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<第一章 Slothの種> 第1部 家族の団欒11話 兄/妹

誤字脱字が無いか怖いです...


外出から戻って来たウーゴは、自室に着くと制服を机の上に置き、ベッドに寝転がった。


「外に出かけるのは本当に疲れるな…ふむ、夕食までまだ時間があるな」


ちょっとした外出。それなのに何故かいつも以上に疲労を訴えるウーゴの体。彼は時間を確認した後、家を出る前から決めていた睡眠をとる事にした。


「少しだけ。そう、ほんの少しだけ眠るとしよう。入学の準備は…明日にでもすれば問題ないだろう」


やらなければならない事を先送りに、睡眠欲という欲求に従い目を瞑る。そうして彼は意識を手放した。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ウーゴが眠り始めてから数刻後、ルナの体に大きな異変が起きる。先程まであった気だるさはなりを潜め、その代わりに体の火照りが酷くなっていた。


「ッハー、ッハー。熱くて堪らないわ。本当にどうしたのかしら…」


彼にとって邪魔なモノを排除すべく活動を始めたソレ。ルナはソレに逆らえる程の精神を持ち合わせていない。


「頭までボーッとし始めたのは良くないわね…寝れば少しは良くなるといいのだけれど…」


ぼやけた頭でベッドに向かい横になる彼女。そうしてすぐさま意識を手放し、弄られた意識を戻される。


「ウーゴ兄様…帰ってきてるのよね…」


ベッドから起き上がった彼女は艶のある吐息で独り言を漏らす。


「兄様に会いたい。会って、それから私と…」


明らかに異常な考えを浮かべているが、それを指摘する人は誰も居ない。彼女は足をふらつかせながら自室を出て、実兄であるウーゴの部屋へ向かい始める。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






ウーゴの部屋で事件が起きた。


-ゴソゴソゴソ


(うん?変な音がするな。)


- ッハ-ッハ-


(女の声?何故俺の部屋でそんなものが?)


-ウーゴニイサマ!


「ッ!ルナ!?お前何をしている!?」


体を飛びあがらせ、服を脱がそうとしているルナに驚き、声を荒らげる。考えが纏まらない。何故ここに、何故こんなことを。


「あら、ウーゴ兄様!起きたのですね!私、どうにかなってしまいそうなの!」


明らかに目は正常で無く、声は今まで聞いた事の無い艶があった。


「どうした!?何が、いやそれよりも体から離れてくれ!聞こえてるのか!?おい!?」


「どうもこうもありませんよ兄様!私はただ、この火照りを兄様に鎮めて欲しいだけなんですの!」


「火照り!?よく分からんが少なくとも俺を頼るのは明らかに間違ってるだろう!目を覚ましてくれ!ルナ!」


ウーゴのベッド上では、関係を迫る妹とそれを拒絶する兄の姿があった。ウーゴはおかしくなったルナを止める為、強行手段にでる。


(頬を叩いて、いや傷が出来るかもしれん!頭をひっぱたきでもすれば元に戻ってくれるか!?)


「いい加減にしろ!」


鈍い音が響く。ルナの頭に拳骨を入れたのだ。


「そんな…私を受け入れてくれないのですか…?」


虚ろで、しかし悲しい目をしたルナが問う。


「当たり前だろう!?俺たちは兄妹だぞ!?とにかく!今回起こった事は誰にも話さんから安心してくれ!ほら、さっさと部屋に戻って頭を冷やしてこい!」


その目に怖気が走ったウーゴだったが、兄としての役目を果たすべくルナを元に戻そうとする。そして、妹を部屋から追い出し、大きな溜め息を吐くウーゴ。


「なんだったんだ今のは?思春期ってやつか?...今度会う時は何事も無かったかのように接してやらんとな…」


(人間の女なんて所詮そんなものだよ、君)


「あぁそう…だ…な?ん?なんだ今のは?...駄目だ。一旦落ち着かないと。はぁ、なんだってこんな事になってしまったんだ。」


混乱しているウーゴにかかる妙な声。しかしそれどころでは無い彼は、今後どうするかを思案する。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




(兄様は私を受け入れてくれなかった。早くこの火照りをどうにかしてしまいたいのに!)


部屋を追い出されたルナは自室に戻ること無くその場で考える。


(私は兄様と結ばれたいの?それとも火照りを鎮めたいの?)


自身の行動理由に疑問を持つルナ。


結果論だが、ウーゴが彼女を拒絶する選択をした事自体はあまり関係ない。受け入れようが、受け入れまいが、ろくでもない結末が待っているだけである。そして拒絶した選択の結果として


(そうだわ!外に出れば火照りも少しは鎮まるはずよ!)


淫靡な空気を振り撒きながら外へと出てしまう彼女はもう誰にも止められない。

歪んだ歯車が音を立て始める。

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