<第一章 Slothの種> 第1部 家族の団欒6話 裏
鼓動し始めてしまった。
誰にも届かない音。
「あぁ!やっと彼と一つになる機会を得られた!神様万歳というやつだな!」
誰にも伝わらない感情。
「後は彼が、彼自身の本性を出し始めるまで待つだけ。あぁあぁとても長かったよ」
誰にも届いてはいけない音
「おや?おやおやおや?!?君ってやつは!」
誰にも伝わってはいけない感情。
「土壌が完璧なのは魂を見れば解ってはいたが…こうも早くに本性を出してくれるとは!」
種はもう植えられた。
「あぁでも悲しいかな。そんなものじゃあないだろう?君の本性ってやつは!」
種は勝手に応える。
「少しだけ見せるだなんて、焦らされるこっちの気にもなって欲しいよ全く。まぁでもいいよ。受け取った気持ちには答えないとね!」
種が動き始める。
「初めての感覚で少し戸惑うだろうけど君なら大丈夫。そう確信しているんだよ私は」
種の動きは止まる。
「今回はこんなものかなぁ。君の苦悶に歪んだ表情も捻くれた性格も全てが愛おしいなぁ!」
種は置き土産をし、実を隠す。
「私は君のすべてを肯定するよ!君は恵まれている!あぁでも人間は成功体験がないといけないんだったかな?ならその機会をプレゼントしてあげよう!」
「我求めん・極上の祈りを彼のもとへ・望むべきは平等を・天から地へとの失墜を・人々の原典その一つを今ここに<ファティーグ・チルクム>」
重い空気が彼の体から漏れ始めた。
吸い込む空気には気を付けて。侵される前に。