#19 誰かにとっては古参アピ
やしろくんの活動を知ったのは、まだ二桁のフォロワーしかいなかった頃だ。
偶然見つけた歌ってみた動画に心を奪われて、すぐにTwitterのアカウントをフォローした。
まさかフォロバされるなんて思ってもいなかった。
通知が来たとき、泣くほど嬉しかったのを覚えている。
最初は、いいねをもらっただけで大騒ぎしていた。
「やしろくんにいいねしてもらえた!」
「今日も推しが最高!」
そんな投稿を、数人のリスナー同士でリプし合いながら盛り上がっていた。
あの頃は、世界がとても狭くて、温かかった。
やしろくんはどんどん成長していった。
パラレリウム・フライトを結成してリーダーになり、グループでの配信初日からずっと私は見守ってきた。
新しいリスナーが増えていくのは嬉しい。
「やしろくんをよろしくお願いします!」と純粋に発信していた。
だけど、変わっていったのはグループだけじゃなかった。
リスナー同士の関係も、少しずつ変わった。
初期グッズの写真を投稿したとき、「古参アピうざ」と鍵垢で引用している人がいると知った。
フォロバを妬む人、匿名掲示板で誹謗中傷する人。
リスナー同士の争いは、見ていて疲れる。
パラフラのメンバーがリプや投稿にいいねをつけることは、グループ結成後ぱたりと無くなった。
それでも、DMはまだ既読がつく。
いつか既読もつかなくなるのだろう。
それでもいい。
やしろくんが私のフォローを外さない限り、私はここにいる。
スクショフォルダに、もらったいいねが残っている。
きっと誰かにとっては、たかが通知。
それでも私にとっては宝物だ。
リスナー同士の関係なんて気にしなくていい。
私は私のペースで応援する。
やしろくんが笑って、歌っていてくれる限り。
スマホの画面に映る、結成当初の配信サムネを見つめる。
「これからどうなるかわからないけど、絶対でっかいグループにするから、だからここにいてね」
そう言ったやしろくんの声が、まだ耳に残っている。
私は変わらずここにいるよ。
あなたがくれたいいねのスクショを抱きしめて、ずっとずっと、応援していく。
#100日チャレンジ 19日目