【第七話】
「あ、そうだ。百合ちゃん。ちょっといいかしら?」
「はい。なんですか?」
「仕事のことなんだけど、お料理はできるかしら?」
「今までは基本的に祖母が作ってくれていたので、あまり自信はないですね……」
「そう……できれば料理と接客をメインの仕事にしたいんだけど……私が教えましょうか?」
「いいんですか?」
「ええ。大丈夫かしら?」
「はい。……多分、ですけど」
あまりついていける自信がなくて少し目を逸らして答えると肩にポンと手が置かれる。
「安心して。鈴花はそんなにスパルタじゃない」
「そうよ〜、そんなに厳しくしないわ。少しづつでもいいから」
「このお店、よく混む。だから、大変。百合がいてくれると助かる」
「目が回るような忙しさなのよ。百合ちゃんが来てくれてよかったわ。」
「大変ですね……私、お役に立てるように頑張ります!」
「いいお返事ね。ああ、あと一つだけ覚えていてほしいことがあるの。この『小料理屋・鈴蘭』のコンセプトは……そうね、百合ちゃん。あなたはさっき、ここのお店の料理を食べてどう感じた?」
「えっと……上手く言葉に出来ないんですけど、嫌なことも全部忘れてしまえるような、幸せになれるようなお料理でした。鈴さんが私みたいな人のためを思って作ってくれたみたいな……そんな温もりを感じました。落ち込んでた私に元気だしてって言われたような気がします」
私がそう答えると、鈴さんと蘭さんが顔を見合わせて驚いたような顔をする。相変わらず、蘭さんの表情は少し分かりにくいが。
「合格」
「……え?」
「ええ、百点満点ね。やっぱり私の見る目は確かだわ」
いきなり二人からそんな事を言われて、私の脳内に?のマークがたくさん浮かぶ。
「あぁ、急にごめんなさいね。実は、このお店で働くには条件が一つだけあるのよ」
きょとんとしている私に蘭さんと鈴さんが説明してくれた。