかったら、その手に持ってるもん置いていきな」


 強盗にはたまに遭う。少女の住む家は人通りの少ない所にあって、少し治安が悪いのだ。ああ、いつものか。と思いながら路地の端に紙袋を置く。


「いい子だ。ついでにサイフも置いていきな。そしたら嬢ちゃんは見逃してやるよ」


 男たちは下卑た笑いを浮かべながら近づいてくる。

 だが少女は別に、強盗の言うことに素直に従ったわけではない。パーティーに使う食材の入った紙袋を血で汚したくなかっただけだ。

 

 男たちが一歩前に進む度に、周辺の魔素量が濃くなり、少女の気配が変質する。否、気配だけでなくその外見までもが変化していく。

 顔の下半分が大きく突き出し、鋭い牙を覗かせる。全身に硬質な毛を生やし、骨格すら四足歩行に最適化する。爪も生やし、最後には魔物固有の縦に割れた赤い瞳。

 変化が止まったその姿はまさに魔物化した狼そのものであった。


「な、なんだよ、それ…」


 男たちは足を止めていた。いかにも無害そうな少女が魔獣に変わったのだ。理解が追い付かずただ立ち尽くす。

 それに比べ元少女の魔獣は速かった。瞬時に男たちに駆け寄ると、一人の喉に喰らいつき、二人は爪で切り裂いて、悲鳴をあげさせることもなく絶命させた。


 狼はその姿を少女のものに戻すと、路地の端に置いていた紙袋を手に取り、強盗の男たちの死体には目もくれず、また家路につくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ