#51 元カレ
YouTubeのおすすめに出てきた、賑やかな動画。
「夢オチ選手権」とかいうふざけたタイトルで、何人かの男性が楽しそうに喋っていた。
その中に、聞き覚えのある声。笑い方。懐かしい。
大学の頃付き合っていた、あの人に、似ていた。
気になって調べてみると、「パラレリウム・フライト」という歌い手グループで活動しているらしい。
プロフィールには、彼と同じ地方の出身と書かれていた。
歌ってみた動画を開く。
一瞬で、確信した。
付き合っていた頃、よく行ったカラオケで何度も聴いた、あの歌声。少し大人びた気がしたけど、間違いない。
そうだったんだ。
私と一緒にいた頃、もう活動していたんだね。
でもそんなこと、微塵も感じさせなかった。
いつも優しくて、穏やかで、真面目な人だった。
私が「会いたい」と言っても、「バイトがあって」と断ることが増えて、寂しさが募った。
私は気持ちをぶつけてしまった。
あなたのことを本当に考えていなかった。
今になって、ようやく気づいた。
画面の中のあなたは、たくさんのリスナーに囲まれて、キラキラしていた。
楽しそうで、幸せそうで……ああ、よかった。
そう思えた自分に、少しだけ救われた気がした。
私は私で、歩いていく。
あの日の後悔も、全部抱えて。
でももう、過去の私みたいに一方的にはならない。
あなたの歌、また聴いてみようかな。
#100日チャレンジ 51日目




