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#18 推しの周年記念日

部屋が、オレンジで埋め尽くされている。

オレンジのバルーン、ガーランド、テーブルの上にはオレンジ色のマカロンとゼリー、持ち寄った推しグッズがぎゅうぎゅうに並ぶ棚。


「これ、いい感じじゃない?」

彼女が笑う。

遠い街に住む彼女が、わざわざ来てくれた。

千幸(ちゆき)くんの7周年を、どうしても一緒に祝いたくて。


画面の向こうで配信が始まる。

カウントダウンの数字がゼロになり、記念の歌が流れた。


最初の一音で、空気が変わる。

いつもの賑やかで明るい千幸くんとは違う、静かで、でも心に深く響く曲。

その声は真っ直ぐで、苦しさも温かさも全部混ざっていた。


顔も知らない誰かが言った

向いてない やめてしまえ

一人になると考えてしまう


歌詞が突き刺さる。

普段の配信や動画では見えない、推しの内側。

パラフラは成功し続けている。6人は家族みたいで、いつも楽しそうだ。

だけど、その裏にある苦労や迷いは、こんなふうにしなければ見えない。


歌い終えた千幸くんは言った。

「この曲を選んだのは、歌詞にすごく共感したからで……」

「一人になると、ネガティブなこと考えちゃうこともあって。でも、俺には支えてくれるメンバーがいて、応援してくれるみんながいるから」

「何年活動してるけど、パラフラのメンバーとは毎年毎年、もうこれ以上仲良くなることないだろってくらい愛が深まってるよね」


彼の言葉に、胸がぎゅっとなった。

ありがとう、って思った。

そんな想いを語ってくれて。心の奥まで聞かせてくれて。


気づいたら、私も彼女も涙ぐんでいた。

顔を見合わせると、二人とも笑った。


この時間は、かけがえのない時間だ。

ひとりじゃなくてよかった。

一緒に喜んで、一緒に泣ける人がいてくれて。


「もっともっと好きになっちゃった」

「うん、ずっと応援していこう」


私たちは小指を絡めて、オレンジ色の誓いを立てた。

これからも、パラレリウム・フライトと、千幸くんと、ずっと一緒に。



#100日チャレンジ 18日目


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