<第一章 Slothの種> 第1部 家族の団欒4話
七つの種子。そのうちの一つが見つけた宿主。
ダビデの祝いを兼ねた夕食から数週間がたち、冬の月も終わりが近づいてきた。その証に陽射しがほんのりと温かみを帯びてきた。もうじきファーボ国立学園への入学が近づいているウーゴは何の準備もしておらず、焦燥感に苛まれていた。
「あぁ自業自得なのは解っている。解ってはいるが…如何せん行動に移すのが億劫で仕方がない。」
入学にむけ鍛錬をするなり、勉学に勤しむなり行うべきことが在ると理解しつつも、それとは裏腹に面倒くさいという感情がウーゴを支配していた。自ら矛盾を産み出し、それに腹を立てている。傍から見たらなんと滑稽なことだろうか。
「俺の前世はナマケモノだったのだろうか。いや、それはナマケモノに対してあまりにも失礼だな。ともかく、何かをしないといけないのは変わらないか。現世に表せ<ステイタス>」
そう呟いたウーゴは、以前恩恵で受けたステイタスを見るため魔法を発動した。
『ウーゴ
男性 14歳 人類 LV 7
HP 15/15 F MP 10/10 G
VIT 6 G ATK 5 G
DEF 5 G AGI 1 G
INT 15 F RES 10 G
DEX 10 G LUK 13 F
SUM 90
<適正>
水魔法適正
・水魔法の消費MPが1/4になる。
<スキル>
最下級水魔法 ウラ・アクア
・消費MP 1 小さな水の球を作り出す 』
この世界においてステイタスは10種類存在している。そして各種の数値によってG~Aまで割り振られており、1~10はG、11~20はFといったように上がっていく。ランクDにたどり着くには凡人ではかなり厳しい。故にDを超えたものは凡人の壁を越えたと認識されるのだ。Bにたどり着けるものは秀才であり、Aまで到達するものは紛れもなく天才である。今回発動させたステイタスをみたウーゴは癖になっている苦笑いを浮かべる。
「まぁ何もしなければ強くはなれない。当たり前のことだな。さて、流石にこのままではよろしくない。如何したものか…」
ふとウーゴは思いつく。
「あぁそうだ!少し遠出になるが森に行き下級モンスターを倒しに行こう。そうすれば少しはまともになるだろう。」
今まででのウーゴであれば、想像しても行動に移さないのだが今回ばかりは違った。ダラダラ過ごすことを最優先していたのだが、末の弟の事や自身の入学の事で追い詰められていた為、少し自分を見失っていたのだ。モンスターを倒しに行くといえば聞こえはいいがウーゴが行く森は殆どモンスターが出ない所であり、ストレス発散が真の目的といっても過言ではない。
「そうと決まれば後は簡単じゃあないか。軽い装備をして出かける、夜には戻って来られるだろう。」
ウーゴは短剣を二本腰に下げ、食料に水をバックに入れて森へ向かった。ウーゴを知る人であればあまりにも異様な行動力に驚くだろうが周りには誰もいなかった。幸か不幸か今は誰にも分らない。
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「あぁ。あぁなんと甘美な魂の香りがするのだろう。早くこちらへ来てはくれまいか。私の元に、来て、見て、触って、感じてくれないだろうか!!!」
放り出された種子の一つが、宿主になるであろう人物を見つけ歓喜に実を震わせる。意思を持つ種子。この世界のものではないと明らかな異物感を放ちながら、今か今かと待ちわびている。
ステイタスの詳細
・物理はHP,VIT,ATK,DEF.AGIが関係する
・魔法はMP,INT,RES,DEX,LUKが関係する