<第一章 Slothの種> 第1部 家族の団欒1話
新星歴1950年
ファーボ王国に住むウーゴ=ディリジェントは今日も今日とて怠けていた。窓の外にいる蝸牛を眺めながら溜息を吐く。
「今日の夕食行きたくねぇなぁ…父上もいっその事ロイかダビデに家督を継がせればいいものを、今更俺に期待しても無駄なだけだと理解して欲しいものだ...」
ディリジェント家の長男であるウーゴはほぼ毎日のように、現実逃避を行っている。
身体能力が高く武術に秀でた次男のロイ、魔法の才能がついこの間開花した三男のダビデ、そして双子の妹であり勉学に優れたルナ。
ディリジェント家では毎日の夕食は家族みんなで食べる事が決まっているのだが、今回は魔法の才能が開花ダビデの祝いも兼ねたものになっている。その祝いがウーゴにとってはあまりにも不愉快極まりないものであった。
別に兄弟仲が悪いだとか、親子中が悪いという訳ではなくただただ被害妄想を膨らましているだけなのが実態なのだが当の本人はそれに気がついていない。
「あぁ嫌だ嫌だ。早い所春の月になってくれないものかねぇ。学園の寮生活にでもなればこんな感情湧き上がらないだろうに...」
考えても仕方が無いところを無駄に考えていた思考を割くようにドアを叩く音が響く
「ウーゴ兄様そろそろ夕食のお時間ですよ?お父様もお母様も、そして他のお兄様達は席に着いていますよ??もしかして具合が宜しくないのでしょうか?」
心の底から心配してくれている。それが分かるくらいの暖かな声音で聞かれたウーゴは気まずさを覚え
「いや、何でもないよルナ。少し考え事をしていただけなんだ。今向かうから先に向かってくれ」
「分かりました。それでは私は先に。 みんなお腹を空かせてますから早く来てくださいね!」
ほんの少しだけ茶目っ気を出しつつも先に行ったルナ。そして数分後ゆっくりとのっそりと支度したウーゴは部屋を出た。
ディリジェント家の子供
ウーゴ
・本作の主人公 長男 成りあがりたいが努力はしない怠け者
ロイ
・次男 運動神経が優れていて努力家
ダビデ
・三男 頭脳明晰で人懐っこい
ルナ
・長女 ウーゴと双子 社交的な性格