4 一文無しは心細い。
昨夜、道端にいた獣人にわいせつな行為をしようとした件で投獄されている。
道端の猫に「にゃあん」と言ったら、それがケモ度の強い獣人で、そのまま警察にお世話になった。今回はおそらくは罰金刑で釈放されるらしい。しかし、その額が俺の所持金と全く同じ。、幸運と思うか、不幸と思うか。有り金をすべて失って、俺はシャバに出た。
振出しに戻る。
どうしよう。
一文無しだ。飲食店が立ち並ぶ区画の前を通るが、金がないので何も食えない。皆が金持ちに見える。
昨日から何も食べてない。
ラウリルを探すか。
いや、あの悪魔に捕まったら弱ってる俺を見て楽しむに決まってる。あいつ、拷問が専門なんだよ。縛り付けられてあと三日は何も食べさせてもらえない。その未来がありありと見える。
「はあ、働くか」
飲食街のおいしそうな匂いを振り切って、ダンジョンギルドに向かって走る。
「これが」
ダンジョンギルド。この都市の中心に聳え立つ野郎たちの住処。
中は五階まで吹き抜けになっていて、酒臭い。煙草、いや、違うやつだな。正面にはギルドの受付がある。六人の受付嬢が受付を開いている。掲示板は、、無いな。ここは受付のスタイルらしい。
「仕事、あるかな」
「お客様、ランクのほうは?」
「ランク?」
「冒険者ランクです。外の町から来た方ですか?」
「最近来たんだ。説明してくれない、そのランクってやつ」
お姉さんの説明によるとランクは人と任務に割り当てられている。基本はE~A。異常者がSになるらしい。勿論稼ぎがいいのはSだ。
「では、お客様のランクを測ってきてください。この酒場にいる人を倒せば、そのランクを手に入れることが出来ますよ」
いいシステムだな。
「Sランクの冒険者はどこに?」
「酒場のどこかにはいると思いますが」
じゃあ、いいかな。
俺が酒場に向かって叫ぶ。
「聞け! 俺を倒した奴に! 金貨十枚だ! どっからでもかかってこい!」
一番簡単な方法だ。
ここの冒険者のレベルも分かる。
テーブルに突っ伏していた野郎どもがゾンビのように起き上がる。
「かかって来いよ」
挑発する。
「えい!」
背後に気配!
受付嬢がフライパンを俺の顔面目掛けて振り下ろした。
「痛って!」
油断した。
「私も労働者ですので、そのお金は欲しいです!」
「やっちまえ!」
倒れた俺を見て大量の冒険者がなだれ込んでくる。
想像以上に多いぞ!
酒で潰れた奴は計算に入れてなかった!
「へへ、やったか」
「残念ですね。裏切りには慣れているもので、対策済みですよ」
吹き抜けの天井に逆さづりで引っ付いている。
俺の本職は暗殺者。酒場の全員を相手する技はない。この人数はさすがにきついな。
「皆殺しだ!」
演技大事。
俺は真下に向けて、幻影魔法でギルドが隠れるほどの大きな火の玉を作り出した。実際、熱くはない。だが、五階に座っていた人間が皆、逃げだした。本来は人に化けるときに使う魔法だ。再現度は半端じゃない。逃げ出してもおかしくはない。
「に、逃げろ!」
下の連中もこぞって逃げ出した。
「お客様! ギルド内で、そのような大魔法はおやめください!」
俺は魔法を止めて、下に降りてくる。
酒場に活気はない。
ほとんどが逃げ出した。
正直な話、止めてくれなかったらどうしようかと思った。幻影魔法を撃ったところでただの幻だ。威力はないからね。
「今逃げた奴らで一番高いランクは?」
「Aでございます」
「Sは?」
「そちらに残っていらっしゃいますので」
受付嬢が指さした先にはフードを深くかぶった冒険者がいた。
「ギルド史上最速のSランク冒険者。ノワール様です」
「ノワール?」
二つ名かな。
「受付嬢様、私の進言で彼をSランクにしていただけませんか?」
「は、はい! 勿論でございます」
「ありがとう。ノワールさん」
「礼には及びません。当然ことをしたまでです」
ノワールさんのおかげでSランク冒険者に成れた。手続きが終わり、ギルドをあとにしようとしたとき、後ろから呼び止められる。
「食事でもどうですか? フィオ」
「やっぱりお前か!」
ノワールの正体はラウリルだ。
「Sランク、おめでとうございます」
「ありがとうございます。ノワールさん」
俺はラウリルのテーブルについた。
「獣人にわいせつ行為をシタソウデスネ」
「勘違いだ」
「おかしいですね。シャルという方から聞いたのですが」
そっちの話ですか!
「気のせいだ。知ってるか、世界にはドッペルゲンガーがいるらしいぜ。そいつじゃないのか」
「フィオのドッペルゲンガーは全員殺しました。ちなみに38人いましたよ」
殺しすぎだろ。何かの伏線か?
「乾杯!」
無理やり酒でごまかした。
基本毎日投稿頑張ります!
毎日12時10頃に投稿!
本当にブックマークが欲しいです!
「お兄ちゃん。お姉ちゃん。ブックマークを恵んでください!」
まじで一年くらい寿命が延びる気がします。