表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/100

#12 理想と現実と割り切れない心

パラレリウム・フライトに出会ったのは、中3の冬。

受験勉強の合間、息抜きに開いたYouTubeのおすすめに流れてきた企画動画。最初はただの声だけのグループだと思ったのに、気づいたら毎日聴いてた。

合格発表のあと、最初に流したのも彼らの歌だった。


高校に入ったら、絶対に推し活仲間を作ろうって思ってた。

でも、実際はうまくいかなかった。

周りはK-POPとか、アイドルとか、インフルエンサーの話ばっかりで、歌い手の話題を出すタイミングがわからない。

それでも諦めきれなくて、こっそりSNSで繋がった同担さんとのやりとりだけが救いだった。


もうすぐ夏休み。

オフ会のレポを見るたびに胸がざわつく。

「大好きffさんとアフタヌーンティー♡」

「推しが繋いでくれたご縁に感謝!」

そんな言葉の並ぶ写真に、ぬいぐるみやアクスタがずらっと並んでて、どれも私のより大きくて豪華。


私も、あんなふうになりたい。

お小遣いでちまちま集めた缶バッジと、ミニアクスタで組んだ小さな痛バ。

それでも頑張って揃えた。みんなで並べて「かわいいね」って言い合いたい。


そんなとき、タグ画で繋がった子が、同じ県に住んでることがわかった。

しかも、同い年。

「えっ近くじゃん!会おうよ!」ってトントン拍子でオフの約束が決まって、私の心は期待でいっぱいだった。


でも、実際に会ってみたら、現実はちょっと違ってた。

彼女は親金で揃えたグッズが大量で、痛バはA3で組んであって、レートの高い缶バッジがびっしり。

カフェに並べて写真を撮ると、私のミニサイズのぬいは浮いて見えた。

「全然そんなことないよ〜」って言いながら、彼女がグッズを少しずつ自分側に寄せていくのがわかった。


話も合うには合うけど、時々見せる“わかってる風”の笑みが刺さる。

帰り道、カメラロールに残った写真を見返して、思った。

私が欲しかった推し活仲間って、こんなだったっけ?

SNSで見てた「尊い時間♡」は、もっと幸せそうに見えたのに。


グッズの数だけがすべてじゃないって、頭ではわかってる。

でも、じゃあこのモヤモヤはなんなの?

私が足りないから? お金がないから? それともただ、私が寂しいから?


歩きながら、イヤホンでパラフラの新曲を流す。

それでも、気持ちは晴れなかった。

「好き」があるのに、どうしてこんなにむなしいんだろう。


答えは出ないまま、電車の窓に映る夕焼けと私の顔が重なり、オレンジ色に染まっている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ