#17 自由な空へ (シヲ)
koh-eiが飛んだ。
どこに行ったのかも、何を考えていたのかも、わからない。
僕はずっと、あの言葉を心の中で転がしている。
パラフラに加入する決意をしたとき、背中を押したのはこーくんだった。
この先どうなるかはわからない。
成功するかもしれないし、成功しないかもしれない。
でも、必ず成功するっていう未来を思い描けるやつしか、成功はしないんだよ。
あれから、何度も配信で話した。
「僕、あのときこーくんに言われてさ」
「迷いが吹っ飛んだよね」
そんな風に笑って何度も何度も話してきた。
こーくんの言葉は、僕にとって支柱だった。
信頼していた。頼りにしていた。
……頼りにしすぎていた。
ずっと抱えていた迷いや苦しみを見抜けなかった。
家族失格だ。
メンバーはみんな「家族みたいだ」って言い合ってきた。
でも僕は、こーくんの、koh-eiの心の奥底まで、ちゃんと覗き込んだことなんてなかったんじゃないか。
あの人がグループのためにどれだけ神経をすり減らしていたか。
どれだけ自分を削って演じていたか。
気づけなかったし気づこうともしなかった。
この先どうなるかはわからない。
成功する未来を一番信じていたのはkoh-eiだった。
その彼が、自分の未来を「ここで終わり」って区切った。
たぶん、もうパラフラの中に自分がいない未来を思い描いたんだ。
きっとそう。
そう思わなきゃ、今は気持ちを保てない。
彼がいなくなってもパラフラは続いていく。
続けなきゃ。
頭ではそうわかってるのに、心がぐちゃぐちゃだ。
怒り、悲しみ、後悔。
どうして言ってくれなかったの。
どうして僕は気づけなかったの。
「……こーくん」
名前を呼んだ声が、思ったより震えていた。
涙は出なかった。悔しさで、全部乾いてしまったみたいに。
#100日チャレンジ 17日目