#11 ただ過ぎ去るだけの
突然の活動休止。目に入ってくるのは悲しみの言葉。無責任な報道。
今日も地上波ではない報道番組で俺たちとあいつの名前が呼ばれ続けている。
緊急特集『若者と”共鳴”の時代』
―「彼の最後の歌は遺書だったのか?」
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「人気歌い手グループ、パラレリウム・フライトのメンバー、Koh-eiさんが、2日前に自ら命を絶ったとみられる件で──」
画面にはライブ映像。白い衣装で歌う彼。会場を埋め尽くすペンライト。
「ファンの間では、彼のラストソロ曲『未明のほうへ』が“遺書ではないか”との声も上がっています。」
•@◎xxxxx_skyfan
「未明のほうへ、今になって歌詞の意味が全部わかった。これ、“さよなら”だったんだ……」
•@vocal_fes_△14
「“その手を伸ばさないで”って、もう誰にも止められなかったんだね」
•@newsma⚫︎ome_7
「てか何この曲…ガチ遺書じゃん(笑)」
•@yuzu_ma◇cha88
「名前は知ってたけど、この曲で初めてちゃんと聴いた。めちゃくちゃ綺麗な声だったな」
MCとコメンテーターたちは大した知識もなく上辺だけのトークを繰り広げる。
「…ということでSNS上では、遺書ではないかという意見がかなり広がっているようですが、どうでしょうか?」
「うーん…たしかにそういう風に、取れなくもないですよね」
「歌詞とかも、なんか“いなくなる準備”みたいな感じでしたもんね。」
「うん、ね。そうとれるところもあるよね。でも……受け取り方はそれぞれだし」
「そうですね〜……本人しか、本当のところはわかんないですよね」
「はい。……まぁ、うん」
MCがうなずき、次の話題に切り替わっていった。
#100日チャレンジ 11日目